第30話 結構人気があるじゃないか

朝食を終えた俺は、学校に向かって歩いていた。

最近毎日見るようになった遊園地のポスター。

日に日に、閉園の日が近づいて来ている。

期間としては2週間をもうすでに切っている。

俺は、仕事のメールをしながらそんなことを考えていた。

一応、自分としても何か出来ることはないか考えているところだ。

出来れば存続させたいしね。


そんなことを考えて歩いていたら、目の前に見知った人物が歩いていることに気付く。

そいつはスマホを操作しながら、歩いていた。

何をそんなに真剣に見ているのか気になり声をかけてみることにした。


「よお!須藤!」


すると須藤はびっくりした素振りを見せた。


「おぉ!なんだ!びっくりするじゃねーか!」


何をそんな真剣にスマホを見ていたのだろうか。


「またゲームでもやってるのか?」


「いやいや、俺の推しのアイドルがな、ツブッターを更新してないかチェックしてたんだ」


あー、そういえば新しく推しのアイドル見つけたとか言ってたな。

俺も知ってるアイドルなのだろうか。

気になったので聞いてみることにする。


「それってどんなアイドルだ?」


「お!お前もアイドルに興味出たのか?」


「まぁ、最近アイドルって言葉耳にするから少しな」


すると須藤は、しょうがないなという顔をする。


「俺の推しのアイドル特別に教えてやるぜ!」


俺は静かに聞いている。


「なんと、西城咲良って名前のアイドルでな、最近活動を始めたみたいなんだ!」


ん?


俺は最近聞いたことある名前に反応する。


「お!もしかして山田、知ってるのか?」


「朝、妹から聞いたな。うちの高校の1年生のアイドルだろ?」


須藤は目を輝かせながら答えた。


「そうそう!今まで俺が推していたアイドルは、手が届かない存在だったが、咲良たんは同じ高校に通ってるから、そりゃもうワンチャンあるだろ!」


俺はポカーンとして聞いていた。


ワンチャン?

何言ってるんだこいつは、自分にどんだけ自信あるんだよ。

もしかして友達になったり、付き合ったりすることができると思っているのだろうか。

俺は須藤に哀れな目を向ける。


「須藤、頼むから事件だけは起こさないでくれよ!」


俺はそう言い、須藤の肩を手でたたく。


「俺をなんだと思ってるんだよ!そんなことするわけないだろ!!」


須藤は目を見開いて答えた。


「ただ、同じ高校に通ってるから、会話する仲になって友達になれちゃうかもしれないだろ!何なら、俺の彼女になるって言う未来も0じゃないしな!」


俺が思っていたことそのままの言葉を述べた。

脳が単純すぎるなこいつ。

まぁ、夢は持ってもいいと思うけどな。

「確かに0ではないかもしれないけど、それが叶わなかったからって変なことするなよ?」


すると須藤はムッとなって


「そんなの当たり前だろ。推しのアイドルに見向きされなかったからって、俺は危害くわえねーよ」


それだといいのだが、少し心配だ。

そんな中、学校に近付くと何やら歓声が聞こえる。

そちらの方を見ると、腰まで伸びるウェーブのかかったピンクの髪に、左側にハートのヘアピンを付けたかわいらしい女子が登校していた。

その子は、校門を挟んで反対側にいた。

何の騒ぎか俺は分らず、状況を見守っていた。

すると横で、その子を見て須藤が鼻の下を伸ばし興奮していたので声をかけてみる。


「どうした須藤?発情期か?」


こいつ分かりやすすぎるな。

かわいい子を見かけて興奮しているのだろう。


「山田、あの子だ!」


俺は首をかしげる。


「何が?」


「さっき言ってた咲良たんだよ!」


あぁ、あの子がそうなのか。

実際俺は名前しか知らなかったので、見ても分からなかった。

でもとりあえず・・・。


「おい須藤!とりあえず教室向かわないと!」


何言っても須藤は反応がなかった。

しょうがない、こいつは捨ておこう!

俺は1人で教室に向かうことにした。

俺はそのアイドルとすれ違う形で、校門から中に入ろうとした。

すると、その子は歩きながら周りの子に色々話しかけられており、その内容が耳に入ってきた。


「ライブ楽しみにしてるよ!」


「来週だよね?」


「ラストに有名なアイドルとデュエットやるんでしょ?憧れる―!」


どうやら、来週ライブをやるみたいだ。

こうしてみると、まだ半年しか活動していないのに、とても人気そうだ。

確かに周りと違うかわいさがあり、頑張ればトップアイドルになれるかもしれない。


するとそのアイドルは俺の視線に気付いたのか俺の方に目を向け、目を見開いてこちらを見ている。

やべえ、話を横から聞いてたのばれたか。


(こりゃキモがられてるかもしれない、早く離れよう)


俺はすぐに距離を取って離れることにした。

危うく須藤みたいに変質者になる所だった。

後ろから、小さく「あの!」って聞こえた気がしたが気のせいだろう。

次からは自重しなければ。

俺は反省しながら教室に向かうのであった。

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