ウナギ捕り

吉兵衛は用水路のすみでウナギを見つけた。

こいつを捕まえて、母ちゃんに食わせてやろう。

吉兵衛はウナギをつかんだ。しかし、ウナギは逃げようとして身をくねらせる。

それを右手でぐっとつかむと、ウナギはぬるぬると前へ逃げ出す。今度は左手でつかもうとする。また逃げ出す。右手左手と、すりぬけていくウナギを追って、吉兵衛は前にすすみはじめた。


吉兵衛はケリをつけようとテンポを上げるが、ウナギも負けていない。

そうしているうちに、吉兵衛とウナギは目にもとまらぬ速さとなった。水上も沈まずに走れるほどの早さである。


「まて!ウナギめ!」


気がつくと吉兵衛は国を越えて、ブラジルのサンバカーニバルのなかにいた。

いよいよウナギは力尽き、吉兵衛はそこで出会ったアルゼンチン女性と結婚した。二度と親孝行することはなかった。

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