第78話 乱戦1
スズキが弓をつがえるとそこに矢が発生する。ひんやりとした蒸気を放つ氷の矢だ。
ドンッ!
超スピードで放たれた矢は、すでにオレの眼前にある。さりとてオレに動揺はない。
すぐにマヤの大盾がオレの前に被さり、その攻撃を防いでくれたからだ。
「助かった」
「当然」
互いに目は敵に向けたまま、言葉だけ交わす。
「お返しです!」
ファラーシャ嬢がホロウファイアボールを放つ。
見えも聞こえもしないファイアボール。敵に近付いているのが認識できるのはオレだけだと、思っていたら、
「皆さん急いで階下へ!」
おそらく危機察知能力が高いのだろうシャークの一声で、五人は渡り廊下から階下へ飛び降りる。同時に大爆発を起こす渡り廊下。
「くっ! しくじりました!」
悔しそうなファラーシャ嬢を、シャコが愉快そうに見ている。
「おいおい、オレと同じタイプの使い手かよ」
と両手を鉄砲のような形にしてファラーシャ嬢に突き出すシャコ。
!? 何か嫌な感じがする。
「ファラーシャ避けて!」
オレが声を発するより早くマヤが声を上げ、ファラーシャ嬢がその場を飛び退くと、
ボンッ!
さっきまでファラーシャ嬢がいた場所がいきなり爆発を起こした。
いきなり爆発が起こったのはホロウファイアボールと一緒だが、原理が違う!? ホロウファイアボールの場合は見えてはいないが存在はしている。だがシャコの攻撃はホントにいきなりその場が爆発したのだ。
原理を究明したいところだが、そんな時間はくれなそうだ。
「ブルース避けろ!」
ラッパを吹こうとしていたブルースにタコ野郎の鞭が迫る。それを間一髪のところで避けるブルース。ただの鞭ならブルースでも避けるが、タコ野郎は擬態を使って風景に紛れて見えなくなる。当然鞭もだ。見えない鞭を避けるとなると、ブルースでも神経すり減らすな。
ガキィンッ!
などと考えている余裕は無かった。背後からオレの首筋を手刀一閃、それを紙一重でマーチの人形が操る短剣が受け止める。手刀の主はアリアだ。
すぐにその場から距離を取りマーチの側へ行くオレ。
「気をつけて。アリア姐さんは毒手拳の使い手。あの手がかすっただけで動けなくなるわ」
言ってマーチは自身も短剣を構え、アリアに斬りかかっていく。しかし人形を加えて二対一だというのに、アリアはそれを何事でもないように捌いてみせる。
マヤは弓使いのスズキと、ファラーシャ嬢は爆破使いのシャコと、ブルースは擬態使いのタコ野郎と、マーチは毒手拳使いのアリアと、それぞれが一人の相手と戦い始めた。残るは、
「よろしくお願いいたします。リンタロウ様」
この乱戦の中、まるで一人茶会にでもいるかのような品を感じさせる振る舞いをするシャーク。だが笑顔のシャークもその目はすでに笑っていなかった。
ガシィンッ!
「ぐっ!」
シャークの武器は、まるでノコギリのような刃が付いた鉤爪だった。
それを猛スピードで突進してきて乱雑に振り下ろす。オレはそれを小鬼の小手を盾代わりに受け止める。
「さっきまでの良い子ちゃんはどうしたんだ? 攻撃はずいぶん乱暴じゃないか」
「いえいえ、あなた様ごとき、これで十分だということです、よ!」
ビリビリビリッ…………!
なんだ!? いきなり体中に電流が走りやがった。
体が痺れて動けず、その場に膝を付いたところに、シャークの蹴りが飛んでくる。動かない体で避けられるはずもなく蹴っ飛ばされるオレ。吹っ飛んだオレの体は壁に叩き付けられ、一瞬息が詰まる。
くっ、やられた。あの鉤爪、見た目の凶悪さ以上に厄介だった。電撃を仕込んであるとは。それより己のバカさ加減だ。初見の攻撃を受けるとかバカかよ!?
だが自分に悪態を吐いてる場合じゃない。シャークはニコニコ笑いながらこちらにやってくる。体が動かなきゃ、攻撃できないとでも思ってんのか?
オレは無理矢理大理石の床を斥力で引き離し、シャークに撃ち出すが、これは簡単に奴に避けられてしまった。
だが時間は稼げた。オレはまだピリピリする体で、ゆっくりだが立ち上がる。
「中々やりますね」
両手に鉤爪を構えるシャーク。
「そりゃどうも」
オレの方は小鬼の小手から飛び出た刃と、手には銅貨が握られいた。
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