第13話 初戦闘

 ドシュッ!


 それはまさに水滴が弾けるような死に様だった。

 スライムはオレが斥力で撃ち出した石ころ一つで弾けて死んだ。


「良いのかこれで?」


 あまりに簡単に事が運んだので冗談なんじゃないかと疑って掛かってしまう。

 霧散したスライムだったモノとアキラを交互に見る。


「まぁ、こんなものだろう」


 こんなものらしい。


「本来ならもっと苦戦するんだけどな。リン、一人で強くなり過ぎ」


 それは誉められてるのか?

 二人でスライムがいた場所まで歩いて行くと、死骸のようなモノは存在せず、あったのは拳大の石ころと、砕けた青い宝石だった。


「ああ、やっぱりか」


 何がやっぱりなのかと思っていると、砕けた宝石は青い煙となって消えてしまった。


「何がやっぱりだったんだ?」

「リンの攻撃が強すぎて魔核が壊れちゃったんだよ」

「何!? それじゃ金にならないってことか!?」

「そうなるな」


 何てこったい。脆過ぎだろスライム。


「こういうことってよくあるのか?」

「強さに差がありすぎるとな。もしくは魔核に直接攻撃をした場合だな。魔核は魔物の弱点だから、魔核を回収することを考えなければ、魔核を攻撃するのが魔物を倒す近道なんだ」


 なるほど。だがオレはお金が欲しいのだ。


「どうすれば良いと思う?」

「加減を覚えるか」


 だよなあ。


「でなければダンジョンに潜るか」

「ダンジョン?」

「ああ。ダンジョンの魔物はフィールドの魔物より強いからな。強くなりすぎたリンの攻撃でも魔核が破壊されないだろう」


 なるほど。


「じゃあダンジョンに行こう」

「即決かよ」


 オレはお金が欲しいのだ。何故かって? 服が欲しいのだ。

 一ヶ月以上も最初の格好をしているというのは、周りから余程奇特に映るらしく、オレが街を歩くと他のプレイヤーから「ほらアレ」とか陰口を言われクスクス笑われるのである。これが地味にキツイ。

 それが嫌で、オレはログインしたらソッコーで街を出てこの草原に来ていたと言ってもいいぐらいだ。

 そんなオレの気持ちを知ってか知らずか、アキラは品定めでもするようにオレを上から下まで見ると、


「まぁ、何とかなるか」


 と呟くと、オレを連れてダンジョン向かうだった。


 ダンジョンは森だった。

 この辺にあるダンジョンは四つ。

 最初の街「アインスタッド」を起点に東西南北に街道があり、その隙間を埋めるように北東、北西、南東、南西の四ヶ所にダンジョンがある。

 オレがいつもいる草原は南東で、その先には鬱蒼とした森が広がっており、その森がダンジョンなのだそうだ。


「ダンジョンって、朽ちた塔とか洞窟とか遺跡だと思ってた」

「そうゆうのはもっと先の街の周辺だ。アインスタッドは森に囲まれているから、どのダンジョンも森だぞ」


 そういうものなのか。


「南東のこの森は「赤の森」と呼ばれている」

「…………赤の森。何で?」

目の前の森は青々と緑の葉を繁らせており、紅葉などしていない。

「ここの魔物は赤いんだよ」


 なるほど。


「それは分かりやすくていいな」

「だから初心者向けなんだよ。行くぞ」


 オレとアキラは赤の森に足を踏み入れた。

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