第25話 無意味の恐怖と心配
本当にどうしようか。正体がバレるわけにはいかない。別に問題になるとかではないけども、またあの時みたいにならないか心配だ。
あの時は本当に大変だった。仕事があり、1日学校を休むと、次の日にはまた質問攻めにあうし、女子…主に有名人と付き合ってマウント取りたい奴らばっかが告白してくる。別にファンが嫌いとかはないけど、そういうのは疲れるから辞めてほしかった。だからこそこうして陰キャのフリをして、今平和な日常を過ごせていた。それがまた壊れるかもしれない、そんな恐怖だってある。俺の中では軽いトラウマだから。
恐ろしいと言えるほど、これを考えている時間は短かった。いや、周りが遅くなったように感じた。そして俺が結論を出そうとしたその時、
「栄太がそんなに悩むのなら別にいいよ」
「え?」
俺は思わず聞き返した。別にこの一言がなくても答えていはいたのだが、俺の中ではこういう時、こういう流れになったときは同調によって強制的に答えさせるものだと思っていたからだ。
「だって、そんな強制的に答えてもらったところでお前はいい気分じゃないだろうし、そんなことする奴は俺、友達のすることじゃないと思ってるからさ」
「確かにそうかもしれないな、でも心配いらない、答えるよ」
「本当にいいのか?」
「ああ、ただし1つだけ条件を設けさせてくれ」
「条件?別に俺はいいけど…皆はどうだ?」
「俺はいいよ」
「わ、わたしも…」
雅の考えに、クラスの全員が賛成してくれ、俺はその条件を話す。
「条件自体はいたって簡単だ、必ず事情は話すから、明日まで学校以外のことでは俺に質問しないでくれ」
「ああ、わかった」
「じゃあ行くぞ、」
そうして自分で髪をサッサと触り、上野明になる。みんながキャーキャー言ったりするところを気にせずに俺は話す。
「皆、今まで隠しててすまない、実は俺は高校生俳優の上野明なんだ」
クラスのみんなからすごい騒ぎ声が聞こえる。そして5秒間ぐらいの沈黙の後、
「お前、上野明だったのか!?はぁ…まだ整理がつかないが、なんでいままで隠してたんだ?」
「それは、昔、有名人と付き合ってるってマウント取りたいやつが多くて毎日しつこく何人も告白してきたり、俺が仕事で1日休むだけで次の日質問攻めにあったりとかでいい迷惑があった。だからそれが嫌で隠していたというわけだ」
「そんなことがあったのなら仕方ないな、俺はそんなことはしないようにするよ」
「それでだ、俺はクラスのみんなには言ったが今日の演劇だけでは他クラスにはバレない可能性がある、だから噂程度のものだったら今まで通り早川栄太として話してくれ」
「「「わかった!」」」
てっきりもうちょいわちゃわちゃすることになると思ってたし、また二の舞になりそうな気がしたけど、無意味な恐怖と心配だったみたいだ。とりあえず良かった。浜田さんの、
「中学校と高校では周りの心境も変化しているだろうから大丈夫よ」
という言葉を信じてみて。
ちなみに雅以外(特に女子)はまだキャーキャー言っており、演劇中以外はずっと言っていた。ひとまず面倒にならなくてよかった。
もうクラスにはバレた以上、本気で演技できる。今思えばこれさえもヘタレだったからかもな、あの時捨てると決めたのに…。
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