芸術は爆発だとどうしても伝えたい〜爆発させる能力で色々爆発させてたらいつの間にか爆破魔神と呼ばれてたんだが〜

デステ

一話 爆破予告は打ち上げ花火

 俺の名前は爆破愛純ばくはあいす。爆発を愛し、爆発に愛されるべく生きている十八歳だ。

 いきなりだが質問をさせてもらう。芸術とはなんだと考える? 

 文芸、絵画、彫刻などなど。多くの人たちがその様な答えをすることだろう。実際、検索エンジンを働かせて調べるとそのような答えが出てくる。


 しかし俺はそうは思わない。


 俺は数多くの人類を敵に回してでも声をあげて言いたい。本当のことを伝えたい。芸術とはなんたるかを。


 芸術とはーー


「ーー爆発だああぁぁぁあ!!」


 ガタッと音を立てて椅子から立ち上がった俺が叫ぶと、辺りが一斉に静まり返った。焦点が定まらない視界で周囲の人の表情を覗くと、皆がなにやら困惑している。


 そこでようやく意識が覚醒して、急速に現状を認識しだす。


 結論。どうやら俺は授業中に寝てしまっていたらしい。

 

「ぶははははっ! おいおいアイスちゃんよぉ。いきなり立ち上がって芸術は爆発だとかって、バカじゃねえの?」


 教室の廊下側の席からやかましい声が飛んでくる。角刈りをキメた目つきの鋭いガラが悪い男だ。


 うるせえぞ。こちとら寝起きだわ。優しくしなさい。


「はいはーい、静かにー。爆破くん、授業中に寝ないでくださいね。次はないわよ」


 そういって担任が削られて尖った赤色のチョークを俺の方に向けて、メガネをきらりと光らせる。あらやだ怖いわ。


 先生の言葉により、俺のことを訝しむように見ていた他の生徒たちがそっと教科書を読み進め、授業に集中していく。


 俺はなんだか疲れた気分で椅子に座り直した。


 ここは青森県内にある芸術高校の一つだ。生徒は主に音楽と美術を学ぶ。

 そんな高校で俺は三年生という最も重要な時期に差し掛かっていた。


 俺がここに入学した理由はただ一つだけ。

 

 爆発を芸術だと世に広く知らしめる為である。かの有名な日本を代表する芸術家の岡本太郎は言った。「芸術は爆発だ」と。


 数多の人々が勝手に独自の解釈をして「芸術作品とはいきなり頭に浮かんでくるものだから爆発のようなものだと例えたのだろう」とか言いやがってるけど、俺はバカどもに言ってやりたい。


 んなわけねえだろうがボケナスが!

 言葉のまんまだろうがよ!


 俺はこの言葉にひどく感銘を受け、これまで様々なものを爆破してきた。

 機械しかり、化学の実験しかり、嫌いな奴を爆竹でビビらせた時しかり。


 何十回も爆発を起こしてきたが、あと一つ何かあれば完璧だったのに、と悔やむような物足りない爆発しか起こせていなかった。

 その何かを探す為にこの高校に入学したのだが。

 

「結局見つからなかったな。その何かっていうのが」


 既に高校で学べることはない。授業はネットでありふれてることしか学べず何のためにもならなかった。

 あと一欠片さえあれば、あと一つ何かを掴めさえすればいい。

 そうしたら!


「爆発を完璧な芸術にできるのに!!」


「二度はないと言ったわよ」


「グハァッ!」


 超高速でスパイラルレッドチョークが飛来してきて額にぶち当たり、俺は椅子を巻き込みながら無様に倒れた。


 恐ろしき女教師かな。



 ー数日後ー



 今日は八月一日。

 そして明日八月二日は俺の十八歳の誕生日だ。よって前々から考えていた自分への最大のプレゼントを実行します。


 現在時刻は夜中の十一時五十分。

 歴代最大のプレゼントの手順はこうだ。


 初めに俺の高校に行き、どでかい打ち上げ花火を設置する。威力は市販のものより超高い。


 いったいどこで入手したかって?

 黙れ小僧。


 その次にパソコンを用意して、ツミッターに情報を発信する用意をする。

 そして今から花火を打ち上げる我が高校の爆破予告宣言をネットに流す。


 十二時ぴったりに花火に火をつけて超大爆発! めちゃめちゃ綺麗な景色を見ながら家へ逃走すれば終了!

 高校生になってからは一人暮らしをしているから誰にもバレる心配はなし!


 これが新時代の誕生日プレゼントだぜえええぇぇえ!! フォォォオオーー!


 俺が思うに、どうしても足りない何かというのはスリルだったんじゃないかと思う。

 嫌いな奴に爆竹を投げつけた時だって学校からの帰り道で後ろから投げつけただけだったしな。


 よってこれによりスリルが足りない問題は解決! ワンチャン捕まるなんて最高のスパイスじゃねえか! 警察が来る前にとっととずらかって芸術を楽しむぜぇぇ!


 既に高校に来ており爆弾(花火)はセットし終えた。五十五分になったら爆破予告を流し、十二時ぴったりで爆弾(花火)を大爆破ぁ!

 そのままパソコンを抱えてトンズラこくぜ!


 ああ、俺は何で天才なんだろう。これほどまでに芸術を愛することができたのは芸術に愛されている証拠と言えるのではないだろうか。


 して、五十五分になった!

 爆破予告を投下しまーす!


 ツミッターに「五分後にここの高校を爆破する」といった内容の投稿を載せる。

 有名人のツイートにコメントとして載せたから多数の人の目に止まって大炎上間違いなしだ。


 溢れ出る背徳感でニヤけるのを抑えず、三日月のようにひん曲がった口角のままツミッターを何度も何度も再読み込みする。


 うひょおおぉぉお! これだよこれ! これを待ち望んでいたんだよ!!


 恐ろしい勢いでリツイートやコメント数が増えていく。これは壮観、というかむしろ怖いぐらいだな。

 これほどまでのスリル、緊張感を味わう人類はどれほどいるのだろうと、顔も知らない大多数の人々への優越感を胸に抱く。


「ああ······なんて気持ちがいいんだ······」


 恍惚とした表情のままたっぷり五分待ち、花火にファイヤーする直前にもう一度ツミッターを確認。

 五百リツイートと百いいねがついている。コメント欄には警察に通報したといった内容がいくつもあった。


 今更ながら恐ろしくなってくるが、しかしこれは俺の求める究極の芸術のためである。俺は最高の芸術のためには絶対に手を惜しまない。


 自然と手の震えがおさまり、自然な動作で花火に小さな火を灯す。嵐の前の静けさと言うに相応しい、風もない静寂な時の中。いとも簡単に火がついた。

 そして火はやがて本体へと昇っていき.....。


 ヒュー······ドッガァァアアァン!!


 遠くまで響き渡る巨大な音色を奏でてパチパチと砕けていく。


 その様を眺めて俺は見惚れてしまった。

 光り輝くチリが消えていく余韻にたっぷり数十秒も浸ってしまっていた。

 

 ーー遠くから微かに、耳に鳴り響くようなサイレンの音が聞こえた。


 本能的に危機を察知した俺の体からは大量に冷や汗が溢れだしてくる。


 まずい! 警察が来る前に逃げなければ!

 すぐさまパソコンを腕の中に抱えて暗い夜道を駆け出す。

 音を聞く限り警察はまだそれほど近いわけではない。俺の家までは嬉しいことに数百メートルしかない。このまま走り抜けてやる!


 パソコンを持ってるせいでバランスを崩しながらも走る。走る。走る。

 息が切れてヘトヘトになりながらこれ以上ないくらい全力で残りの距離を走り抜ける。


 汗だくになりながらも我が家の玄関前にたどり着いた時にはサイレンがけたたましく辺り一帯に警鐘を鳴らしていた。

 急いで鍵を開けて飛び込むように家の中に転がり込んだ俺はそのまま床へ倒れ込んだ。


 ああ、ただいま我が家。帰ってきたでぇ。何とか生き残ったでぇ。


 そして······


「キモチェェェエエエエ!!」


 我が身を滅ぼしかねないほどの危険な快楽が濁流となって我が身に襲いかかる。俺はそれに抗うことはせずビクンビクンと床を跳ね回る。

 

 これは知ってはいけない感覚。禁忌の領域。だが知ってしまったからには後には引けない。

 俺は······ヤベェ奴になってしまった。


 そのまま床でハアハア悶えていたが興奮冷めず、朝まで永遠と爆発の快楽に溺れていた。


 朝の六時半ごろに学校から休校のメールが届いた。あれだけのことをしたから当然だろうと思う反面、自分がそれを起こしたことに再び快感を覚えてビクンビクンと床を跳ねた。


 その日はやる事もなく家でダラダラと過ごし、翌日の朝六時半ごろ。今日も学校は休みだった。


 朝食を食べながら「ワイルドス○ード」の爆発シーンを見ながらケタケタと笑っていると、「ピンポーン」という普段聞きなれないインターホンの音がした。

 楽しんでいるところに水を刺されてしまい、不機嫌なまま「はあーい。いま出まぁーす」と応答をして、扉を開ける。


 警察がいた。三人の警察官が俺を険しい顔で見つめていた。


 脳の処理が追いつかずに目を丸くしてアホずらをこいている俺を見るなり、一際強面な一人が冷酷な表情で言い放った。


「爆破愛純! 威力業務妨害罪の容疑で逮捕する!」


 エンダアアアァァァイヤアアァァァァ!!

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