第40話 チーム分け

「二手に分かれましょう」

 イチハが言った。

 さいわい、今のところ洞窟内で物騒なモンスターには出くわしていない。この先はさらに道が狭くなっているから大型のモンスターはいないだろう。せっかく来たのだし、手に入れられるお宝があれば全部ゲットしておきたい。特に、星の見落としは避けたいところだ。

 皆、同意した。

 洞窟は奥でまた繋がっていることも多いし、そうでなければ、半刻ほど進んでも合流しなければ引き返して四人で進もう。もしも危険を感じたら無理せず戻ること。そう決めた。

「じゃあ、ミミとイチハ、ドゥーク様と坊ちゃんに分かれましょう!」

「えっ、なんで?!」

 ミミの提案に、僕は驚く。ミミは不思議そうに首を傾げる。坊ちゃんもドゥーク様と一緒なら安心でしょ、って。いや、でも。

 大人と子どもでチームを組むのは分かる。けど、女性のイチハと組むのは僕の役目じゃないの。僕がそう切り出す前に、ミミが解説を始める。

「まずですね、大きいのと小さいのでペアを組んだ方がいいです。だからドゥーク様とイチハは分かれます」

 うん。大人がいた方が、いざという時に適切な判断ができるだろう。また、それぞれの道に、小さな体でしか確認できない通路があるかもしれないし、逆に高い背じゃないと見えないものもあるかもしれない。

「そして、ドゥーク様は鼻が利きますし、ミミは耳が良いです。危険をいち早く察知するために、ドゥーク様とミミはそれぞれ別の方がいいです」

 てっきりミミは身の安全のために強いドゥークと一緒を望むものだと思っていた。けど、ちゃんと全体のことを考えてるんだ。理由を聞くと、納得せざるを得ない。

 ドゥークも頷いているから、妥当な編成なんだろう。なんだか僕だけがただ小さくて何もないみたいで気が引ける。少しは強くなった気でいたけれど、まだ誰かを守れるって信頼されるほどじゃないんだ。

「ナナ、大丈夫よ。ちょっとしたモンスターなら、私がぶっ殺すから」

 イチハが、いつも獣を解体するときに使う肉切り包丁をぶんぶん振り回す。物騒だなあ。狂気じみた強者感が滲み出てて、思わず吹き出す。ペアのミミはひきつった顔で苦笑している。

「ミミ、イチハに食べられないように気をつけてね」と言ってやると、「坊ちゃんのバカ!」と小さな足で背中を蹴られた。イチハもケラケラ笑ってる。

「じゃあ、行こう」

 二つのチームはそれぞれの道へ足を踏み入れた。

 洞窟内に反響したイチハの笑い声がどんどん遠くなっていき、じきにしんと静かになった。

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