第134話 いたちごっこの千日手

 物事とは往々にして一歩進んだら二歩下がるものである。また因果とは絡まった糸のようで、一度関わりを持つと複雑に絡んで解けなくなるものである。


 by リンタロウ。



 オレたちが革命を企てる霊獣解放派と話を詰めている間に、事態はまた予想外の方へ動く。

 ヴォルケランドで不死鳥囮派でも過激派だった一派が、国抜けしてレーゲンランドに亡命してきたのだ。

 さらに奴らは自身たちの身の保障を約束してもらう代わりに、オレたちがヴォルケランドが送り込んだスパイだとバラしたのだ。

 紛糾するレーゲンランドの軍議。表面上は不死鳥食べる派に歩調を合わせていた霊獣解放派が、オレたちの擁護に回ってくれたが、天使でない者の肩を持つのか? との意見と、オレが「彼らは過激派であり、レーゲンランドでも火種になる」とこぼしたことで、事態はまた揉めに揉め、どこからかリークされた霊獣解放派の情報が、レーゲンランド上層部から出されると、霊獣解放派は上層部の裏帳簿を持ち出し、資金不正流用で上層部を追い詰めた。

 誰もが誰もを信用できなくなっていくレーゲンランドで、オレはマザーの名の元に皆を説得していく。


「マザーが現状を見たらどう思うでしょう?」

「大事なのはマザーの意に添った行いを心掛けることで、今回の不死鳥云々は降って沸いた別問題ではないか?」

「上層部はマザーの意思をねじ曲げた。近く天罰が下るだろう」

「マザーは絶対、マザーこそ至高。不死鳥は食べなくて問題ない」


 と妄言虚言のでまかせをレーゲンランドの一人一人とわざと真剣に目を見るように語れば、初め少なかったオレの信用はマザーの威光を傘に徐々に増えていき、議会の半数を超えたところで上層部解体を進言。

 かくして今まで指名制であった上層部の初めての国政選挙が実施され、厳正なるその集計結果により、オレがレーゲンランドの新たなる首長に就任することになったのだった。…………あれ? どうしてこうなった?



 戦争直前での首長交代により、オレは改めてヴォルケランドの首長と戦争をどのようにするかの話し合いの場を設けてもらった。

 その場に現れたのは烈牙さんだった。

 ヴォルケランドにおいても過激派がごっそり抜けたことにより不死鳥囮派が一気に衰退し、それを上手く吸収したのが熱波派であった。これにより熱波派はヴォルケランドの一大勢力となり、神聖視派であったヴォルケランド上層部を排し、熱波烈牙がヴォルケランドの新たな首長となったのである。


「お互い、何の因果でこんなことになったんでしょうね?」

「まったくじゃ。ワシはサムキバの布教をしていただけなんじゃがのう」


 会談で顔を見合せ苦笑いするしかなかったオレたちだった。


 さて、オレと烈牙さんが首長になったのだから、戦争なんてしなくて良いのではないか? と思うかも知れないが、それはたわけの言い分である。

『たわけ』とは『田分け』と書き、農家が子供に平等に田を分配したことに由来する。そうするとどうなるのか? と言えば、子供は平等に少ない田しか与えられなかったのだから、子供は皆飢えることになるのだ。だからこそ長子が跡を継ぎ、次子以降は他へ流れるのである。

 ヴォルケランド、レーゲンランド両国においても、戦争を止めたからといって、全員を賄えるほどの食糧が無いことは自明の理であり、また戦争によって生き残った強者が子孫を残していくことにより、強い天使が残ったとも言えていた。

 結局、首長が交代したところで戦争は避けられないものであった。

 そんな中でオレと烈牙さんはある取り決めをし、戦争の日取りを決め直し、両国は戦争の準備を着々と行ったのであった。

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