遭遇
セイヤは、このところ思うところがあった。クレンをたきつけたあの事件の後、こっぴどく親に叱られたことも関係していたが、あれ以来クレンが自分に本音を話さなくなった。男を気絶させた券だって、カノンの方がよくしっているくらいだ。
「俺には、何も見えない……」
セイヤの両親が出会ったのは、二人がある古びた教会に導かれた事からだった。それはこの街の郊外にある教会で、存続の危機にあったころ、熱心なクリスチャンである二人は、それぞれ別の啓示をうけた。夢のなかに白く光る男があらわれて告げたのだ。
「この街の郊外の教会をみろ」
と父が。
「そこに運命をたどる糸がみえる」
と母が。
それから二人は、教会の修繕費用と神父探しに没頭し、お互いをしることになり、啓示の事を話した。奥手だった父と、男嫌いだった母がその啓示をもとにつながり、お互いを必要とするようになっていった。それこそが奇跡だと二人はいう。
二人は、もともと霊感がつよく、死んだ人の霊を見ることがあった。そのほとんどが教会で見るという条件つきではあるが。セイヤが生まれたあとは、この子にはどんな能力があるのだろうと期待していたそうだ。だが、セイヤには直接は話さないが、二人はがっかりしていたという。何せ、そんな能力など何もない、神さえも信じるそぶりも興味も持たない子供が育ったのだから。
「俺は……出来損ないだ、クレンとは違う……」
そんな落ち込みを抱えたまま、クレンに自分の憧れを重ねて、あの時背中をおしたのだろうか。そこに罪悪感や、不安はあった。
「何やってんだろうな、本当……」
教室をみて、ドアにもたれかかり、ため息をついた。その時だった。
「……」
声もしない、音もない。だが何かの気配を感じて、真横を見る。数メートル離れたもう一つの出入り口、ドア付近に、何か黒い靄のようなものを見た気がして、目をこする。だが何も見えず、またため息をついて自分の席へ向かおうとした。その時だった。
「私ガ……見えるノ?」
「!!」
セイヤはその時初めてこの世ならざるものをその目で見たのだった。
その夜。クレンは一人お札がはられた蔵の前にたっていた。
(どうするか、いまなら父さんもいないし、つきまとってくるクノハも今はいない……)
ドアの取ってに手をかける。鍵は生善の机の上に置かれているのをしっていたので、すでに準備して手元にある、鍵を刺しクルリとひねる。
(……厄介ごとは早めに、おやじは一人で解決しようとするだろうし、でも……)
クレンは、自分が知らず知らずに退魔師だった頃のように活動しようとしている事に気づいた。
(また、英雄気取りか……)
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