第47話 初ライブの不安
俺はライブ当日、由愛と里奈の3人で行く予定だったので、予定の時間が来るまで自室で過ごしていた。
ライブは、暗くなる19時から2時間の予定だ。
それなのに待ち合わせ時間が13時という事は、ライブの時間まで遊ぶ予定なのだろう。
「アテナ!プロジェクトの準備はできてる?」
≪ばっちりです!≫
頼もしい。
今回、ライブの成功は、このプロジェクトにすべてかかっている。
失敗するわけにはいかない。
ぶっつけ本番っていうのもあるが、こればかりはしょうがない。
もう少し期間があればよかったのだが、遊園地の閉園を知ったのがあまりにも遅すぎたのが致命傷だ。
タイムマシンなんてないのだから、過去をどんなに悔やんでもそれは変えられないのだ。
過去の事を考える時間があるのなら、これからの事を考えろだな。
「よし!」
俺は気合を入れアテナに語りかける。
「今日は頑張ろう!」
≪はい!≫
それと同時に、電話がかかってきた。
≪マスター、西城咲良さんよりお電話です!≫
「よし、つないで!」
すると咲良ちゃんの声が聞こえてきた。
「もしもし、和樹先輩!おはようございます」
「あぁ、咲良ちゃんおはよう!」
これはアテナと会話するのと同じで、衛星が音波を送受信しているので、俺は何もない空間から咲良ちゃんの声が聞こえるし、俺の声は咲良ちゃんに届くのだ。
これはつい最近導入したシステムだ。
外では人目があるのであんまり使わないが、自部屋だと誰も見てないので使っている。
「調子はどう?」
「体調はばっちりですけど、いきなりの大舞台で緊張しています」
それもそうだろう。
咲良ちゃんは今までアイドル活動はしてきたものの、舞台に立つのは初めてみたいだ。
今までやって来たことといえば、ラジオや写真撮影などで、歌うという事はやっていなかったらしい。
咲良ちゃんにとって、今日のライブはアイドルデビューするといってもいいほどのイベントだ。
今回の閉園ライブは、約5000人ほどが集まるようだ。
遊園地のライブでなんでそんなに人が集まるのか、それは今人気の歌手なんかも参加するからのようだ。
思ってた以上にすごいライブだったようで、その最後を飾るのが咲良ちゃんというわけだ。
緊張しない方がおかしいというものだ。
「私なんて出てもいいのかなって思っちゃいます」
「大丈夫だよ。サポートもしっかりするしね」
サポート体制はばっちりだ。
初舞台、最高の気分を味わって欲しいしね。
「だって、ライブの練習2日間しかやってないんですよ!」
「練習期間なんて関係ないよ。このライブはどれだけこの遊園地が大好きかを観客に見せつけるのが大事なんだよ!」
「でも・・・」
「咲良ちゃん以外に参加する人は、あの遊園地の事なんて知らない人ばっかなんだよ。熟練された歌は、その人たちに任せたらいいんだよ」
咲良ちゃんは黙って聞いている。
「俺たちの遊園地愛を皆に見せようよ!」
ラストを飾るにはそれが1番だ。
だって、遊園地のライブなんだもんね。
すると咲良ちゃんから深呼吸するのが聞こえた。
「分かりました!私の遊園地の思い、誰にも負けません!」
だってあそこは、和樹先輩と出会った場所なのだから。
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