仕事帰り、行きつけのスナックへ向かうために乗り込んだエレベーター。
ところが、扉の先に広がっていたのは、見覚えのない怪しすぎる飲み屋街でした。
消えたエレベーター。
正体不明の次元パトロール。
そして、あまりにも濃すぎる店と、その住人たち。
異世界へ迷い込んだというのに、主人公・常松京太郎が手にするのは、剣でも魔法でもありません。
頼りになるのは、酒場で培った愛嬌と処世術、次々と飛び出す懐かしの記憶、女性に弱すぎる下心、そして、理不尽な会社員生活をどうにか生き延びてきた持ち前の「いい加減さ」です。
この常松、とにかく格好がつきません。
すぐに勘違いし、勝手な妄想を膨らませ、いざという場面でも話は盛大に脱線。
危険が迫っているというのに、頭の中では懐かしの音楽やテレビ、映画、プロレスの記憶が次々と駆け巡ります。
けれど、その格好悪さこそが、彼の最大の武器です。
大切なので二度言います!
その格好悪さこそが、彼の最大の武器なのです!!!
初めて入った店でも相手に一杯勧め、迎え入れてくれた場所には自分なりの礼儀を尽くす。
怖くても必要な時には事情を打ち明け、差し出された好意を、戸惑いながらも受け取っていく。
勇敢に戦ったからではなく、危険を感じて逃げたから助かった。
完璧な判断をしたからではなく、放っておけない人間だったから、誰かが手を差し伸べてくれた。
一軒の店で笑い、一人の店主に翻弄され、その人らしい形の優しさを受け取って、また次の店へ。
ただのハシゴ酒に見えていた夜が、いつしか人から人へと命をつないでもらう冒険へ変わっていきます。
昭和・平成を駆け抜けるように繰り出されるネタと言葉遊び。
異世界もののお約束を、すべて酒場仕様に変えてしまう自由奔放な展開。
主人公だけでなく、語り手や作者まで物語へ乱入してくる予測不能な面白さ。
冒頭から心を掻っ攫われ、「少しだけ」のつもりで読み始めたはずが、気づけば公開中の三十七話まで読破していました(笑)。
元ネタに気づけば、さらに楽しい。
たとえ知らなくても、常松の暴走する脳内と、濃すぎる人々との掛け合いに、いつの間にか笑いの渦へ巻き込まれてしまいます。
からかうけれど、見捨てない。
笑わせながら、そっと帰る道をつないでくれる。
そんな夜の店の温かさに包まれながら、格好悪い中年男の命懸けのハシゴ酒を、どうか見届けてください。
常松京太郎は、無事に元の世界へ帰れるのか。
その前に、次はどんな店で、どんな目に遭ってしまうのか。
笑って、心配して、気づけばこの男を放っておけなくなる――。
剣も魔法もない異世界飲み屋冒険譚、ここに開店です!
仕事に追われる常松京太郎は、仕事帰りに行きつけのスナックへ向かうも、雑居ビルのエレベーターが故障ーー
したかと思うと、見覚えのないフロアへ降り立ってしまう。
そこは怪しすぎるお店ばかり。
どう怪しいのかは、本作を読んでからのお楽しみとなりますが、さあ帰ろうとすると今度はエレベーターが消えているため、この怪しげな世界に閉じ込められることに。
とにかく右も左も笑いの仕掛けにぶつかり、ずっと笑ってばかりでした。
主人公の脳内が気になってしまうほど、古今東西ありとあらゆるネタと出会うことになります。
テンポが軽快で店舗がおかしいので、むずかしく考える必要もなく、物語の世界に身をゆだねるのが正解だと思われます。
どんな理屈も次なる笑いの刺客によって打ち消され、気づいた時には笑ってます。
たとえ落ち込んで帰った晩でも、この物語を開けば救われるかもしれません。
まずはページを開いてみましょう。1話目のタイトルで「?」となります。
あとはたっぷりと笑いの渦に巻き込まれ、独特の異世界をお楽しみください。