第21話 ネリカの心、分からずお気楽王子様

サーニの呑気のんきさにあきれ果てて「戦いません!」と言って怒り心頭のネリカだが今でも無表情で戦い続けている。しかし、サーニが声を掛けても返事はしない。

「ネリカ、疲れてない?」

「・・・・」

「ソルト~ネリカが口を聞いてくれないよ~」

サーニの甘えは変わらない。


ネリカが怒ってるのはサーニの気楽さだけではない。あまりにも自分に頼りすぎている所なのだ。

心配してくれているのは理解できるが、甘えすぎる所が問題なのだ。

ネリカとしてはこの旅でたくましく成長してほしいと思っているのに、当の本人は気楽に構えている。それが怒りを増す原因になっている。


サールは戦ってソルト自身も自由だが戦ってはくれている。サーニが戦えないのは分かっているが、あまりにも現実が見えていないのが許せない。

「サーニ、少しはしっかりしろ」

「しっかりしているよ」

「お前なぁ・・・」

ネリカだけではなくソルトが何を言っても「しっかりしているよ」というばかり。

人の事が言えないソルトでもネリカの怒りは良く分かる。


(あいつはこんなのとずっと二人で旅をしていたんだな。よく今まで我慢できたな。)


「サーニ、少しは真面目に自分の事を考えろ」

「僕の事?」

ソルトの問いに訳が分からないサーニ。

「今、こうしてる間にも自分の身体が大変なことになってるかもしれないだろ」

「うん、そうかもね」

「そうかもねってお前・・」

「でもね、ここにいる僕は何ともないよ。身体がどうにかなっていたらこの僕も無事ではないと思うから。」

「お前の言う通りかもな。」

サーニの言う事は間違っていない。

霊体が無事という事は身体も無事という事でもある。だが、これからも身体が無事という保証はない。だからネリカは焦っているのだ。それなのに当人でもある王子様が吞気に構えているから怒りが込みあがってくる。


(サーニさまは何も分かっていない。身体が無くなるのは時間の経過だけではないのに・・・)


ネリカの心を知ってか知らずかサーニの気楽さは変わらない。


(本当に変わってくれるの?)と心配になるネリカだった。

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お気楽霊体王子が無双侍女と旅する自分探し 未知 @mi-ci

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