クレンの怒り

 魔女のような姿をした、ヘラとよばれた悪霊がクレンに襲いかかる。クレンは彼女が巻き起こした風でふきとばされた。そして袋小路の先でのっそり起き上がる。

「ははは、あの人がお前を評価していたが、大したことはないじゃないか、これなら俺でもやれる、この仕事、楽だったな!!」

 のっそりと起き上がりながらクレンは言い放つ。

「あの犬に悪霊をつけたのは、お前なんだな」

「そうだ、あれもお前の実力を測るためだった、だがお前、修行をさぼっているんじゃないか?」

 クレンはそこで、はっとした。生善に言われた事をおもいだしたのだ。場合によっては話をあわせて、クレンが後継者としての地位を捨てたことをいわないほうがいい。

「いや……ちゃんとやっているさ……」

「??ふむ……」

 クレンの手のひらに熱く強い気が集まっているが、クレンは不安だった。以前のように毎日修行をしたり、鍛練を積んだりしているわけではない。この悪霊を払いきることもできるかわからない。そこで考えに考えて、ある事をきめた。

「……やってみるか」

「ん?なんだ?」

 悪霊と契約した人間は、身体能力もあがり、精神的にも傲慢な性格になっていくという、カルマテイカーは、生善いわく、そうした能力を身に着けるプロ集団のようなもの。普通に戦っていては身体能力や、悪霊の力に気おされてしまうだろう。だが彼らにも弱点がある。それは“契約痕”だ。人が悪霊の力を借りるには、その人の霊力を使い悪霊と対話し、契約の呪文をかける必要がある。それは、血で刻まれ、肉体のどこかに、その血が消えようと目に見えない傷となって刻まれている。

 クレンは、手に集めた気を、目に目元に近づけ、目に分け与えた。

(何をしているんだ?)

 ダレスという男は、クレンのことを甘く見ているとはいっても警戒しながら、出方をうかがっているようだった。

(一度で決着をつける、前回のように長引かせるわけにはいかない)

 そう決心し、クレンは目をあけた。まるで幽霊を見る時のように集中し、この世にあらざるものの痕跡をたどる。

「首だ!!!」

 そう叫ぶと、相手は悲鳴をあげた。

「ひい!!何を……」

 悪霊がさけぶ。

「グウウウオオオオ!!!アアエアアア!!!」

 走り出したクレンは、叫ぶ悪霊に思い切り右手をふりかざし、正面から殴りかかろうとする。しかし悪霊に気があたるその寸前で体を回転させ、悪霊の下をすりぬけていった。そして、ダレスという男のすぐ前にたち。左手で襟首をつかんだ。

「や、やめろ!!やめてくれえ!!」

 


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