第39話 私は
鼓動が信じられないくらい早くなっているのを感じる。
そして、たまに来る強めの波がピカピカに磨いたスニーカーに砂を纏わせる。
「気になります、私も、恋愛...対象として」
「......え」
俺は突然の如月さんの呟きに驚きを隠せない、思わず彼女の方を向く。
「でも、まだ恋人を作る勇気が出ません」
如月さんは、長考の末、一つ一つ言葉を選ぶように言った。
最初に会った時から今まで、見たことないような真剣な横顔だ。
その言葉は、おそらく俺の告白を
ここで押すべきか、押さないべきか、わからない。
みんなどうしてるんだ、こういう時、本当にさっぱりわからん。
俺らしい立ち回りをするというのであれば、ここは『押さない』を選ぶだろう、客観的に見て、急にこんなこと言われて整理する時間が必要だとさえ思う。
ただその考え方は、世間一般とは真逆かもしれない、時にはゴリ押しも必要だ、とも思う。
ここまで来て世間一般の考え方に合わせてもおかしい。
今まで、合わせてこなかった結果、今の自分が形成されているのだから。
最後まで自分らしく。その自分らしさが伝わらないのであれば諦めがつく。
「また、会ってくれますか」
如月さんは、俺が結論を出すのを待っていたかのように、言った。
「もちろんです、またゆっくりランチでも、しましょう」
俺がそう言うと、如月さんはニコっと微笑んだ。
★★★★★
「へ~、ちゃんと言ったのか、やるじゃん」
「まあせいぜいバカにしてくれ」
矢吹が異動してから1週間、間違いなく、仕事量が増えた。
それほどすごいヤツだったのだろう。
今日も激動の一日を終えた後の坂本飲みである。
俺は相変わらず酒は飲めないが、この仕事終わりの解放感に、誰かと食事をしながら話をするのもいい気がしてきている。
「でも、貫き通したんだな、お前らしさを」
「結局な、俺はモテ男にはなれないからな。 これは悲観ではなく冷静な自己分析の結果だよ」
「うん、それでいいよ、結局自分を作る恋愛なんて上手くいかない、俺も、このだらしない感じを良いと言ってくれたから今の嫁がいる」
坂本はすっかり酔っ払っており、俺の肩に手を回してくる。
話す度に呼気からアルコール臭がすごい。
「で、どうなんだ、向こうから連絡とかも、特に?」
「うん、今のところは」
「まだ、好きなのか?」
「そりゃ、好きだわ」
俺が言うと、坂本がニヤついた。
「でも、相手に考える時間を与えたつもりかもだが、ここからのアクション無しだと、自然消滅する可能性も...あるっちゃある」
坂本が言った。確かにその通りで、その部分は俺自身も引っかかっていた。
「また、誘ってみるわ」
「おう、コツコツでいいからな、話を聞いている感じ、全然脈ありだと思うぞ、お前のらしさ発揮の成果だと思うわ」
「そうかも...な」
俺は言った。
ハッキリはさせたいが、現状ボールを持っているのは向こうだ。
でも確実に前より自分を出せているし、なにより行動に自信がついた。
結果はどうあれ、変わっている日常と自分自身に少しワクワクしている。
そんなことを考え、また日常に戻るため、坂本を引っ張ってお店を後にした。
電車で隣の女子に肩に寄りかかられたから起きるまで待ってたら俺の妻になりました。 にゃんちら @nyanchira
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