第18話 ルニース王家の過去

「聖女ヴェロニカについても報告を行いました。何故今まで、彼女が17歳になるまでその存在が放っておかれたのでしょうか。貴女の前で言うのは憚られますが、現国王には色々と黒い噂がついて回っています。欲深い王が、聖女が国内にいたにもかかわらず、気付かなかったのはおかしいと思っています」


 その口振りからして、彼女が平民の中で過ごしていたからというだけではないのかな?


「前王夫妻が馬車で事故死したのは御存知でしょうか?」


「はい。レナート様が生まれて二ヶ月ほどが過ぎた時の事ですよね」


 レナート王子は両親をいっぺんに失って、叔父である現国王夫妻に引き取られた。


 もともとの王位継承順位はミハイル様よりも上だ。


 それに、レナート王子には本当の兄がいたけど、幼少の頃に病死したと聞いた。


 それは私達が生まれた頃の話だ。


「あの件も現王が絡んでいることは、帝国内では公然の秘密です。責任を取らされて処分されたのは、前王に忠誠を誓った者ばかりでした。現国王は、レナート王子から王座を奪った形になります。そして、しばらく病気で表に出られなかったレナート王子に代わりに、ミハイル王子が王太子となった。本当は、国王はレナート王子の回復を望んではいなかったのかもしれませんね」


「あの、どうしてそこまで私達に話すのですか?」


 他国出身のキャルム様が、私達の国について話す内容は酷く恐ろしいものだった。


 お兄様は、大半のことを知っていたのか険しい表情のまま黙っている。


「貴女は知っておいた方が良いと思ったのです。それと、ライネ家には協力してもらいたいと思っています。いずれにしても、あなた方は当事者となるのですから。ルニース王家が何か重大な事を隠しているのではないかと、父は……皇帝陛下は懸念していました。貴女を危険なことに巻き込むつもりはありません。ただ、知っておかないと回避することもできないと思いました。今の王家は警戒しなければならないと」


「何か起こるのでしょうか?」


「わかりません」


 私はすでに人質だったようなものなので、キャルム様の警告を大袈裟だとは思えなかった。


「実は、貴女の耳に入れるのもどうかとは思ったのですが、僕はミハイル王太子殿下と聖女ヴェロニカとの結婚式に招待されています」


「そうなのですね。どうぞ、もう気にしていませんので、私に気遣いは無用です」


「はい。では、王家に変わりはないか、その時にこの目で確認してこようと思います」


 それも、キャルム様に命じられた務めなのかな。


 王太子殿下とヴェロニカさんの結婚は心から祝福したいけど、なんだが不穏な空気を感じ取って微妙な気持ちになっていた。


「まずは、無の森の調査に先に行ってきます」


 それを聞いたお兄様はすぐに立ち上がった。


「話は理解しました。親父に準備の進捗を聞いて、俺も貴方に同行する準備を整えます」


 私の方は調査の協力といってもできることは何もないから動けずにいた。


「ユーリア。俺が留守の間、親父と母さんのことを頼んだ」


「はい……」


 話が終わると、部屋から出て行くお二人を見送ることしかできなかった。


 私には、キャルム様とお兄様が主体となって森に調査に入るから、その見送りをし、報告を待つことしかできなかったのだ。



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