第21話「新たな家族の形」
小鬼達が移住してきた。
総勢50名弱の集団。
これで村らしくなってきたかな?
と言っても、まだ完全に移住してきた訳ではない。
半数の小鬼達は、自分達の家を作るために里から通っている状態だ。
今建築出来た家は十棟。
モデルはうちの平屋だ。
後十棟建てれば小鬼達の家が完全に出来て全員が移住完了となる。
それが終わったらまた宴会だな。
「ラクトっち~、お腹減った~」
ああそうだ。
レッドドラゴンのメルも新しい住人になった。
「ドラゴンは腹減らないだろ……」
「てへっ、バレちった? でもラクトっちの作るご飯美味しいんだもん! 一万年の舌も唸る美味さ!」
「そうか? なら仕方ないな」
「ラクト様はメルさんに甘いです!」
「そうですわ!」
「甘い甘い!」
「我らにも甘くして頂かないと不公平ですな」
子供達からのブーイングが飛ぶ。
甘くしてるつもりはないんだが、人をおだてるのが上手いメルにいつも乗せられている気がする。
「分かった分かった! 今日はホットケーキも付けてやるから!」
メルは今一緒に暮らしてる。
一人で暮らすのは寂しいから嫌だそうだ。
常に誰かと寝ている。
子供達も結構喜んでるみたいだ。
母親とか姉みたいな感じ?
メルもドラゴンと分かっていても怖がらず自分を受け入れてくれた子供に、無償の愛情を注いでるように見える。
ただ、俺と寝る時に誘惑してくるのは止めて欲しい。
本当に理性が持たない。
毎回天使と悪魔が戦ってる状況だ。
それに加え風呂も一緒に入ると言い出した時には、流石に参ったのでそれだけは遠慮して貰った。
そんなメルはゲームに嵌まっている。
RPGの大作ドラゴン冒険。
そんなにレベル上げして飽きないのかと聞いたら、五百年暇で寝てた事もあるから、それに比べれば全然飽きないと答えていた。
寝る事さえ暇で飽きてしまうなんて、俺には想像がつかない。
「ロリっちから聞いたんだけど、一番飽きないのは子育てらしいよ? 子供の事は常に気にかけてるんだって!」
確かにそうかもしれない。
俺も子供達を引き取った後は、常に子供達の事が浮かんで来るようになった。
「だからメルちゃんと子供作ろ?」
違う違う違う、そうじゃない。
「メルは俺の事好きなのか?」
「メルちゃんを倒した男はラクトっちしかいないんだよ? 惚れない訳ないよね♪」
誰かに好かれるのは正直嬉しいが、まさかドラゴンに好かれるとはな……。
「分かった。俺はいつでもバッチリだが、先に子供達と話し合わないとな。俺はあの子達と婚約してるんだ」
子供達とメルを交えて話し合い。
「メルさんはラクト様と子供を作りたいという事ですね」
「そうそう!」
「一つお聞きしますが、ドラゴンは子供を作れるのですか?」
「多分!」
多分なんかい。
話し合いはわりと早く終わった。
結論――
お前がみんなを幸せに出来るならよし。
曰く、
「こうなる事は予想していました」
「そうね。これからも増えるでしょうね」
「強い雄に群がる雌!」
「側室は致し方なかろう」
「それに、私達が死んだ後にラクト様の傍にメルさんが居てくれるなら安心です」
「ドラゴンもダンジョンマスターも私達より確実に長生きですわ。私達の中では、ハーフエルフの私が長くて五百年。ラー様に寂しい思いをさせるのは、心苦しいと思っていましたの」
「ご主人様に寂しい思いをさせないで済む!」
「うむ、ただし、我らが生きている間は我らが一番ですぞ」
という事だ。
子供達がそこまで俺を思っていてくれたのかと思うと、自然と涙が出た。
子供達が正妻で他は側室。
そういう事に収まった。
そして、話は夜の事情にも及んだ。
メルと致しても問題ない。
ただし、自分達の体が問題ない程度に育ったら優先して相手をする事。
契約書まで書かされた。
一体どこでそんな知識を覚えたのやら……。
子供達の団結力も凄まじく、手のひらで転がされる未来しか見えない。
最後に残った問題は、リサの成長スピード。
今はJCぐらい。
このままいけば後一月もあれば成体になる。
その時、強制的に発情期がくるらしい。
発情期に入ると凶暴性が増して暴れるそうだ。
それを解消するには、相手をしないといけないそうだ。
しかも、発情のタイミングは昼も夜も関係ないみたい。
一年に一回来る一月ほどの発情期は、いつ爆破するか分からない爆弾という訳だ。
それをしっかり処理しろと言われた。
困った事だが、他の奴に処理させるのは絶対に嫌なのでしっかり対処したいと思います。
とりあえず問題は片付いたので、みんなでタコ焼きパーティーをした。
ランはオーソドックスなタコ焼き。
アイはタコの代わりにチーズやアボカドなどの変わり種を楽しんでいた。
リサはもちろん肉。
ヤナとメルはなんでもごされ。
小麦粉の代わりにホットケーキミックスで焼いても美味い。
中にフルーツや甘いソースを入れて丸く焼くと良い感じのデザートが楽しめる。
その後はみんなで温泉に入った。
DYで購入した温泉を庭に配置して周りを土壁で覆ったので、プライバシーもバッチリだ。
久しぶりに入った温泉は凄く気持ちが良かった。
頭にタオルを乗せて日本酒をちびちび。
日本の風流が異世界に降臨だ。
これは自分達だけ楽しむのも悪い気がしてきたので、村の中央に温泉を設置して、みんなにもこの気持ちよさを味わって貰おう。
温泉に入ってさっぱりした後は、俺の寝室でみんなで布団を引いて川の字で仲良く眠った。
新しい家族の形。
それが今夜生まれた気がした。
翌日、村のみんなにメルを娶ると発表。
そこからが大変だった。
小鬼達の独身女性が私達もと押し寄せてきたのだ。
申し訳ないが、さすがに幼児にしか見えない相手に手を出す気になれません……。
なんとか小鬼の女性達を諌めていると、更に問題が起きた。
「我らバロンズ伯爵の私兵である! そしてこの森はバロンズ伯爵の領地! その領地に無断で村を作る輩がいると報告を受け参った! この村の長はおるか!」
バロンズ伯爵?
どこかで聞いたような……。
子供達の曇った顔。
思い出した。
子供達を奴隷として売買していた輩達のボスだ。
そうか、ようやく来たか。
こりゃあ、ぶっ飛ばし甲斐があるぜ。
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