第79話 乱戦2
「ふふ。まだまだ楽しみましょう!」
言ってオレに駆け寄ってくるシャークに、牽制として銅貨を撃ち出す。当然のように半身で避けるシャーク。そこにオレが突っ込んでいく。カウンター気味にオレに攻撃を合わせようと鉤爪を振り下ろすシャーク。が、直前でスライディングしたオレに、有効範囲の短い鉤爪は届かなかった。
シャークをスライディングで追い抜き、別れ際に多量の銅貨で目眩まし、そしてオレは乱戦の中に入る。
オレがやるべきは数的優位を作ることだ。五対五ではどうにもこちらの分が悪い。
では誰をこの場から排除するか? タコ野郎の擬態は凄いがブルースは対処できている。アリアの相手はキツそうだがまだ持ち堪えそうだ。ファラーシャ嬢対シャコは両者動き回って的を絞らせていない。がマヤは相性が悪い。氷の矢を盾で防ぐことには成功しているが、氷が盾にへばり付き、霜が降り始めて盾を持っているのがキツそうだ。となると、
ビイィンッ!
「うぐっ!?」
スズキは突然の銅貨の飛来を避けきれず、銅貨が脇腹をかする。できたのは一瞬の隙だが、強者同士の戦いではその一瞬が命取りだ。しかも精巧な弓使いなら尚更。
「はあああああああ!!」
マヤはその一瞬で盾ごと突進をかましてスズキを壁に押し付けると、盾から飛び出していた相手の首を手斧で斬り飛ばした。
「やってくれましたね」
そのマヤに後ろからシャークの凶刃が迫るが、そこはオレの礫弾で牽制する。
「マヤ! そいつは電撃を使う! 盾じゃ防げない!」
「じゃあどうしろってのよ!?」
すでにシャークに対して盾を構えていたマヤから非鳴が上がる。
「マーチと相手を代わってくれ!」
「! なるほど、心得たわ!」
「そっちも毒を使うから、生身で触るなよ!」
「オーケー!」
オレが礫弾でシャークを牽制している間に、マヤはシャークの横を抜けてマーチのもとへ。話が聴こえていたのだろう。マヤが来るなりすぐにその場をチェンジしたマーチが、シャークに人形を差し向ける。
「くっ!」
シャークはニコニコ顔のままだが、電撃の効かない人形相手では、やや防戦に回るしかないようだ。
マヤの方も、その大きな盾でアリアの手擊を難なく防いでいる。さすがにマーチたちの師匠とはいえ、完全防戦に回った大盾使いの防御を突破するのは難しいらしい。
さて後は二人。
タコ野郎にはブルースはついていけてる。ってかあいつ目ぇ瞑ってないか? うわあ、音だけで居場所判断してるよ。スゲエな。ブルースは大丈夫、と。
オレがファラーシャ嬢対シャコの戦いに目を向けたのと、ファラーシャ嬢が被弾したのは同時だった。
「ファラーシャ!」
思わず呼び捨てで駆け寄り抱き上げる。
「大丈夫よ。腕を少し火傷しただけだから」
とはいえ戦場で動けない者を放って置くわけにはいかない。ああ、何でポーションあの場で飲んじゃったんだろう。後悔してても仕方ないので、頭を切り替えファラーシャ嬢を背負う。
「ハッハ、そんなカッコで戦えるのか?」
とオレたちをロックオンでもしたかのように、シャコの両手人差し指はこちらを向いている。オレが右へ行こうが左に行こうが、指の指し示す先で狙ったように爆発が起こる。
「なるほどな」
「あん!?」
オレの不敵な笑みに苛ついた声を上げるシャコ。
「三角関数だろ?」
「!!」
図星だったらしくシャコは押し黙る。三角関数は距離を測るのに使われる計算法だ。サイン、コサイン、タンジェントのあれである。おそらくシャコは手と手の幅を一定にして、そこからA波とB波を出しているのだ。そしてA波とB波が交わるC地点で爆発が起こる。A波とB波が交わると爆発が起こるようにエフェクトで魔力を変質させたのか。中々賢いな。見た目パンク男なのに。
だがそれなら対処はしやすい。ファラーシャ嬢を下ろすと、オレは一直線にシャコに近付き、爆発を起こさせる前に心臓を刃で一突きした。
これで二人倒した。あと三人。と振り返ったところに、
「タコ野郎さん!」
「チッ、分かったよ!」
と煙幕がぶち撒けられ、部屋中から視界が失われる。
煙が晴れた時には、三人の姿は消えていた。
「逃げたの?」
マヤがそう尋ねながら駆け寄ってくる。
「そう、みたいだな」
自分たちから危険なことに首突っ込んどいて、危ないとなればすぐに逃げる、か。やはり侮れない。っていうかもう戦いたくないなあ。
どっと疲れたオレはその場にへたり込んだ。
「何座ってるの? まだ親玉が残ってる」
そうでした。サヴァ子爵がまだいました。シャークは傭兵頭だったんだっけ。あいつがボスでいいじゃんもう。
サヴァ子爵は外の海賊たち同様、執務室でお寝んねしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます