第92話 新調
「クリスマス、家族で外食するか」
12月。寒さが日に日に厳しくなっていく時候、先生も走り回る忙しさ。そんな中、父から爆弾が投下された。
「え? ええ? ちょ、ちょっと考えさせて」
オレはそんなことを口走っていた。いくらオレと仲良くなりたいからといって、家の食事さえ時間が合わすに一緒に取らないのに、いきなり外食とは、しかもクリスマスに。中々の難問である。
「そうか。その日は空けてあるから、当日までに考えておいてくれ」
父はそう言って、オレの返事にダメージを受けた様子もなく出ていった。
窓から外を見てみれば、父がうなだれているのが分かる。ハァー、どうしたもんかなあ。
「ああ、最悪」
土の民の広間の一角にはなぜか教会がある。巨人の国にもあったし、どんだけこの世界の宣教師は優秀なんだ? と首を傾げてしまう。
そして教会でこの世界に
「どうかしたのか?」
父との外食のことを考えて、一人教会で頭を悩ませていたときに、どんよりムードでマヤが現れたので、思わず聞いてしまった。
「それがさあ、お姉ちゃんが今度のクリスマスに彼氏と会食するって言うんだけど、それに家族を紹介したいから同席しろって」
こっちもクリスマスがらみか。
「別にそれぐらいいいだろ? 嫌なのか?」
「お姉ちゃんの彼氏がどうもねえ。でも行かないとHMD取り上げるって言うし」
「ずいぶん強硬だな。そんな権利あるのか?」
「私お姉ちゃんにHMDもらってこのゲームやってるから」
「それは強硬手段に出るな」
マヤの家に比べれば、うちはマシかもなあ。でもなあ、話すことないのに、面と向かって無言で食事。憂鬱だあ。
「「ハァーーーーー」」
「二人して何を長いため息吐いてんだよ? ほら、オレたちの新しい武器が待ってるんだぜ? 行くぞ!」
一番最後にきたくせに、一番元気なアキラはオレとマヤの背中を叩いて教会を出ていった。
「あいつは能天気で良いなあ」
「うん」
「うおおおッ!! これがオレの剣かあ!! カッケー!!」
テンション上がりまくりだなアキラ。
アキラの剣の刀身は、炎のように揺らめく波形で真っ赤な色をしていた。
「でも炎は出てないんだな?」
確かに。赤いし炎のような刀身だが、炎は出していない。
「パスで魔力を送ってみな」
鍛冶屋の小人がドヤ顔でアキラを見上げている。
アキラが言われた通り魔力を剣に込めると、赫赫と光り出した刀身から、炎が吹き出る。
「おお! スッゲー!」
「熱くないのか?」
オレが尋ねると、アキラは首を横に振る。
「刀身は確かに熱いけど、柄は冷たいぐらいだ」
へえ。
「柄と
とドヤ顔の小人の鍛冶屋。そんなのもあるんだな。
「名前は? この剣の名前は何て言うんだ?」
「グラディオフランマだ!」
ドヤ顔の鍛冶屋。
「グラディオフランマ……! カッケーぜ!」
カッケーかどうかじゃなく、有用かどうかが今は大事だと思うんだが。
「私のも熱いって感じはしないわね」
マヤに渡されたのは、バージョンアップした鬼面の大盾と赤い小手だった。こちらは炎鬼の大盾と火炎小手と言うそうだ。名前のセンス、違いすぎない?
そしてファラーシャ嬢には火系統の魔法を強化してくれる杖、フェルラフランマを、マーチには火炎小太刀と氷結小太刀を二本ずつ四本。フレッド殿下たちにもそれぞれ炎系統の武器が贈られたようだ。いや小人たちメッチャ友好的じゃない?
そして謎なのがオレとブルース。ブルースに贈られたのは古竜の角から造られたという角笛だった。
「催眠系統の魔法がサラマンダーには有効だというのが分かったからな」
との理由らしい。ブルースがいままで使っていたラッパは、小人たちが使うそうだ。
「良いやつなんだよな?」
価値がどれほどか分からない。
「ドラゴン系統の武器で、しかも古竜だからな。おそらく能力的にはいままでのラッパの20倍はあると思う」
うん。いままでのブルース無双がさらに加速するってことですね。
で、オレが渡されたものなのだが……、
「おぬしは簡単なサラマンダーの倒し方を編み出してくれたからな。我らが先祖より代々受け継がれし秘宝を贈呈する」
ドヤ顔の鍛冶屋。
はあ。秘宝と言われてもよくよく見れば、確かに凝った造りの鍔と柄である。それだけだが。
「えーと、肝心の刀身が無いんですけど?」
「その剣には元々ついていない」
どゆこと?
「その剣はグラディオマギアと言ってな。魔法を剣の形にしてくれるのだ」
「はあ、凄いんですか?」
「スゲエよ!!」
食い付いてきたのはアキラだった。
「それがあれば、あのエネルギー波だって剣の形にできるってことだろ!」
それは別にオレのイメージ次第なのでは? と思いながら、オレはエネルギー波を作り出してみる。すると魔力が剣に吸われるような感覚があり、何もなかった剣の刀身部分には、光輝くエネルギーの刀身があった。
「おお!」
あ、こりゃ楽だわ。必死にイメージして剣の形にするより、こっちの方が数段楽なことがオレでも分かる。
「こんな良い物もらっちゃって良いんですか?」
なんだか労働の対価として、報酬が良すぎる気がして恐縮してしまう。
「ああ。我々の総意だ。持っていってくれ」
最後までドヤ顔できめる小人の鍛冶屋だった。
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