金塊の行方

「ちょっと待って、13桁の暗証番号を突破したの?ノーヒントで?」

 楓が一連の出来事を説明し終えると、玲奈はまず疑問をぶつけた。

「なんか……開いた」

「なんかってなんだよ……。確率的には10兆分の1だよ?」

「でも、結婚記念日とか組み合わせたやつだったから。案外いけたよ」

「……わかった。一旦それは飲み込む。えっと、私に吉原修司の家の見取り図を送り付けたのはそいつで、私たちの動きを把握する術があるって?」

「うん、そいつが言うのが本当なら、そうなる」

「もし仮にそうだったとしても、楓が心配することなんてないよ。怪盗レイナはそんなんじゃやられないからさ」

「何よ、かっこつけちゃって」

 玲奈は楓の文句を無視して椅子から立ち上がった。

「ちょっと待って」

 楓が玲奈を引き留める。

「修司さんの金、盗んだのは結局あの男なの?」

「……どうだろうね」

「は?」

「まあ、警察さんは頑張ってみなよ」

「どういうこと?だって、あんたが侵入する前にはもう……」

「よくよく考えてみなよ。あそこにあった金は、合計80キログラムを超える。楓の体重より重いんだよ?」

 直後、玲奈は楓の平手打ちを食らった。左肩を負傷しているので、右手の力強いやつを。

「……とにかく、そんな量は怪盗レイナとて、一回じゃ持ち去り切れない。最後に残した分を謎の男に取られたとかは知らないけどね。……そういえば、前日に面白いもの仕掛けてたみたいじゃん」

 玲奈は、ポケットから小さな黒い玉を取り出した。

「あっ、それ、探してたやつ!」

 楓が手を伸ばすが、玲奈はすぐ取り上げる。

「どこの樹くんから聞いたのか知らないけど、私が通る花壇の中にこんなの仕掛けるなんて。楓にしては頑張った方かな」

「なんで分かったのよ!?」

「私、江戸川乱歩の怪人二十面相が好きなんだよね。花壇の中には罠がないか気にしちゃうんだ」

「何よそれ……」

 楓の不服そうな顔を見て、玲奈は満足気だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る