第23話 私は、救い影を、救いたい。



     01



 亜人の迫害というものは地域によって、更には大陸によって異なる。

 東では亜人は普通に人類として扱われているのに対し、西では非人類として奴隷や過酷な扱いをされていたり、酷いときには魔物と同等に思われていたりもする。

 要するに東は亜人の夢の大陸で、西は地獄であるのだ。

 では中央は、というと地域差の話となる。

 良しも悪しも、住む人次第、という形なのが中央であった。


 この世界は三つの大陸によって形成されている。


 『救い影』と呼ばれる亜人の二人はこの中央の、特に亜人に対して『偏見』の強い地域で活動してしまっている。

 がそれを許すはずもなく、腕利きの冒険者や傭兵の連中に討伐されてしまうという話を聞いて、私は悩み続けている。

 もし仮に、亜人というものの存在が悪だとするのなら。

 それを討伐する我々人類は、正義として称されるべきなのか。

 人々を助ける存在を、悪とできるか。

 打算か、あるいは計画の元、行われているのかは定かではない。

 それでも私は、彼らが、救い影が、そういう存在ではないと信じてみたい。


 私は商人の子として生まれた。


 それでも、八人もいる子供の真ん中くらいで、才能も特にない。

 跡継ぎもたくさんいる。才能のあるやつはもっといる。

 私はただ、商人の子だからということで、商売をしているに過ぎない。

 本当は旅がしたかった。

 幼いころから読んでいた作り話に心を奪われ、今もなお、奪われ続けている。

 そういう気持ちや思いを押し殺して、生き続けていた。


 私は今、とても愚かなことを考えている。


 きっと私はお尋ね者になるかもしれない。

 それでも成し遂げてみたいことができてしまった。

 もし叶うのなら、そうなればと思って。

 トーマスには悪いことをしてしまうだろう。

 けれども、もうここしかない。

 私が、私の夢を叶うためには。

 そして恩知らずにならないためにも。


 私は、救い影を、救いたい。



     〇



 久方ぶりの殺意に満ちた日々だ。

 冒険者や傭兵と呼ばれる人間たちに追われるように、またなってしまうとは。

 そして、恐ろしいのが来る者が皆、強いことだ。

 あの『死』そのもののアレほどではないが、それでも苦戦を強いられる。

 そして入手する戦利品も扱えるものと扱えないものがあって、割にも合わない。

 ただ、戦うたびに何かが感覚がある。

 少しずつ、何かが完成していくような、そんな感覚だ。

 これは俺だけではなく、アルラウネの彼女もそんなようであった。

 戸惑いもある。

 だが、この感覚は好ましいものではあった。

 元々からそうあって然るべきものなのでは?、とさえ。

 森の中では決して味わうことのなかった、強い感覚。

 より高みへと、より強さへと至るためなら望もう。


 強く、強く。

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