第二章 ウサギ族の脳筋野郎
第32話 ウサギ族のパウロ=ミャミャ
目の前に広がるは渓谷。それは遠目で見ても、ひたすら続いていた。
「ここは、どこだ?」
「ここどこなんでしょうね?」
「そ、外だよ!!アルカディア!!外だよ!!」
「はいはい、アスティアちゃん、興奮しないの」
見るかに深い渓谷、普通に上にあがるのは難しそうだ。
「とりあえず、まっすぐ進んでみよう」
「了解」
「は〜い」
しばらく、俺たち3人はひたすら続く渓谷を歩き続けた。1時間、いくら歩いても景色が変わる気配はなく、むしろ少し暑くなってきた。
「ねぇ〜真也、まだですか?」
「う〜ん、まだだ」
「まさか、まだこれがずっと続くなんてことないよね?」
「………」
「なんで黙るの!?」
「何かくるぞ!!アルカディア!!アスティア!!」
「え!?」
「敵なら私の魔法でぶっ飛ばすよ!!」
静かだった渓谷、耳を澄ませると「ドコドコドコドコッ」と足音が複数、聞こえてくる。それは少しずつ近くなっていく。
そしてその後すぐに足音の正体に気づく。魔物が群れを成して、こちらに近づいてきていた。そして……先頭にはウサギ耳をつけた女の子が……。
「え…」
「ねぇ、あの先頭の子って…」
「アルカディア、ここは君の判断に任せよう」
「ちょっと!!責任を押し付けないでよ!!」
「違うぞ、俺はお前のことを思って…」
「絶対嘘よ!!」
そんな俺とアルカディアが揉めていると、あの魔物の群れの集団が猛スピードで近づいていた。その様子を見て、アスフィアがニコリと笑う。
「ねぇねぇ!!真也!!やっていい?いいよね?」
「あ、ああ〜〜」
俺はチラっとアルカディアを見つめると、コクッと頷く。
「おけ!!」
俺は盛大に親指を立てて許可をした。
「新しく覚えた魔法!!こんなところで使えるなんて!!いっくよ〜〜〜〜〜【アストラ・グランウィンド】!!」
渓谷の底から大きな竜巻が4っ一気に生み出される。
「す、すごいな」
「う、うん」
二人が驚いているが、それは魔物の群れ側も同じだった。大きな竜巻が魔物の群れへと迫る。迫ってくる竜巻に足を止めた魔物。
「止まったら最後だよ!!やっちゃえ〜〜!!」
猛スピードで迫り、命の危機を感じ取った魔物の群れは引き返すが、もう遅かった。
「ぎゃぎゃぎゃやややややややや!!!!」
魔物の叫び声と共に空へと打ち上げられ、それはまるで一種のショーのようだった。その中、1匹のウサギ耳女の子が竜巻に流されながら、こちらに向かってくる。
「あれは、こっちにくるかな…」
「ひぇぇぇぇぇぇ助けてくださ〜〜〜〜い」
不規則に体が揺さぶられるウサギ耳女の子を俺は着地点を見極め、お姫様抱っこのように受け止めた。
「大丈夫か?」
「あ…はい」
「何、イチャイチャしているの?」
その様子を睨みつけるアルカディア。
「冗談はやめてくれよ。で、大丈夫?怪我はない?」
「はい!!大丈夫ですよ!!ほら、この通り!!」
自分は大丈夫だと、体のあちこちを見せ、怪我がないことを見せてくる。
羞恥心はないのだろうかと心で思う。
「終わったよ〜〜」
満遍な笑顔でこちらに飛び込むアスティアを俺は胸で受け止めた。
「そうか…」
あれだけいた魔物は1匹もおらず、でこぼこしていた地面も竜巻が走った場所だけ綺麗に整地されていた。
「って!!あなたは!!私を殺そうとしましたね!!」
「私?」
「そう、あなたです!!」
「ごめんね?」
可愛い笑顔で謝ると、うさ耳女の子はデレデレし始める。
「か、可愛い!!って痛い!?」
後ろから俺はチョップを食らわす。
「な、何をするんですか!?」
「まずは名を名乗れよ」
「へぇ!?さっきまで優しかったのに、性格が急変!!」
驚かれたがこれが普通の対応だ。見ず知らずの女の子に優しくする通りはないし、それに見るからに……。
「で、あなたの名前はなんて言うの?」
「え、ああ、私は誇り高き!!ウサギ族のパウロ=ミャミャ!!パウロちゃんと呼んでください!!」
「パウロちゃんね、私はアルカディア!!この子はアスフィアちゃん、それで……」
っとアルカディアが話そうとした時、俺はパウロに飛び込み、言葉を遮った。
「君!!」
「はい!!」
「君ってもしかして、【固有スキル】持ってる!!」
「え…あ、なんで知っているんですか!!」
「やっぱりか!!これはなんて運命的なんだ、アルカディア!!このパウロって子は【固有スキル】を持ってる!!」
「????」
アルカディアの頭上には?マークが浮かぶ、そんな中、パウロちゃんは…。
「ど、どうして、バレたの…、お父さんにもお母さんにも秘密していたのに」
「パウロちゃん、大丈夫?」
アスティアがパウロの頭を軽く撫でる。
「……だ、大丈夫だよ。うん!!私は元気が取り柄だから!!大丈夫!!私は大丈夫だぁぁぁぁ!!」
「【固有スキル】について、教えてあげよう」
【固有スキル】とは、その人だけが持つオリジナルスキルで、世界でただ一つしか存在しない、貴重なスキル。【特殊スキル】より強くはないが、それに匹敵するほどのポテンシャルがある。
「つまり、とにかく貴重かつ、強いんだ!!」
「そ、その【固有スキル】をパウロちゃんが?」
「そう!!だよな!!」
「そ、そうですけど…そんな大声で言わないでくださいよ!!ってか!?なんで私が【固有スキル】を持っていることがバレて……」
「それは俺のスキル、千里眼で見たからさぁ」
「うぅぅぅ、なんて私は運が悪いんだ…」
涙を流すパウロに二人は寄り添いそして俺に対して辛辣な言葉を送る。
「女の子を泣かせるなんて最低!!」
「最低!!」
「え…」
なんか、俺が悪い雰囲気になってる。まぁ少しばかり空気が読めなかったとは思うけど……。
「あ、それより…」
「真也、もう少し、空気を読もうよ…」
「あ、はい…ごめんなさい」
それから数分後、パウロが泣き止み、本題に入る。
「で、気持ちを切り替えてッと、パウロはここで何しているんだ?ウサギ族は確か、森の奥地が生息だし、なんでこんな枯れ果てた渓谷にパウロがいるのか……何か目的でも?」
そこでパウロは俯き、さっきまでのテンションとは真逆に変貌する。
「聞いちゃダメだったか?」
「どうだろう。けど女の子って複雑だから……」
すると急に両手で頬を思いっきり叩くパウロ。何か決心したような瞳を輝かす。
「少しお話があります!!」
「なんだよ…」
「ど、どうか!!私の村を救ってほしいんです!!」
大きく直角に腰を曲げて、俺たちはお願いされた。
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カクヨムコンがあと1日で始まるということでこの作品の投稿を再開します。
どうか、よろしくお願いします。
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