第19話 会議に参加しちゃいます
次の日、ツブッターの会議室に役職者たちの面々が円卓の席に座っていた。
社長はまだ来ていなかった。
皆、様々な言葉を交わしていた。
「あの沢良木課長が、あんな事件を起こすなんて考えられませんでしたね」
「そうですね。彼はまじめだったので私も受け入れることができませんでしたよ」
「彼ほどの優秀な人材、中々いませんからな」
「しかし、対策どうしますかね?」
「いくらなんでも今日中に、対策立てるのは無理でしょう」
「まぁ、早めにどういう対策を立て、実行していくかメディアに公表した方がいいのは分りますけどね」
さすがに皆、今日中に対策を立てて実行するのは不可能だと思っているようだ。
何かこの問題を解決する打開策がないものだろうか。
皆、真面目に考え、お互い意見を言い合っている。
そんな中、部屋の扉が開く。
「すまないね遅くなって」
「いえ、大丈夫です!」
「今後どうするべきか、私たちも話し合っていたのですが、なかなか難しいですね」
「皆さんのおっしゃってることはよく分かります」
「ならもう少し対策期間を延ばしませんか?」
「これでは今日中に対策を立てるどころか、意見がまとまりませんよ」
「事件にもなっているので、早い問題解決が求められますけどね」
社長は皆を見渡すと、かなり問題解決に行き詰っているようだ。
「そこでなんですが、皆さんに紹介したい人がいます」
すると皆静かになり社長の方を見る。
そしてみんな気付く。
社長の横の席が1つ空いていることに。
「社長の横の席、空いていますね」
「情報課の課長を選出されたのですか?」
「今回の件で部署を1つ増やすんですか?」
皆いろいろと意見を言っている。
しかしそれは皆、予想すらしていないことだった。
「今まで皆さんには、秘密にしていた人がいます」
皆が少しざわめく。
「一時期ウワサにもなっていましたが、この会社には社長の私の上に、CEOがいることをここに明言します」
「えっ?」
「社長より上の立場の人がこの会社に居るんですか?」
「そんなのこの会社に入って聞いたことありませんよ」
「会社のホームページにもない情報ですよ」
皆様々な言葉が出てくる。
「実は、CEOの存在は隠さなければいけない都合があったのです」
「隠す必要が?」
「それはCEO本人の意志でもあり、私もそれがよいだろうとの判断でした」
「いったいどんな人なんですか?CEOは?」
「CEOはこの会社の設立者で、ツブッター開発者の1人です。」
皆ざわめく。
「それでは紹介いたしましょう」
ドアが開く。
そこから、メイドが現れた。
ショートヘアーの黒髪で、クールそうな人だ。
「失礼いたします」
軽くお辞儀し、部屋に入りドアの横に立った。
いきなりメイドが入ってきたことに皆びっくりしていた。
「えっ、メイド?なんでメイドがここに?」
「まさか彼女がCEOなんですか?」
「いや、さすがにそれはないでしょう。CEOのお付きのメイドでしょう」
メイドがCEOであるというのもある意味斬新ではあるが、ドアの横に立ちこれから来る人を待っているのであろう、頭を軽く下げた状態となっていた。
これを見たら、誰もが彼女がCEOではないことが分かる。
これからこの部屋に入ってくる人がCEOなのだと。
皆息を飲み見守る中、1人の学生と思われる若い男が入ってきた。
その男を見た瞬間、皆ざわめきだす。
部屋に入ったのを確認するとメイドはドアを閉め、その男の後ろについて歩く。
「ご紹介しましょう。彼こそわが社のCEOである、山田和樹様です」
社長はそう言うと、拍手をする。
それにつられ皆拍手するが、言葉が飛び交う。
「え?彼が!?」
「若すぎませんか?」
「うちの息子と同じぐらいですよ」
「皆さん。彼は今高校生です。学生である身でCEOという立場なので、わが社のトップは社長である私と偽り、彼を世間から隠してきました」
確かに、高校生がCEOなど聞いたことがない。
高校生でありながらCEOである身分を隠していたのなら納得だ。
「彼が学校を卒業し、会社で本格的に働き始める時期に、すべての人々に彼がCEOであることを明かそうとしていました」
そして社長は息を吸い。
「しかし、わが社が世界規模まで大きくなり、それと同時に起きる問題も大きなものになってきました」
みんな真剣に話を聞いている。
「よって。CEOの力が必要な問題が多々出てきたため、少し早いですがここにいる皆さまだけには彼を紹介しました」
するとそのCEOと紹介された男の口が開く。
「今紹介していただきましたCEOの山田和樹です。社長とはよく顔を合わせていたのですが、皆さんとは初めての顔合わせとなります。皆さんと、これからもツブッターを発展させていき、全世界の人達が安心して使えるようにしていきたいと思いますのでよろしくお願いします」
そして頭を下げると、皆拍手してくれた。
何とか挨拶を終えた俺は、安堵の息を吐くのであった。
俺が椅子に座ろうと思ったらメイドが椅子を引いてくれた。
俺はその椅子に座ると、その横にメイドは立ち静止する。
その光景を皆、異様な光景を見るように見続けている。
皆、不安そうな目で見てくる。
それもそうだろう、高校生である身で、この問題を解決できるのかと。
大人である彼らですら束になっても、いまだ解決策が見えていないというのに。
そんな不安の中、俺が取り仕切る感じで会議が始まった。
「さて、それでは今回の会議の議題に入っていきたいと思います」
皆静かに聞いている。
「今回問題を犯した沢良木課長ですが、彼はツブッターの個人情報を扱う場で、個人情報を故意に抜き取り悪用するという、重大な事件を犯してしまいました」
「それなのですが、私は未だに信じられませんよ。彼はとても優秀でそんなことする人とは到底思えません」
俺はその意見を聞き次のように答える。
「確かに、彼は優秀であったかもしれません。そして皆さんも優秀かもしれません。しかし人は皆、欲を持っています。」
確かにという声が聞こえる。
「たとえ、どんなに優秀であってもその欲に勝つことはできません。人が管理する限りこのような事件は未来永劫起き続けます」
皆がざわつく。
「確かにそうですね」
「ならどうしたらいいんですか?」
俺はそれに答える。
「人間が情報管理をするから問題が起こるのです。だからこそ我が社では、人間が情報を管理しないシステムを構築します」
「え?」
「それってどういう意味ですか?」
「そんなこと出来るんですか?」
俺は答える。
「できますよ!」
皆、息を飲む。
「そう!AIならね!」
皆ざわつく。
「AIってあのAIですか?」
「今のツブッターでもAIを活用している所もありますが情報管理ともなれば、実用までに時間がかかるのでは?」
「そもそも実用にも、開発から着手しなければなりません」
「今日中に実用なんて不可能ですよ」
いろいろと意見が出てきた。
そして俺はその疑問に答えた。
「実は私は、世界的にAIで活躍している会社を買収し、ツブッターの傘下に入れています」
それにみんな驚く。
「そんなことができるんですか?」
「それであっても、すぐにそのシステムを実用することは出来ないと思いますが」
「今のAIの技術でも到底できませんよ」
皆の意見もよくわかる。
一部にAIを取り入れるならまだしも、情報管理全てに入れるともなれば、今の段階では不可能と思われてもいいだろう。
しかし皆の考えは次の発言で吹き飛ぶことになる。
「最近、ツブッターを使っての事件をニュースでよく見かけます。私はそれを見て、情報管理は全てAIに任すべきだと思い、その企業と協力し情報管理AIを作成しました」
「えっ?もうできているってことですか?」
「はい。その通りです。これを使用すれば、個人情報の管理だけでなく、悪意ある投稿やメールなど、ツブッター内の情報管理の全てAIが行えるようになります。」
「そんなすごいことが」
「AIの可能性はすごいですな」
「このソフトを今から、ツブッターに適応しようと思います。普通に使う分では、今までと同じように扱えますので特に混乱などの問題は起きないでしょう。そしてこの会議が終わったら、右舷社長の方から記者会見でツブッターの情報管理を全てAIに任せることを公表してもらいます」
「え?今すぐですか?」
「そんなすぐにできるものなのか?AIっていうのは」
確かに、ユーザーに事前報告せずに新システムを導入するのは問題かもしれない。
しかし、情報の問題は今この瞬間にも起きているかもしれない。
その問題を素早く解決するためにも、1秒でも早くソフトを適応し、ユーザーに安全、安心にツブッターを使ってもらうことがとても大事だと思ったからだ。
皆、ざわついてる中、俺は語りかける。
「それじゃあアテナ!始めてくれ!」
≪了解しました!≫
会議室のモニターにアテナが出てきた。
会場の皆、それを見てざわめきを増す。
そして・・・。
≪マスター。ツブッターへの適応終了いました!≫
「ありがとう。おっと、皆さんに紹介します。こいつの名前はアテナ。私専用のサポートAIとなっています」
みんな一様にそんなのあり得ないなど口にする。
「AIは日々ものすごいスピードで進歩しています。そのAIを今後もどんどん取り入れていきましょう」
今ある問題が解決した。
目の前にしゃべるAIがある。
短時間でそれらを体験した皆は、テンションがギガマックス状態であった。
会議室にいた皆から、拍手が巻き起こり、楽しそうに今後の事を話している。
新たなツブッターの可能性を感じる。
「右舷さん、この会社はやっぱりいいね」
俺の挨拶から今まで口を開かず場を見守っていた右舷社長は口を開く
「はい。私もそう思います」
そう言い俺たち2人は楽しそうに話し合う社員たちを見て微笑むのであった。
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