第104話 クリスマスイヴ
「「何でここにいるんだよ?」」
時は12月24日。クリスマスイブ。オレはかねてより父に誘われていた外食で、レストランにやってきていた。
個室に長テーブルだというのに、対面ではなく父の横に座らされるという何とも奇妙な座り位置に、この後起こることを予想して、オレはすでに暗い感情に囚われていた。
そこでやって来たのは、明るい巨乳のお姉さんに、何とも複雑そうな顔をした、その家族とおぼしき面々である父親母親、そして妹だ。そしてその妹を見て、オレは思わず席を立っていた。
オレの動揺ぶりに、相手方の家族の視線もこちらに向く。そして相手方の妹はオレを目にして、物凄く嫌そうな顔をした。
「マヤって、リアルネームだったんだな」
「リンだってそうじゃない」
次々と出される豪華な料理も、何食べてるんだか味がしない。
オレの対面には、父ではなくマヤが座っていた。ゲーム内の相棒としてではなく、父の婚約者の妹として。黒髪だが、顔立ちはゲーム内そのままの綺麗なものだ。
その横では父の婚約者である姉が、我が父と明るく談笑している。父よ、そんな明るい顔、初めて見たんだが?
「でも驚きね。二人が同じゲームをしていただなんて」
父の婚約者、マキさんに話を振られるが、「ははっ」と愛想笑いをするので精一杯だ。
父とマキさんの会話から察するに、オレの誕生日に父がHMDを買ってきたのは、マキさんのアイデアだったようだ。まあ、元々親子関係の改善はしたかったようだが。それでマヤに贈ったHMDが好評だったので、オレにも贈ってみたらどうか? という流れになったらしい。
まあ、そんなことはどうでもいい話だ。こんなコブ付きのおっさんと結婚しようとしている娘を持った向こうの家族に比べれば。
「ハァーーーーー、私たち何してるんだろうね。向こうに行ったら砂漠越えが待ってるっていうのに」
長いため息の後、ボソリとマヤがこぼす。どうやら姉のことは諦めたらしい。
「で、どうなの?」
「何が?」
「ブルースと何か色々造ってんでしょ?」
「まぁな。何て言うか、前々から思っていたが、このゲーム最強って実はブルースなんじゃないか? と本気で思えてきたよ」
「ビルドアップされてるんなら、私の方は異論ないわ」
と頷いてみせるマヤ。
「で凛太郎の方はどうなんだ?」
「は!?」
いきなり父に話を振られてビックリしてしまった。
「だから、来月からマキさんがうちで暮らすって話だ」
はい!?
「私聞いてないわよ!?」
オレより早くマヤが声を上げる。
「今さっき、私は異論ない、って言ってたじゃない」
とマキさん。
「あれはゲームの話! リアルで、高校生がいる家で暮らすなんて、賛成できる訳ないでしょ! パパ! ママ! いいの!?」
だがそれに対する反応は「好きにしなさい」だった。力なく椅子の背もたれにもたれかかるマヤ。これはマヤがいくら反対したところで、うちにマキさんが住むのは決定だな。
「オレ、家、出てくわ」
「何言ってるんだ凛太郎! 高校生で一人暮らしなんて、認められる訳ないだろ! だいたいお金はどうするんだ!?」
親としてはお決まりだが、オレと父との関係では、遅きに失している。というか遅すぎだ。
「金なら稼いでる。オレやマヤがやってるゲームって、リアルマネーを取引してるから、一人暮らしするくらいの金なら、もう稼いでる」
マヤ以外の全員が口をあんぐり開けて驚いていた。その後、マヤとオレを見比べる。マヤもオレに同意するように頷いていた。
「最近マヤが高い服ばっかり着てるから、どういうことなのか? と思ってたら、そういうことだったのね」
とはマキさん。そういうことです。マヤ家は納得のようだが、父は腕を組んで難しい顔のままだった。これは家に帰ってからも話し合いだな。
「何かごめん」
「何が?」
食事が終わり店を出たところで、マヤが話し掛けてきた。
「だって私のせいで一人暮らしする流れになっちゃったから」
「ああ、いいのいいの。元から一人暮らしみたいなものだったから」
とあまり思い悩まないように言ったのだが、マヤはタクシーに乗って帰っていくまで、しきりに謝り通しだった。
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