十七話 期待外れ
物心ついた時からわっちを見る目は変わっておった。あれをしろだのこれをしろだの父上からはよく口酸っぱく言われておったものじゃ。じゃが、わっちはどれも多彩にこなした。武術、学術、芸術、戦術、剣術、どれもじゃ。
そんなわっちに嫉妬を覚えたのか、父上はわっちのことを一度も認めなかったし、褒めたこともなかった。仕舞には会食の際などに「出来の悪い子で――」なんて嫌味も言っておったわ。
じゃがしかし、わっちは父上に従う他なかった。この秀才の代償か、わっちの底から生まれる執念、欲望、信念というものは微塵もなかったのじゃ。言われるがままに、学び、励み、鍛えた。
しかし、何にも興味を示さなかったわけではない。唯一、幼少期から父上に飽きるほど聞かされたことがある。人間の恐ろしさじゃ。人間という生き物は貪欲で卑劣な上に表面上の情をちらつかせる。実に汚くみすぼらしい存在だ、と。
わっちはこの話に共感するとともに一種の好奇心が芽生えた。生まれて此の方、わっちは剣や武の対決において、一度も負けたことがなかった。人間がそこまで自己主義で最悪な生物だとしたら、苦戦を強いられるほどの猛者が中にはいるかもしれぬと考えたのじゃ。
じゃから、「人間どもをこの手で皆殺しにする」と断言しておった父上を殺した。力ある者への期待がどうしても抑えきれなかったのじゃ。
ところがどうじゃ、人間共の大将と交戦したが何も昂らぬ。わっちの剣を止めるまででそれ以上の腕もない。期待外れそのものじゃった。決着も早々についた。最後も呆気のう終わりよった。わっちを目の前によそ見をするなど、生きてはいけぬ。当然の結末、思い通りの結果にわっち自身、退屈を感じた。
「……え? こ、香花さん? 香花さん! ぎゃあああああああ!」
耳障りで五月蠅い悲鳴が響く。先程の会話を聞く限り、彼奴が「守るべきもの」とやらなのじゃろう。彼奴も早々に片づけるかのう。
…………ん? 力が……入らぬ……?
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