第三十二話 豊かさと幸せとショッピングモール

 この日、青柱正磨せいちゅうせいま太満ふとみつが運転する車に乗せられ、ショッピングモールへと向かっているところだった。青柱のとなりには坊主頭ぼうずあたまの男が座っていて、おびえているのか、せわしなく貧乏びんぼうゆすりをしてはいちいち青柱のしゃくにさわってくるのだった。

 太満から聞くところによれば、行き先はショッピングモールとのことであったが、本当は別の場所へ向かっているのではないかと、この男はそう心配しているようなのである。

「あの……、本当にこれからどこ行くんですか?」

「あのさ、だからショッピングモールだってさっきもいったよね? 次また同じこといったらマジでぶっ殺すからな?」

 太満はニコニコエクボ顔でいったが、目は笑っていなかった。

「だったらいいんですけど……、ホントなのかなあ……」

 移動中、こんなやりとりが何度もあった。

 坊主頭の男は、市民プールにてドキドキ☆ゲリラプールinサマーというゲリライベントにいた、超撥水ちょうはっすい男その人であった。あの時の絶好調ないとはちがい、今ではすっかりと臆病風おくびょうかぜかれてしまった様子で、行き先を気にするあまり、窓の外をのぞいては、どこを走っているのかしきりにあちこちを見ているのだ。

 この男の心配をよそに車がショッピングモールへ到着とうちゃくすると、向かった先はお客様用の駐車場ちゅうしゃじょうではなく、搬入搬出口はんにゅうはんしゅつぐちがある業務用の駐車場の方だった。男はこれに気づくと身を起こしてあわてふためいた。

「あれあれ? 駐車場はこっちじゃないですよ? 間違まちがってますよ?」

「うるせぇな、間違まちがってねえよ」

 太満ふとみつ苛立いらだちをかくさずにそう答えると、駐車場に停めてあるコンテナを積んだトラックのとなりに車を停めたのだった。

「さあ、着いたぞ」

 するとコンテナの中からサングラスをかけた男たちが出てくるではないか。この男たちは映画に出てくるシークレットサービスのような外国人で、しかも、全員が黒いマント姿なのだからなおさら物騒ぶっそうで物々しい。これを見た坊主頭ぼうずあたまの男はさらに動揺どうようをかくせなくなっていた。

「ちょっとちょっと、なんですかあの人たち? これってどういうことですか?」

「だから最初にいっただろ? 今日は取引が一つあるんだって。アイツらはアカシックレコードって大学の人間で大口の支援者しえんしゃだ」

 青柱正磨せいちゅうせいまは何もいわず後部座席のドアを開けて車を降りた。

「さあ、何やってんだ。お前も降りろ」

「あんたは? あんたは降りないのか?」

「ああ? おれは書類の準備をするから先に降りてろよ」

「ホントですか? ホントなのかなあ……」

 坊主頭ぼうずあたまの男はぶつぶついいながら車を降りた。しかし、外に出たもののドアを閉めないでいる。

「ちっ」

 太満ふとみつは舌打ちをし、一旦いったん車を降りて開けっ放しのそのドアをバタンと閉めた。そして再び運転席にもどってそのままドアを閉めたかと思うと、なんと、そのまま車を急発進させたのだ!

「ちょっと、ちょっとお! 待ってください! どこ行くんですか!」

 太満の車はまたたく間に駐車場ちゅうしゃじょうから出て走り去ってしまった。

「かまわん! 行かせておけ!」

 黒マントの外国人が一喝いっかつした。

「どどど、どういうことなんですか?」

「ヤツははじめから貴様らをここへ運んで来るだけの役割だったのだ」

「は、運ぶ?」

「そうだ。貴様らはこれから海外へ出国する。パスポートも持っていない貴様らを海外へ運ぶにはこうするしかないだろうが」

「ま、待ってください……、海外? 海外ってなんの話ですか?」

「光合成人間っていうのは日本にしかいないだろう? ところが貴様たちを欲しがってるヤツってのは世界中にいくらでもいるんだ。よかったじゃないか。日本でくすぶっていた貴様らは、外国で活躍かつやくすることができる」

「ええ? 光合成人間を欲しがってるってこと? でもそれって……、ひょっとしておれをですか?」

「そうだ」

「お、お、お、俺を?」

「そうだ。だがパスポートなしで飛行機に乗ることはおろか出国すらできない。だからお前たちにはこれに入ってもらう」

「これって?」

「それだよ」

 そういって男は後ろのコンテナをアゴでしゃくって見せた。

「このコンテナに? え? え? これって人じゃなくて輸出品とか入れるやつですね?」

「そうだ。お前らには他に方法がないからな」

「え? え? え?」


 ここまで聞いて青柱正磨せいちゅうせいまは思った。

 これは人身売買じゃないのか? と。

 サンズマッスルは光合成人間の就労支援しゅうろうしえんなどと慈善活動じぜんかつどうのようなことを標榜ひょうぼうしてやがるが、実際にやっていることといえばこんな人権をみにじった人身売買じゃねえか!

 だって見てみろよ! こんなコンテナに入れだって? これは人を運ぶものじゃなくて物品を運ぶものだぜ? なんだっておれはこんなもので運ばれなきゃならねえんだよ! 俺はモノじゃねえぞ! これで海外まで運ばれるってマジなのか? アイツらマジで光合成人間を売ってんのかよ? くっそう! なんてこった! UOKwウアックウに入ってATP能力まで開花させた将来有望のこの俺が、なんであんな人間のクズみてえなヤツらに、はした金でたたき売られるようなポンコツとしてあつかわれなきゃならねえんだよ! となりにいる坊主頭ぼうずあたまの男を見てみろよ? すっかりおびえきっちまったあわれな最下層のゴミくずみてえなヤツじゃねえか! 俺はこんなヤツと同じなのか? 俺はどこまで落ちちまったんだ? 俺のプライドとか、尊厳とか、人権とか、そんなもんもありゃしねえ!


 マジなのか?

 ホントにここまで落ちちまったのか?

 これが、これが俺の現実なのか?


 青柱せいちゅうは自分をあわれんで目頭が熱くなるのを感じた。

「ちょっと待てよテメェら……」

 それまでだまっていた青柱が口を開いた。

「これってよう、人身売買じゃねえのか? なあ? テメェらホントにとんでもねえことしてやがんなあ! こんな話、ぜんぜん聞いてねえぞ!」

「お前が聞いてようが聞いていまいが関係のない話だ。これは契約けいやく済みの取引なんだからな。我々はそれを履行りこうしているだけなのだ」

「ふざけんじゃねえ! こんな人権を無視した違法いほうな取引が許されるわけねえだろ! このクソ外道どもが! ぶっ殺すぞこの野郎やろう!」

「なんだ君は? ずいぶんと威勢いせいがいいな。だがこれを見ろ。ヘンな気は起こさんことだ!」

 そういって男はマントを少し開いて見せると、その中には機関銃きかんじゅうが見えるではないか!

「仮にお前を射殺したところで、貴様らの警察には我々を逮捕たいほできる権限がない。日本人程度がナメたマネをするんじゃないぞ!」

「警察だあ? 警察なんかこっちだって期待してねえ! テメェこそナメてんじゃねえぞ!」

 青柱はいかりにまかせて重力のATP能力を一気に発動させた! 服を着ていたとはいえ、光合成人間ではない普通ふつうの人間をしつぶすには十分だった!

「ぐほっ! な、なんだこれは!」

「テメェらマジで許さねえ! くされ外道が! マジでぶっ殺してやる!」

 青柱せいちゅうはそうさけびながら、着ていた服を破り捨てた!

「マズイぞ……、ヤツを殺せ……」

 おくにいた一名が、なんとかはいつくばりながらも機関銃きかんじゅうを取り出そうとした、その時である!


 雲の一つもない、まぶしいほどの晴天だった! むせ返るほどの湿度しつどの中、駐車場ちゅうしゃじょうのアスファルトは直射日光に熱せられ、立っているだけでもで上がりそうな炎天下えんてんかだ! これほどの日差しで行われる光合成はどれほどのものになるのか!

 完全にはだかになった青柱は吶喊とっかんを上げた!

 吶喊とは、戦争で突撃とつげきする際、兵士が一斉いっせいに上げるさけび声のことで、不本意にも突撃して死にうる兵士それぞれが、祖国に置いてきた家族や恋人こいびとなどを心にたずさえ、なみだとともにき出される悲鳴のことである!

 青柱は、いかり、憤怒ふんぬ激怒げきど激昂げっこう、そういった激情にまかせて吶喊を上げた! そして重力を最大限に発動させたのだ!

 ドスゥン!

 コンテナを積んだトラックがミシミシと悲鳴のような音を上げると、運転席がつぶれてぺしゃんこになってしまった!

 坊主頭ぼうずあたまの男も鉄板焼のように熱くなったアスファルトにし付けられ命の危機を感じていた! しかし、光合成人間であるこの男は炎天下えんてんかの光合成でもって、全身に血管をき上がらせながら火事場の馬鹿力ばかぢからでなんとか持ちこたえていた! これが光合成のできぬ普通ふつうの人間であればどうであろうか! トラックの運転席がつぶれるほどの重力だ! 全身の骨が押しつぶされ、へし折られてもおかしくはないだろう! マントの男たちはだれ一人動く者はなく、うめき声もない! 生きているのか、死んでいるのかもわからなかった!

 それを青柱せいちゅうはとどめをすように一人一人つぶしていったのだ! 皆殺みなごろしだった!

「くぁっはははあああ!」

 青柱は全裸ぜんらで晴れわたった大空をあおぎ、高らかに笑った!

「オメェらもバカだったなあ! おれを丁重にあつかってさえいれば、車にひかれたヒキガエルみてえに死ぬこともなかったんだからなあ! 俺は何も悪くねえ! なあ! オメェらもそう思うよなあ! マジでオメェらホントにバカだぜ! このクズが! クズどもめが! うぁっはははははあああ!」

 駐車場ちゅうしゃじょうはなれた場所に車が一台停めてあって、そこからサングラスをかけた黒いスーツの男が二名車から降りてくるのが見えた。

「はっ! あんな所にも仲間がいたのか!」

 するとヤツらはじゅうを構えて射撃しゃげきしてくるではないか!

「やべえ!」

 どこかにかくれるために青柱せいちゅうが辺りを見回してみると、ショッピングモールの搬入搬出口はんにゅうはんしゅつぐちが目に入った。そこには何台かトラックが停めてあって、積荷を運んでいる作業員の姿もいくつか見える。

 青柱は重力を解除して走り出した! 同時に坊主頭ぼうずあたまの男も動けるようになって、ヤツもあわてて青柱を追うように走り出す!

「待って、待って! 置いてかないで!」

 全裸ぜんらの青柱はあっという間に行ってしまう! 坊主頭の男も走りながら服をいだ!

 搬入搬出口で荷下ろしをしていた作業員たちが、突然とつぜん二人のネバーウェアが走って来ることに気づいておどろきの声を上げた!

「うわぁ! な、何?」

「ヤッベェ! ネバーウェアじゃん!」

「なんだよ急に! マジかよ! うわぁ!」

 青柱は荷物と作業員をし分けてき飛ばし、中へと走って行くと、それに坊主頭の男が続いていった。こうして全裸の男二人が買い物客でにぎわうショッピングモールへと乱入して行ったのだった。


 ショッピングモールのフードコートでは、赤んぼうかかえた若い女と初老の女が、ちょうど席の空いた四人席を確保できたところだった。この二人の女はおそらく親子なのだろう。母親とおぼしき女が口を開いた。

「ああ、よかった。このフードコート、土日はいつも満席でなかなか席取れないのよ」

 この日は休日ということもあってショッピングモールは大変なにぎわいだった。フードコートもすごい混雑で、座席がすべてまっているだけでなく、座れずに空きそうな席を探している客もなんと多いことか。

「ホントだね。すごい人。うわあ、なんかなつかしい。モールのフードコートなんてちょう久々なんだけど」

明美あけみが小さいころはまだなかったけど、このモールができたのって高校生くらいの時だった?」

「そう。高一の時。高校時代はこのフードコートによく来てたなあ。お母さんたちは今でも来るの?」

「まあね。なんでもそろうから。このモールができてからほんと便利になったよ」

 フードコートのある場所はけになっており、天井てんじょうあおげばそこはドーム型のステンドグラスになっていて、やわらかな採光に照らされた、開放的な空間になっていた。ステンドグラスというとお洒落しゃれで素敵なもののように聞こえるが、実際には地元のゆるキャラを中心としたデザインで、いい方は悪いかもしれないが、子ども向けの安っぽいデザインにしか見えないところが残念ではあった。

「東京ではこういうショッピングモールには行かないの?」

「行かない行かない。てゆうか、こういうのないし。あ、お台場と豊洲とよすにはあったか。だけど、社会人になってからはぜんぜん行かなくなったよ」

「そうなの? なんで?」

「なんでって、なんか安っぽいし、おしゃれじゃないじゃん。モールに入ってる店なんかで服買わないし」

「え? じゃあ、どんなところで買ってるの?」

「銀座とか表参道とか、あと渋谷とかかなあ」

「高いんじゃないの?」

「まあね。だけど、いい大人なんだからそれなりの格好しないとね」

 確かに、むすめの服装は地味なベージュ系でまとめられていたものの、それなりの値段のするもののように見えた。明るめにカラーリングされたかみも、よく手入れの行き届いたサラサラの髪である。

「あ、お父さんが来た。こっちこっち」

 お父さんと呼ばれた男は、UOKうまるこwのベテラン隊員である太門左衛門その人であった。太門はトレイにうどんを三つと、孫用の小さなおわんも乗せて運んで来たところだった。

「けっこう時間かかったね」

「ああ。見ての通りの混雑だからな」

「ホントにすごい人だよね」

「東京はもっとすごいんじゃないの?」

「東京も人多いけどさ、でも、こんなに家族連れはいないかなあ。なんか、ホントに少子化なんだよね? っていうくらい子どもいるね」

「まあ土日はね。でも、やっぱり子どもは減っていて、となりの小学校なんかは廃校になって明美あけみが通った小学校と合併がっぺいされたんだよ」

「ええ? ホントに?」

「ホントよ。そういえば、あなた。明美ったら、東京ではこういうショッピングモールに行かないんだって」

「なに? そうなのか?」

「そうなんだよ」

「なんで行かないんだ」

「なんでって、お父さん知らないの? 東京にはモール以外のお店がいっぱいあるから。モールなんてファミリー層の行くところでしょう?」

「だったらみんな行くんじゃないのか」

「ちょっと、やだ、お父さん。東京には家族連れ以外の人もたくさんいるの。結婚けっこんしてても子どものいない夫婦や結婚してない人も大勢いるんだから」

「そうなのか? おれが東京にいたのはずいぶん前のことだったから、でもまあ、確かに昔もそうだったかもしれないな」

「ちょっと、やだ、お父さん。昔っていつの話よ」

「だいぶ昔だ。結婚する前の話だからな」

「そうなのよ。明美あけみは知らないだろうけど、お父さんって東京勤務だったのよ」

 UOKうまるこwができる前の若かりし太門は、紛争ふんそう地域にて人権保護や医療支援いりょうしえんを行うNGOで働いていた。光合成人間である太門はそういった危険な地域で大変重宝され、活躍かつやくしていたのである。それがUOKw設立に奔走ほんそうしていた宮内先生の耳に入って、初期メンバーとしてスカウトされたのだった。設立当初のUOKwには本部しかなく、そのため太門は東京で働いていたのだ。

「でもまあ、東京勤務だったとはいえ、俺たちのころは今とちがって仕事ばかりだったからな。夜遅よるおそくに同僚どうりょうと近くの安い居酒屋に行ったくらいだ。だからそれほど東京のことは知らないんだよ」

敏史としふみさんは確か東京出身だったよね? お店なんかも詳しいんじゃないの? 敏史さんとは一緒にどういうところに行くの?」

 敏史さんとは娘の夫である。

結婚けっこんする前はお酒の飲食店が多かったかな。でも、子どもができてからは行かなくなったね。だって赤ちゃん連れて入れないでしょう? 逆にこういうフードコートみたいな店の方が入りやすいかな。あと、ファミレスとかもね。今まで行ってた飲食店なんかは当分行けないかなあ」


 東京に出て都会的になったむすめの話を聞きながら、太門は思った。

 確かにショッピングモールなんてものは、都会の若者にはダサいものなのだろうと。しかし、ここへ来るたびに思うのだが、ファミリー向けとはいっても各世帯には収入のちがいなどもあるだろうし、男も女も、老いも若いも、子どもたちなんかもたくさんいる。そういったいろんな生活を持った人たちみんなが、楽しく利用できるショッピングモールというものは良いものなのだと、太門は思うのだ。

 ニュースを見れば、世界のなんと不安定なことか。富む者と富まざる者、持つ者と持たざる者、そのような痛ましい不平等や不均衡ふきんこうが世界には歴然と存在し、世界中のあちこちで分断や紛争ふんそうが発生している。市民の生活はおびやかされ、子どもたちは教育を失うだけでなく、恐怖きょうふえの中で成長し、そういった現実の中で人格を形成せざるをえないのだ。

 それに対してこのショッピングモールはどうであろう。太門にとっては豊かとしかいいようのないものなのだ。

 だって見てみろ。

 赤んぼうを連れた家族のなんと幸せそうなことか。

 カラフルなジュースやスイーツを目の前にした子どもたちのなんとうれしそうなことか。

 友だち同士で遊びに来た子どもたちのなんと楽しそうなことか。


 太門は思うのだ。

 これが本当に大切なものなのだと。

 自分はこういったものを守らなければならないのだと。


「ねえねえ、あの子たち見て? ちょっとふざけすぎじゃない? 男子ってほんとバカね。ウケるんだけど」

 むすめがそういうので、太門も近くにいる子どもたちのグループの方に目を移した。その子どもたちは四人席を二つ並べて座っていたのだが、席に対して人数が多すぎるので、何名かはイスに座った者の上に乗ってみたり、間に無理やり入ったりしてふざけ合っていた。

 この子どもたちは私の同級生のホシケンたちだった。ホシケンたちは、自由研究の資材購入しざいこうにゅうを名目に親からお小遣こづかいをもらって、ゲームコーナーで遊んだり、ジュースやスイーツを食べたりするためにショッピングモールへと遊びに来ていたのである。そこでばったりと女子たちのグループと出くわしたので、一緒いっしょにフードコートで集まっていたのだ。その女子たちのグループにはミヨちゃんの姿もあって、ミヨちゃんは大変な美少女であったから、男子たちはうれしくなって調子にのっていたのである。

 太門が目を細めながら、ホシケンたちの様子をながめたちょうどその時だった。

 遠くから悲鳴が聞こえたかと思うと、ガラスの割れる音とともに奇声きせい怒号どごうが近づいて来た。その音だけでも何らかの異常事態が発生したことは明らかだったが、何が起きているのかはわからないフードコートでは、客たちに動揺どうようが走りはじめていた。ホシケンたちもおどろいて、なんだ? なんだ? と辺りを見渡みわたしてみたところ、それは二階から聞こえてくるようで、ついにはその奇声がけに入ってきたかと思うと、フードコート全体にひびきわたった。


 それは完全なネバーウェアだった!


 一糸まとわぬ全裸ぜんらの男が吹き抜けに乱入してきたのだ! しかも二人である! 二人のネバーウェアが突如とつじょとして現れたのだ! 一人は怒号を、もう一人は奇声を上げたネバーウェアが! (続く)

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