第40話 間に合った?

西城咲良はアイドルだ。

半年前にデューしたばかりだが、最初に比べるとファンも増えてきた。

そんな中、初めてのビッグイベントの話が舞い込んできた。

なんと、近所の思い出深い遊園地が潰れるので、その廃園ライブに参加してくれないかとのことだった。

しかも有名な歌手とデュエットでの参加とのことだった。


遊園地が潰れることはショックだった。

しかし遊園地でライブをやることは夢だったので、楽しみにして練習を重ねていた。

そんな時に不運は起きた。

今まであまり仕事がなかった事務所としては、もう経営としてやっていけないという話を社長に聞かされたのだ。

そんな社長にせめて廃園ライブだけでも参加させてくれとお願いしていたら、今後いかがわしいビデオに出てくれるのなら稼ぎも出るので、事務所としては存続させることができるという話をされた。

その場合に限って廃園ライブに参加させてあげてもいいというのだ。


そんな彼女は、学校で唯一若くて人気の女教師に相談することにした。

するとその先生は悩んだ挙句、今回のライブはあきらめ別の事務所に移ることを勧めてくれた。

しかし、あの遊園地は彼女にとって思い入れがあるので、どうしてもライブがしたかった。

なので先生には、どうしても諦めきれない!と叫んでその場を去ってしまった。


しかし一晩ゆっくり考えると、諦めるしかないと思い始めた。

彼女にとってとても残念なことだが、無理なものは無理なのだ。

そのことを翌日に、ライブを楽しみにしていると言ってくれた先輩に言っておこうと思った。

しかし、なかなか言い出せずにいると、頑張ってと応援された。

そして、あの言葉を言われた。



「どんなにつらいことがあっても、アイドルを見たら元気がもらえる」



この言葉で私はもう一度、社長を説得する気持ちへとなった。

せっかく彼と再会できたのだ。

絶対彼との思い出の場所である遊園地のライブに参加したかったのだ。




***************************************************

そんな私は今事務所の扉の前にいる。

ラブハートの事務所はとても小さく、古い小さなビルの一室にあった。

社長曰く、儲けが出るまでは安く借りれるこの事務所で活動するとのことだった。

そんな古い事務所のドアを彼女は開いた。


ガチャっという音とともにドアを動かすと、錆びた音が部屋に響き渡る。

目の前にある机には灰皿が置かれており、その両サイドにソファーがある。

そしてその奥に少し豪華な机といすがあり、そこに社長が座っていた。

社長は60歳ぐらいだろう少し太っていて、白髪で前髪の後退は進んでおり、前から見る分ではもう髪は横の部分しか見えなかった。


「やあ、西城君。どうだ?決意は決まったか?」


そう言うと、社長の目線は胸やスカートから覗く脚に行った。

彼女はどうも、この社長が苦手であった。

時折見せてくるこのいやらしい視線が何とも不快だった。


「いえ!私、この事務所辞めさせてもらいます!」


「何!?」


社長はそんなことを言われるとは思っていなかったのか、少し顔が険しくなる。


「なぜだ。ライブやりたくないのか?」


「やりたいです!」


「ならなぜ断る?断るならライブなんて出られないぞ!」


「社長!最後にどうしても私、廃園ライブやりたいです!」


すると社長は睨んできた。


「ふざけるな!」


机を叩く。


「この事務所を辞めるし、ライブにも出たいというのか!?」


社長は、すごい剣幕で叫ぶ。


「その通りです!社長!どうにかならないですか!!」


すると社長は、もう一度机を叩き叫ぶ。


「ならん!社会はそんな甘くはない!!」


「しかし、今回のライブで私のファンが増えたら、事務所の存続も可能じゃないですか?」


「増えなかったらどうする?参加もタダじゃないんだぞ!」


それに私は反論する。


「ファンは絶対増やすように頑張ります!そして今後の活動の経験も積めるので絶対、参加して損はないんです!」


すると社長は近づいてきた。


「お前みたいな子供は、まだ何にもわかっちゃいない!現実を教えてやる!」


社長はそう言うと、彼女を近くのソファーに押し倒した。


「ちょ!いや!!何やってるんですか社長!」


すると社長は制服の上着をはぎ取ってきた。


「えっ?ちょっと本気ですか?」


「何も知らないガキが、大人の言うことを逆らったらどうなるか教えてやる!」


すると、制服のワイシャツの上のボタンを外しワイシャツを下から上にずり上げ、最終的にはずり上げたYシャツが手錠のような形となった。

そして、青の下着が姿を現す。


「ぐっふっふ。そそる格好じゃないか西城くん!」


そういうと、胸の間に顔をうずめてきた。


「いや~~~」


そして、社長はスカートをまくり上げた。


「社長!こんなことやってタダで済むと思ってるんですか?」


すると社長は、下着姿になった彼女を見つめてありえないことを言う。


「もともと君が入って来た時点で、エロビデオを撮ることは決定していたんだ!」


「えっ?」


彼女は脱力する。


「そもそもライブなんて金が掛かるもの参加させる予定なんてないしな!」


そして。


「これからはこういうことをたくさんしていくんだ!」


そういうと彼女の下着をはぎ取ろうと手が伸びる。

彼女は今まで一体何を頑張っていたのかわからなくなり、涙を流しただ茫然とその様子を見ていることしかできなかった。

社長の荒い息遣いは事務所の中に響きわたる。

社長の手がいよいよ下着に触れようとした瞬間、女の子の声が響き渡る。


≪そこまでですよ!≫


その声を聴いた、社長の手は止まった。

西城は声をした方を見るが誰もいない。


「どこにいる!」


≪あなた、純粋なアイドルを脅してお金を稼いでいますね!≫


社長席付近から声が聞こえる。

社長を見るがはやり誰もいない。


≪これは犯罪なので警察の方に通報させていただきました≫


声は社長席の上のスピーカーから聞こえる。


「はっ!わしが何をしたって!?これは教育だよ!教育!」


「なっ!」


こいつはいったい何を言ってるのだろうか。

これが教育?

そんなわけないだろう。


「西城君がこれからの活動のために教えてほしいとせがんできたのだから、社員のために身を呈して教えるのは社長として当然じゃないのかね?」


すると、社長は小声で話を合わせるようならライブに出させてやると言ってきた。

こいつはいまさら何を言ってるのだろうか。


「助けて!」


西城はその話に乗らず、助けを求めた。


「こいつ!!まぁいい。俺のすごさをたっぷり味合わせてやる!」


そう言い、再び西城の体に手を伸ばそうとしたその時、部屋の入口から男の声が聞こえた。


「やめときなよ!ラブハートの社長さん!!」


声をする方に目線を向けると、そこには、和樹先輩がいた。


「誰だお前は!いつからそこにいた!!」


社長にとって彼は邪魔でしかないのだろう、苛立ちが目に見えている。


「あなたは、西城さんを採用する前のアイドルも、今回と同じ手口を使っていかがわしいビデオを撮影して、それを販売して儲けていますね。」


「うるせえ!お前何処でそれを知りやがった!!」


そういうと、机の上の灰皿を先輩の顔にめがけて投げてきた。

しかしそれは当たらなかったようだ。

いや、正確には灰皿は先輩の顔をすり抜けて、後ろのドアに当たり床に落ちた。

灰皿が床を転がる音が部屋に響く。

灰皿を投げた本人は、唖然としていた。


「おまえ・・・一体!?」


確かに当たったはずだ。

しかし、ドアの前に立つ少年はピンピンしており、意味が分からない。

その時実は、社長が全く予想だにしない現象がそこで起きていたのだ。


「ひどいですね社長さん!当たってたら大けがですよ!」


≪マスターに危害を加えようとするとは、万死に値しますよ!≫


まただ、スピーカーから声が聞こえる。


「それにあなたはもうすでに詰んでいますよ!」


「確かにこれはもう捕まるだろう。だからその前に楽しむのが人生じゃ!お前はそこで指を咥えて見てるんだな!!」


社長はもう吹っ切れていた。

今の問題を解決でいないのなら、最初の目標を遂行しようとしたのだ。

社長は、再び彼女の下着に手を伸ばし下着を掴む。

そして下着をはぎ取ろうとした瞬間、事務所のドアが開く。

そこには、先輩と、警察が立っていた。

さっきまで事務所内にいたはずの先輩は、なぜか外からやって来たのだ。


「さっきまでお前そこにおったやろ!なんで外から来るんじゃ!」


もう何が起きているのか分からないといった様子だ。

それに先輩は手を叩き開き答える。


「イリュージョン!!」

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