第115話 感謝の印
「いやぁ、良いなこの鎧」
ガチャガチャと鎧を打ち鳴らしながら、オレたちは砂漠を東行している。
砂漠の黄金郷にあった全身鎧。マヤは赤、ブルースは黒、マーチは白、オレは赤の全身鎧を着けている。兜まで被ってまさに全身武装だ。全身鎧は重ければ50キロはあるらしいが、この鎧には重量軽減の魔法が掛かっているらしく、着ていないのと変わらず軽い。さらに砂漠の熱暑も凍夜もものともせず、砂漠の悪路にも強い。先々史文明万歳だ。お陰で三人に付いていける。
「いやぁ、しかしあれには笑ったよな」
「あれって?」
マヤが聞き返してくる。
「ラマド王子とラハドだよ」
「ああ。はははは」
マヤも思い出し笑いをしている。
オレたちがアウルムへ帰るとなったとき、ラハドはわざわざオレたちの見送りに来てくれたラマド王子から少し離れたところで、複雑そうな顔をしていた。
「なんだよ、オレたちと別れるのがそんなに寂しいのか?」
「そんな訳あるか」
ジト目で突っ込まれた。
「それとも…………、シンデレラさんが男で残念か?」
「なっ!?」
分かりやすく焦るラハド。
「どうかしたのか?」
そこにラマド王子が声を掛けてくる。
「ラハドが、ラマド王子が女の子じゃなくて残念だって」
「バカ! そんなこと言ってないだろう!」
ラハドに首を絞められるオレ。
「ラハド。我ではダメか?」
手を合わせて上目遣いでラハドに懇願するラマド王子の様は、まさに女性のものだった。その姿勢に顔を赤らめるラハド。
「え? あ? いや、そんなことは、ないです」
段々声が小さくなっていって俯いてしまう。いや、うぶかよ。
「では今後も我のために尽力してくれるのか?」
「あ、はい」
「嬉しいぞ!」
ラマド王子がぎゅっとラハドを抱きしめる。そこでやっとオレを解放するラハド。その顔はデレデレだ。落ちたな。
「非生産的だわ」
とはマーチ。ブルースも頷いている。
「まあ、愛の形ってのは十人十色、人それぞれなんだよ」
オレの言に頷くのはマヤだ。
その後、愛とは、とか、恋とは、とか、結婚なんかの話で盛り上がっているうちに、アウルムの西の果て、火山近郊の難民キャンプにたどり着いた。のだが、もうそこはキャンプじゃなくなっていた。
それなりの建物が何軒も建ち、
「あ! お姉ちゃんたち!」
と元気になったシャララちゃんがオレたちに駆け寄ってくる。それでオレたちに気付いたのか、子供や大人たち、野次馬の冒険者たちまで寄ってきてしまい、オレたちは囲まれて動けなくなってしまった。
「ありがとうございました」
その場を制してくれたアウルムの衛兵に礼を言うと、王都でオーロ王女が報告待ちとの話。馬車があるのでそれに乗っていくように、と衛兵が馬車を用意する間に、オレとマヤ、マーチは長老へ報告に、ブルースは弾丸の補充に向かった。
「ご苦労様でございました」
長老に平身低頭して頭を下げられるが、いやいやいや、ととりあえず長老に起きてもらう。
「それにしても、あっという間に栄えましたね」
難民キャンプだったこの場所が、すでに村と言って差し支えないほどになっている。
「これも皆様とアウルム王家のご助力あってのことです」
どうやらオーロ王女は、オレたちがいなくなった後のアフターケアをちゃんとしてくれてたようだ。
「いえいえ、オレたちなんてここにちょっと立ち寄っただけですから」
「いえ、皆様が水銀中毒を治してくださらなければ、そして食料支援をしてくださらなければ、これほど早い復興はありませんでした」
そういや食料支援なんてのもしてたな。
「それで皆様には感謝の印として、こちらを」
そう言って長老が取り出したのは、ガラスの小瓶に入った透明な液体だった。
「これってもしかして、エリクサーですか!?」
こくりと頷く長老。
「もしかしてオレたちがサブルムに行ってる間に素材を採りに行ったんですか? 危なかったんじゃ?」
「いえいえ、皆さんが先に露払いをしてくださっていたお陰で、さほど危険はなかったそうです」
だからと言って全く危険がなかった訳じゃないだろうに。
「どうぞ、お納めください」
言われてもな。オレはマヤとマーチを見遣る。二人とも難しい顔だ。長老の方を見ると頭を下げている。
「ハァー。分かりました。ありがたくいただいておきます」
オレがそう言ってエリクサーの入った小瓶をポーチにしまったところで、衛兵から馬車の用意ができた、と呼び出しがあった。
長老に別れを告げて馬車まで行くと、馬車の前ではすでにブルースが待機していた。
「何かあったか?」
勘が鋭いねえブルースは。
「馬車の中で話す」
オレたちは馬車に乗り込み、一路王都へと向かったのだった。
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