第11話 8月31日

 8月15日お盆。この日は父と二人で母の墓参りに行くと決まっている。

 あれ以来父との会話はないが、何故か冷蔵庫に張ったメモのやり取りは続いていた。



 8月の後半はテレキネシスもとい引斥力魔法を覚えるのに全力を注いでいた。



 まずやったのは、適度に距離を置いた場所にある石を浮かせ、浮かせた状態のまま手元まで引き寄せたり、また遠くまで押し出したりする。

 それが完璧に出来るようになったら次は左右。

 それが出来るようになったら次は上下。

 その次は自分を中心に円運動をさせる。

 そこまで出来るようになったら、次は数を増やす。一度に二個を前後左右上下を反対に。

 ここからが難しかった。二つを引斥力魔法で動かすことは出来るのだが、どうしても同じ方向に動いてしまうのだ。

 なので近場から始めて、ちょっとずつちょっとずつゆっくり互いを離していく。そうしてやっと二つが離れてくれたのだ。

 三つはもっと難しかった。

 正三角形の形に石を離していくのだが、すぐにどれか一つがもう二つのどちらかに寄ってしまうのだ。

 四つはもっと………という具合に、当然だが数が増えるほどコントロールの難しさは指数関数的に増していった。

 それでも夏休みが終わる8月31日には計十二個の石を同時に操れるようになっていた。



 ヒュンッヒュンッヒュンッヒュンッ!


 十二個の石がオレの周りを自在に廻っていることに、アキラも驚きが隠せない様子だった。


「いや、マジすげぇな。一ヶ月ちょっとで引斥力魔法をそこまでモノにしたのもすげぇけど、何より夏休み全部潰してひたすら引斥力魔法を覚えるのに費やしていたことがすげぇよ」


 皮肉られてしまった。

 まぁいい、友達と呼べるようなやつはアキラぐらいなものだからな。その友情も夏休み中の放置プレイでかなり揺らいだが。


「というか、このゲームの遊び方をオレはこれしか知らないのだが」

「そうだっけ?」

「ビットとかいうお金の稼ぎ方も知らないから、最初声をかけてくれていた呼び込みの人達が、今じゃこいつは金持ってないってスルーするようになったぐらいだよ」

「それはそれは、中々面白い状況だな。あの呼び込みってスルーすることあるんだ?」

「オレ的には全然面白くないんだけど」


 ジロリとオレはアキラを怨めしそうに睨む。


「アッハッハッ、悪かったって。じゃあこれからはマグ拳ファイター実践編、お金の稼ぎ方だ」

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