第33話 1.4.9 ミスコン⑥
「『 妹』シチュの後のお題は『 4デレ』シチュです。4デレとはツンデレ、クーデレ、ヤンデレ、デレデレの4大デレ属性のことで運営が4デレと命名させてもらいました。候補者の皆さんにはこの4デレの中から1つを選んでいただき演じてもらいます。美少女である候補者が演じる4デレ……紳士淑女の皆さんにとってはまさに
「私はさ」
前田さんが話し出す。
「プリコネを始めたときはさ、神ゲーだと思ってたんだ。フルボイスでUB《ユニオンバースト》のアニメ演出もあって無課金に優しすぎるくらい配布があってさ。……でも」
でも?
「最近のプリコネはさ、ちょーっと集金が露骨になったように思うんだよね。いやね、私だってこんなことは言いたくないんだよ。でもさ、ガチャはいつの間にか限定ばかりになったじゃん?」
「あー、たしかに最近のガチャ、限定ばっかりで恒常どこ!? ︎︎って思いますよね」
恒常や限定とはガチャの種類のことで恒常はピックアップ中以外でも引くことができるが限定はピックアップ中でしか引くことができない。プリコネ民はジュエルに余裕がないと恒常を見逃して限定を引く人が多い。
「そうそう。限定ばっかりでガチャが休まる期間がないよね」
「あと、ジュエル配布も減りましたね」
「昔は暑中見舞いとか台風通過記念とか意味不明なものもあったのにね」
プリコネは昔、謎配布と呼ばれるジュエルの配布があった。
「極めつけはさ、マスターピースだよね。新規キャラに3個も付くってどんだけガチャ引かせたいのって感じだよね」
マスターピースとはプリンセスナイト強化で使われる。プリンセスナイト強化とは6周年で実装されたキャラクターの新育成要素だ。6周年で全てのキャラクターに「属性」という新たなステータスが追加され、プリンセスナイト強化はその属性ごとに強化を行える。プリンセスナイト強化で上昇したステータス等はアリーナやボス戦など全てのコンテンツで適用される。強化でのHP/防御アップは被弾TPに影響がないため基本的に上げ得となっている。プリンセスナイト強化は属性レベル強化、属性スキル強化、マスタースキル強化、ロールマスタリー強化の4種類ある。マスターピースが使われるのはマスタースキル強化だ。マスタースキル強化の内容は属性ボーナスなど特殊なステータスだ。
「でも一番の問題はそこじゃないですよね」
「そう!! ︎︎私も言いたいことは他にあるんだよね。……一番の問題は」
「「推しキャラが来ない!!」」
俺と前田さんの声がハモる。
「私の推しツムギちゃんなんだけどさー、全然新規のガチャ来ないよね!!」
「分かります、分かります。俺も推しアカリちゃんなんですが全然新規来ませんね」
そうこう俺と前田さんがプリコネ談義で盛り上がっているとスマホの通知が鳴った。俺はその通知を見て驚いた。そしてこのビッグニュースを前田さんに話す。
「前田さん、今スマホでプリコネの通知が来たんですが……ビッグニュースです。落ち着いて聞いてください」
「え、なになに!?」
「次のイベントでツムギ(ジオ・ゲヘナ)実装らしいです!!」
「ええええ!?本当!?」
そう言って前田さんも慌てて自分のスマホを確認する。
「本当だ……え、待って。嬉しい嬉しいよう」
そう言って前田さんは嬉し泣きをする。待ち望んでいた推しキャラの実装、まさに感無量といったところだろう。俺はそれを見て俺の推しキャラアカリちゃんはいつ実装になるのだろう、うらやましいなと思った。
☆
「では時間になったのでミスコンを再開しようと思います。皆さんも今か今かと待ち望んでいたと思います。エントリーナンバー1番高橋みちる候補が選んだ4デレはツンデレです。では高橋みちる候補お願いします」
「はいっ……こほん。あんたバカあ?」
!!? ︎︎これはまさか……。
「シンジのバカ! ︎︎もう知らない!」
エヴァの式波・アスカ・ラングレーじゃないか!? ︎︎俺は高橋さんが完璧にアスカを演じていることに驚いていた。アスカもツンデレだからアリっちゃアリなのか!?
「誰かに褒めてもらいたかっただけなんだ……以上です」
高橋さんが演じ終えるとたちまちわああああと歓声が起こる。「みちるちゃん、かわいいよー」「M・I・T・I・R・Uみちる!! ︎︎M・I・T・I・R・Uみちる!!」「みちるちゃんのアスカ最高ー!!」という歓声もあった。
「ありがとうございました、高橋みちる候補。エヴァのアスカを完璧に演じてました。皆さん、拍手拍手ー」
観客席から盛大な拍手が送られた。
エントリーナンバー2番、3番と次々と4デレを演じていく。
「続きましてエントリーナンバー11番七海優奈候補です。七海優奈候補が選んだ4デレはクーデレです。では七海優奈候補お願いします」
「はいっ……微笑。おはようございます、士道」
!!? ︎︎これはまさか……。
「驚嘆。士道の背中が頼もしいです」
デート・ア・ライブの
「
「ありがとうございました、七海優奈候補。デート・ア・ライブの八舞夕弦を演じ切ってくれました。皆さん、拍手拍手ー」
観客席から拍手が送られる。俺も優奈の健闘を讃え、精一杯の拍手を送る。
「続きましてエントリーナンバー12番結城シルヴィア候補です。結城シルヴィア候補が選んだ4デレはヤンデレです。結城シルヴィア候補お願いします」
「はいっ……こほん。君の自由を奪ったから私と君はずーっと、ずーっと一緒だよ。君が悪いんだよ。私という可愛い彼女がいながら他の女の子に鼻の下を伸ばすんだもん。だから君のこと監禁しちゃった♪」
「監禁しちゃった♪」じゃねーよ!? ︎︎いやいや、軽く言ってるけど監禁はめちゃくちゃ重いからな。『 妹』シチュでも愛が重い妹を演じてたしもしかしてシルヴィアってヤンデレの素質があるのか……?
「まずは私しか見られない考えられない身体にするからね。ふふふ、もう逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない……」
いやいやいや、怖い怖い。
「以上です」
「ありがとうございました、結城シルヴィア候補。監禁シチュというまさに王道のヤンデレでした。皆さん拍手拍手ー」
観客席から拍手が送られる。俺もシルヴィアの健闘を讃え、精一杯の拍手を送る。
「続きましてエントリーナンバー13番水原結衣候補です。水原結衣候補が選んだ4デレはデレデレです。では水原結衣候補お願いします」
結衣ちゃんはデレデレを選んだのか!! ︎︎否応なしに期待が高まっていく。
「はいっ……こほん。好きだよ、だーりん」
なん……だと……!? ︎︎だーりん!?
「私ね、だーりんと一緒にいられる毎日が本当に嬉しくて嬉しくて幸せなんだ。だからね、これからも二人で一緒にずーっと幸せに過ごそうね?」
もちろん。俺は心の中で即答する。俺は結衣ちゃんと幸せに過ごせるならどんな犠牲もいとわない。
「えへへ、だーりん、もっと構って構ってー」
か、可愛い……! ︎︎え、めちゃくちゃ可愛いんですけど。だーりん呼びのかまって星人結衣ちゃん可愛いすぎかよ……。あまりの可愛いさに胸が締めつけられる。俺はもう駄目かもしれない。
「だーりんは私のこと好きー? ︎︎私はね、だーりんのこと大好きー!! ︎︎いつも優しいところもいつもヒーローでかっこいいところも私の前でだけ弱音を吐いちゃうところも全部ぜーんぶ大好きだよっ!!」
結衣ちゃん……! ︎︎俺は結衣ちゃんの言葉で心がジーンと温かくなった。そして俺は妄想する。だーりん呼び結衣ちゃんとのイチャイチャ新婚生活を。
☆
俺は都内のくたびれサラリーマン。今日も残業をこなして家に帰っているところだ。ただ、俺にはお嫁さんがいる。世界一可愛いお嫁さんが。
「ただいまー」
「おかえりっ、だーりん!!」
そう言って美少女が俺に抱きついてきた。そうこの美少女こそ俺のお嫁さん結衣だ。
「だーりん……さみしかった、さみしかったよ〜」
「ごめんな、結衣。いつも寂しがらせて」
「だーりんのお仕事に一生懸命なところいつもカッコいいって思ってるよ。だけど今は今だけはギューって抱きついてもっと甘えてもいいかな?」
「もちろん」
俺は即答する。もともと抱きついていた結衣がさらにギューと抱きついてくる。俺はそれを抱き締め返す。
「えへへ、だーりん好き……大好き」
いとおしいなと思った俺は右手で結衣の頭をなでた。そうすると結衣は目を細めてにへらと笑う。
「えへへ、だーりんにナデナデされるの好き……。クセになりそう」
〜〜〜っ。俺は声にならない悲鳴を上げる。この子は何回俺を悶えさせたら気が済むんだろう。このままでは俺は悶え死にそうだ。
「ねえ、だーりんは私のこと好き?」
☆
「大好きだ!! ︎︎結衣!!」
「い、いきなり大声出してどうしたの、結城君?」
俺は前田さんの声でここが妄想ではなく現実だということを理解した。そして俺は気づく。妄想にトリップした状態で結衣ちゃんに愛の告白をしたことを。俺はハッとしてステージの上の結衣ちゃんを見る。結衣ちゃんは恥ずかしさからか顔が赤面し耳まで真っ赤になっていた。
「……以上です」
「ありがとうございました、水原結衣候補。だーりん呼びのデレデレシチュが可愛らしかったですね。皆さん、拍手拍手ー」
観客席から拍手が送られる。俺も結衣ちゃんの健闘を讃え、精一杯の拍手を送る。
こうして俺による結衣ちゃんへの公開告白というアクシデントはあったものの無事に『 4デレ』シチュが終わった。残るはついに『 告白』シチュ、そして最終審査だけになった。俺は特別審査員という役目を全うしよう、そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます