WELCOME,HALLOWEENTOWN
影神
オバケのカボチャの蝋燭
ひとりぼっちの公園は、何だかいつも怖かった。
順番待ちするはずの遊具には誰も居なくて。
僕はお母さんの来るのをひとりぼっちで待って居た。
ギィ、、ギィイ。
誰かが押してくれるはずの背中は寒くて。
ギギィ。
風をきる度に、肌がヒリヒリとした。
ギィ、、
鼻をさす様な冷たい風。
遠くからは夕飯のいい臭いがした。
バタッ。
目の前の鉄の柵を上手に飛び越えた。
「すごい、すごい。」
パチ。パチッ、パチ。
目の前の馬の遊具には、いつの間にか。
知らないおばあさんが居た。
「ぼうやは、、ひとりかい??」
顔はハッキリと見えなかったけれど。かわりに、
まるで魔女の様な大きな帽子だけが見えた。
「、、うん。
お母さんをここで待ってるの。
おばあさんは、だあれ??
早くお家に帰らないと、お家の人が心配するよ??」
おばあさん「あはは。
ぼうやは優しい子だねえ??」
そう良いながらおばあさんは近付いて来ると、
僕の手を優しく取って握って来た。
その手はとても温かくて、
おばあさんからは紅茶の香りがした。
おばあさん「寂しく、ないかい??」
「、、寂しいよ。すごく、、
でも。お母さんが働いてくれているから。
僕はこうやって、生きていけるんだっ、、」
「どうして。お母さんは、仕事ばっかりするの??
、、僕の事。嫌いなの??
一緒に出掛けたり。一緒に遊んだり、、
もっとお母さんと、居たいよ。。」
お母さん「、、ごめんなさい。。
お母さんも、一緒に居たいの、、
だけどお母さんが働かないと。
『生きていけないの』
」
おばあさん「そうかいっ。」
おばあさんは優しく僕を抱き締めてくれた。
「おばあさん、暖かいね?」
おばあさん「あはは。
ぼうやが温かいからだよ?
ぼうやは良い子だから。コレを、あげよう。」
手には少し重い。小さな、物があった。
「おばあさん。
コレは、なあに??」
おばあさん「これはねぇ。
ぼうやが寂しくならない様になる、"魔法の道具"さ。
きっと、、
お母さんが働かなくても、ずっと。
一緒に居られる様になる不思議な蝋燭さ。
お家に帰ったら、
お母さんに火を灯してもらいなさい??」
手にあるそれに顔を近付けてよく見たら。
それはカボチャのオバケの形をしていた。
「これ。僕が貰っても、、良いの??
僕は何もあげられる物が無いのだけれども、、」
おばあさん「良いんだよ。
さっき。すごいのを見せて貰ったからね??」
僕は何だか申し訳なく思い。
何かあげられる物が無いかを一生懸命に考えた。
そして。
ポケットに入っていた飴玉の事を思い出した。
「これっ。
あげる。」
おばあさん「あらっ。
ありがとうね??」
「今日はHALLOWEENだからね。
"トリック・オア・トリート"
って。
そういえば、おばあさんも仮装してるの??」
おばあさん「違うよ。
これはねえ、、」
いつの間にか薄暗くなった公園に、眩しい明かりが付き。
その電気が付いた途端。
目の前のおばあさんは消えていた。
「お待たせ~!!」
タイミング良くお母さんが迎えに来た。
僕は少し怖くなったけど。
貰った物を胸に抱き締めて。
『ありがとう』
と、心で囁いた。
その夜、、
僕はお母さんにお願いして。
蝋燭に火を灯してもらった。
お母さん「あらっ。可愛いカボチャのオバケさんだわね?
これ、どうしたの??」
、、すると。
部屋の電気が一斉に消え。
ベランダの方に、明かりが見えた。
お母さん「何。かしら??」
開いたカーテンの外には。
大きなブランコの様なモノがあった。
「お迎えに参りました、、
ささっ。お乗り下さいっ。」
少し大きなコウモリは、丁寧な言葉で僕達に話掛けた。
小さなコウモリ達は、大きなブランコの座る所を。
一生懸命に飛んで引っ張っていた。
お母さん「、、夢でも見ているのかしら。。」
僕はお母さんの手を引いた。
「行こう??」
少し大きなコウモリ「ささっ、、お座り下さいませ。
きっと。"HALLOWEENTOWN"を、お気に召す事でしょう。」
僕達が座ると、ゆっくりと空へと飛び上がった。
お母さん「うわぁあああ。」
「お母さん、高いの苦手??」
お母さん「少しだけ、、ね??」
こんな顔を見たのは初めてだった。
僕は緊張と不安で、心臓がバクバクとした。
『今日は楽しいHALLOWEENだ。
ようこそおいでになりました。
皆で楽しく踊ろうよ?
皆で楽しく騒ごうよ?
そーれがHALLOWEENTOWNだよ。』
小さなコウモリ達は歌い出した。
お母さん「HALLOWEENTOWNか、、
きっと。素敵な所なのでしょうね。」
少し大きなコウモリ「勿論!
どうぞごゆるりと。
気の済むまでおくつろぎ下さいませ、」
HALLOWEENの日に。
僕とお母さんは、、
HALLOWEENTOWNへと招待されたのでした。
WELCOME,HALLOWEENTOWN 影神 @kagegami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます