1ー①
―家族に会いたい―
私のお母さんがいなくなってしまったのは私が小学生になったばかりの時。突然の病であっという間にいなくなってしまった。お別れの挨拶もできなかった。悲しくて悲しくて毎日泣いていた。
でもそれからお父さんとおばあちゃんとおじいちゃんが一緒にいてくれた。いろんなところに連れて行ってくれた。
それでもやっぱり寂しい気持ちが心の何処かに刺さっていたのだと思う。きっとお父さんやおばあちゃんやおじいちゃんもそうだったと思う。いまではもう確認することはできないけど…きっとそうだったと思う。
そんな3人も私が大学を卒業して就職して一人暮らしを始めたとき、いっぺんにいなくなってしまった。
それは突然の事故だった。車で病院に向かう途中、お父さんの車が事故にあったのだ。車にはおばあちゃんとおじいちゃんも乗っていた。3人とも一緒に逝ってしまった。
その時のことはあまり覚えていない。ただ親族の力を借りながらお通夜もお葬式もそれからの手続きも行った。四十九日もすませてやっと落ち着いた時にはもう『家族』はいなくなったのだと実感がわいてきた。それまではただただ過ぎ去っていく日々を過ごしていただけだったのに急に現実に引き戻されたようだった。もう涙は枯れ果てたと思っていたのにまた溢れてくる。
そうか私はもう独りぼっちなんだと痛感した。
誰もいない部屋の中でただただ泣くことしかできなかった。
もし願いが叶うなら
会いたい…。会ってみんなと話がしたい…。お母さんに…。お父さんに…。おばあちゃんに…。おじいちゃんに…。
もう一度会いたい…。
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「ふむ、これはこれはなるほど。あちらはどうなっています?あちらからもきていますか?」
「うーん、まだ来てはいないけどもしかしたら来るかもしれないって言ってたよ」
「ではもう少しだけこちらには待ってもらいますか」
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