チキンの恩返し

昔々あるところにじいさまとばあさまがいました。

おじさまが立ちション便にでかけると、大きなチキンが罠にかかっていました。


「すんません、ちょっと逃がしてもらえませんかね」

鋼鉄の罠に彫られていたのは、隣家のじじいの名前でした。

じいさんはそのじじいのことが嫌いだったので、チキンを罠から逃がし、罠にション便をかけておきました。


次の日、じいさまの家のドアベルを鳴らす者がいます。

「あー、隣のじじいだが、おまえのせいで罠がさ、錆びてんだよ。弁償しろよ」

「は? 証拠は?」

「おめーがション便かけてんのが監視カメラに写ってんだよ」


じいさまは泣く泣く三万円を払いました。


その日の夕方、じいさまの家のドアベルがふたたび鳴りました。


「金なら払っただろうが!!!!」

じいさまは怒号をあびせますが、そこにいたのはじいさまが助けた大きなチキンでした。

「あのとき助けていただいたチキンです」

「あのさ、おめーのせいで三万払わされたんだけど。どーすんのこれ」

「お、恩返しにきました」


チキンはじいさまの家の家の一室を借り、恩返しをすると主張します。

「私がいいと言うまでけしてここをあけないでください」

「なんで」

「恥ずかしいので」

「ふーん」


チキンは部屋に入ると、自分の羽根をむしりはじめました。

そして、布で出来た袋にそれをつめていきます。

じいさまはその様子を監視カメラでみていました。


「あのさ」

ガラガラとじいさまは戸を開け放ちます。

「部屋、汚さないでくれる?」

「あ、いや、その。今できました。羽毛枕です」

鳥肌をあらわにしたチキンが枕を差し出しました。じいさまはそれをはたき落とします。

「ワシたち、低反発枕じゃないと寝られない人間なんで。あとさ、三万円は?」

「すんません・・・・・・。この身で返します」

「ばーさま! オーブンあたためて! オーブン!」

「じーさま、オーブンは故障中です」

「ちっ、もういいよ。羽根もって帰れよ」

「すんません・・・・・・」


その夜、破産したじいさまとばあさまは夜逃げした。

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にっぽん荒唐無稽ばなし 無頼庵主人 @owner-of-brian

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