第131話 戦争と政争

 浮遊島はとても綺麗だが実りが少ない。

 それは今回の戦争相手であるレーゲンランドも同じそうだ。そのため、両国ではある程度の期間を置いて、戦争をすることで勝国が敗国から食糧を拝借する。という取り決めがなされているのだそうだ。

 だが戦争の勝利ほど灰色のものはなく、いつもであれば互いの食糧庫を襲い合い、6対4ぐらいの食糧分配がなされて決着するそうだが、今回はそれに加えてカナリアが俎上に載せられている。相手の戦術、戦略がどのようなものになるか予想がつきにくいそうだ。

 では何故カナリアが今回の勝利品に挙げられたのか、と言えば、文字通り食べるためである。

 これを残酷と言うかどうかは、すでにカナリアがオレたちの仲間であり友である、という認識から、正常に判断できない。

 首長の言を信じるなら、例えこの場から逃げようとも、レーゲンランドの天使たちは、この世の果てまで追ってくるそうだ。解決方法はこの戦争の勝利である。



 戦争とは政争である、とどこかで偉い人が言っていたような気もする。

 天使たちが信仰の対象としているのは、もちろんマザーだが、聖鳥である不死鳥も神聖視されている。

 だがその神聖視の仕方は様々だ。レーゲンランドの天使たちのように不死鳥を食べることによってマザーに近付けると信じている奴らもいる。

 ヴォルケランドでも、絶対的神聖視をしていて、不死鳥が奪われることは他の全ての食糧が奪われる以上の敗け、と考える派と、神聖ではあるが所詮は鳥、不死鳥を囮に使い、いつも以上に食糧をぶん取る算段をとる派で、ヴォルケランドの軍議は分かれた。

 この二派が喧喧囂囂けんけんごうごうと言い合いをしている間に、他勢力は密かに力を蓄えていた。

 要は良いとこ取り派である。不死鳥は神聖とされているので守るのは嫌じゃないけど、いざとなったらやっぱり食糧でしょ派が第三勢力とした名乗りを挙げると、二派から脱退し第三勢力に加わる者が多数出た。

 そのため、二派は抜本的な主張の見直しを迫られることになった。

 絶対的神聖視派だったはずが、確かに食糧は大切だ。7対3ぐらいで手を打とう、と変わり、不死鳥囮派も、不死鳥も大事だよねと日和り始めた。

 だがそうなると、いや、不死鳥は絶対的なものだ! と強硬に主張する第四勢力や、何を守るとかどうでもいいから、相手を全滅させよう、という過激派まで現れ、議会は玉虫色の様相を呈してきた。

 そこに更なる勢力が加わることになる。熱波派である。その筆頭はもちろん熱波烈牙氏である。

 全てを守れずして何が侍か! と議会で右往左往する天使を喝破かっぱし、無理矢理自身の修練に付き合わせていたが、天使たちは氏の清廉な人柄に触れることで感化されていき、いつの間にやら熱波派は議会最大勢力となっていた。



「す、スゴいですね烈牙さん」

「なに、言っていることの九割はサイキバの受け売りじゃよ」


 と廊下を歩きながら高笑いをする烈牙さん。天使たちが皆烈牙さんにあいさつしていく。マジスゲえ。くっ、ちょっとサイキバ見てみたくなってきてしまった。


「おお、そう言えばリンタロウ殿、我らの翼生成手術、やっと許可が下りたぞ」

「本当ですか!?」


 よし! これで空中戦に加われる。仲間の危機なのだ。羽根でも何でもくっ付けて、空ぐらい飛んでやる。


「こんにちは」

「うむ、こんにちは」


 布で包んだ箱を大事そうに抱える天使が、すれ違いざまにあいさつをする。それに対して当然のようにあいさつを返す烈牙さん。本当にスゲえよ。

 オレにできることと言ったら、その不審な箱を抱えた天使の肩を掴むくらいだった。


「その箱、中身何かなぁ?」


 オレが笑顔で尋ねると、天使はその箱で肩を掴むオレの手を振り払い、箱を投げ出し逃げて行った。


「不審者です! 捕まえてください!」


 オレの叫びにその場にいた天使たちはびっくりしていたが、すぐに逃げた天使を追いかけて行ってくれた。


「さて、箱の中身は何だろうね?」


 と布を払い箱を開けると、中にはぐっすり眠っているカナリアがいた。

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