第14話 俺がまた助けるから
「すいません、俺の連れに何か用ですか?」
俺は男の手を中野さんの腕からどけながら言った。
だけど決して顔は普通じゃなかったと思う。
既に自分でもわからない怒りが限界まで来ていたから。
「俺がまた助けるから、もし逃げれそうだったら逃げて」
俺が一瞬彼女の手をとりながら、そう言うと中野さんは男が気づかないくらい、小さくうなづいた。
すると男は、
「あ?何お前?この子たちのどっちかの彼氏?」
「違うがそれは関係あるか?関係ないだろ?」
「ならどっか行ってろ、今から一緒に遊ぶところなんだよ!」
「でも嫌そうにしているじゃないか?」
「ごちゃごちゃとうるせぇなぁ?とにかく一緒に遊ぶからどいてろ――よ!」
容赦なく俺の顔面にパンチが飛んでくる。
だがこれくらいは余裕で見切れる。子役のころからアドリブに対応し続けたおかげで反射神経がすごいことになっており、そんな急に来ただけでは冷静によけれる。なのでスッとよける。目を配らせると中野さん達は何とか逃げれたみたいなので安心しつつ、男がもう一回来たところを正当防衛で倒した。起き上がった男たちはすぐさま逃げていった。舌打ちしながら。
正直、俺は全然冷静になっていなかったと思う。俺は格闘系はできないのに正当防衛できてしまった。怒りで我を忘れてたのだろうか?
だけど、そんなことを考える暇もなく、声がかかる。
「ありがとう!早川君!」
「ありがとう!栄太ー!」
「二人は大丈夫か?」
いつの間にか俺の謎の怒りは消えていた。
男がいなくなったからだろうか?けどわからない。まぁ今はいいや!
「大丈夫だったか栄太―!」
「ああ、大丈夫だったよ、なんとか間に合った」
「雅はなにしてたの!?」
「いや俺がそのまま並んどいてって言ったから」
「そうだったんだ、」
「お前らも大丈夫だったか?」
「まぁね、栄太が来てくれたからなんとかね」
「...」
「中野さん?どうしたの?」
「あ、いえ!大丈夫です!」
「そうか?ならいいけど...な、栄太?」
「あ...ああ、そうだな」
「早川君の手...明様に似ているような...?」
今度は彼の耳にその言葉は、聞こえていた。
そのあとは何事も無かったが、せっかくのみんなで来た海を楽しもうにも楽しめなかった。
俺のこの気持ちがなんなのか、恋かもどうかもわからなくて...
そして彼女...中野愛花に自分の正体がバレそうになっていると考える暇もなく。
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