迷い。
クレンにはかつて憧れていたヒーローがいた。よくあるヒーローアニメの登場人物だったが、自分がどんなピンチに陥っても、自分より人を優先する彼に憧れていた。ただ一方で、それが現実にあらわれたかのように、彼をいじめから救ってくれたかつての友人は確かにクレンの中では英雄だったが、ひと気がかりな事があった。それは、英雄が救った人間が、英雄のように勇気があり、そして英雄のような行動がとれる人間なのか、その責任を全うできる人間なのか。
クレンは、自分がそれから逃げた時の事を思い出す。友人に助けられた時も、母の時も……母の死の数日前、クレンは危険を知らせる予知夢をみていたのに、母の死を止められなかった、そもそもクレンが罰しなかった幽霊のために、母はしんだ。その予知夢―燃え盛る火の中にベッドに横たわる母が一人、自分にむけて手を伸ばし叫ぶ―“助けて……”
(俺は……つぐないをしたいのか?それとも、贖罪をしたいのか、逃げたはずの“退魔師”に戻りたがっているのか?いや、そんなんじゃない……、今の自分ならできることとできない事の区別くらい判断できるはず、正義を貫くかどうかなんて関係なく、父さんだけは、守らなくては)
昨日の夜、生善はひどくつかれていた。その品が関係があるかはわからないが、クレンは確かめてみることにした。
《カチリ》
扉を開く、その中には、棚の中央に確かに禍々しい気配をもつ奇妙な壺がおかれていた。
(スッ)
手を伸ばす。と確かに禍々しさを感じる壺だが、クレンはおかしな感覚を覚えた。
(なんだろう、これ……たしかに“憑き物”がついている感じはするが、この怒りや恨みは誰か特定のものに向けられているように思えない)
クレンは、それをもちだし、蔵の前で扉をしめぴたりととまる。
「そうさ、毒を食らえば皿まで」
そして何をおもったか、そのままあの男―クレンが気絶させていまだ意識が戻らぬ男―の傍へ壺をもっていき、そのまま座禅を組んだのだった。集中すると“瞑想次元”と思しきアレにアクセスしようとした。
―……―
どのくらいそうしていただろう。丁度そこに、クノハがとおりかかる。その時にはクノハはクレンの家を、すでに自由に出入りするようになっていた。
「プハッ!!!まさか、本当につながるなんて!!」
「うわああ!!びっくりした!!!」
クノハがクレンの肩にてをかけ呼びかけようとしたその時、クレンは丁度現実に引き戻された瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます