作戦発表
私たちは立ったまま円状になり、そのまま作戦会議を始める。
「日課のランニング……まあ、行動パターンが分かってると、計画が立てやすい。そこを狙われたんだろうね」
言葉ちゃんの言ったことに、私たちは頷く。日課……日課のランニング……。今日は毎朝の習慣の話を聞くことが多いな……。
というかここ、外部にバレてはいけない場所だったはずでは。そんなところからランニングを始めても良いのだろうか。
……まあ、そのツッコミは後でいいか。
「車で連れて行かれてるって話だけど、僕も同意。更に僕からの見解を伝えると、絶対に盗難車。……だから、最近の車の盗難被害をデータベースで確認して、複数人乗せられそうな車をリストアップしよう。それで……カーラちゃん」
「……ん、何だ?」
話の途中、突然名前を呼ばれたことに、一瞬だけ彼女の反応が遅れる。
カーラさんはオレンジ色の髪を揺らしつつ、小さく首を傾げた。
「君、複数の異能力持ちなんだよね。……人の異能力の効力をUPさせられるような異能を持っている人格は……ある?」
「あるぜ!! それも丁度いい、それを持ってるのは、オレだ!!」
「……なら、話が早い」
カーラさんが胸を張り、そこを拳でドンッ! と叩く。その頼もしい様子に、言葉ちゃんは薄く微笑んだ。
「じゃ、尊さん」
「ぁっ、ぅぁいっ!?」
そして突然名前を呼ばれた大智さんはすぐに大きく肩を震わし、裏声で叫び、全身で反応を示す。
そのことに言葉ちゃんは、少しだけ苦笑いを浮かべた。だがすぐに真顔になって気を取り直すと、口を開く。
「尊さんの異能力は、地盤操作だったよね。……その異能力で、車の揺れとかを感知するのは、可能?」
「えっ、ええっ!? っどっ、え、や、やったこと、ない……」
「じゃあ、やってみて」
「ええええ!?」
「やったことないなら、出来るかもってことでしょ!?」
チャレンジチャレンジ!! と言葉ちゃんは両手で拳を作り、ニッと笑う。……その朗らかな表情に、大智さんのこわばった顔も、少なからず緩む。そして言葉ちゃんの真似をするように、両手で拳を作った。
……まあ、不安そうな表情は拭えていないけれど。
「操作できる範囲は、どれくらい? それなら分かるでしょ」
「ッ、ぇ、っと……その……た、確か、ッ、半径10キロ……くらい……? だったと……」
「え……めっちゃ広いじゃん!!」
「えっ!? そ、そうですかね……ぅ、で、でも、遠くに行けば行くほど、その、操作は不確定になって……ぇと、上手く、出来るかどうか……」
「それでもすごいよっ!! 自信持って!!」
そう言うと、言葉ちゃんは気さくに大智さんの肩を叩く。その叩く威力が強かったのか、それともただ単に驚いたのか、うっひゃぁ!? と、大智さんは大きく肩を震わした。……だけど頬を少し赤く染めていて、口元は緩んでいる。褒められたのが嬉しかったみたいだ。
そして大智さんを褒めちぎっていた言葉ちゃんは、一瞬で真顔に戻る。
「10キロくらいだと……一般的な車で大体20分くらい……犯行は、現時点で約15分前、スピードオーバーなんて目立つことはしない、と信じたい……まあ、カーラちゃんの強化があれば……どうにか……。うん、まだ十分間に合う!!」
言葉ちゃんは1人でブツブツと呟き、そうして考えをまとめていく。そして最終的に、パンッ!! と一度手を叩くと、部屋に大きな音を響かせた。
「カーラちゃんと尊さんは、地上に出て僕たちからの連絡を待って。それで連絡があり次第、指定された条件の車を尊さんの異能力で探してみる。カーラちゃんは異能力でそれを補佐。
灯子ちゃんは、僕と一緒にデータベースをさらう!!」
「おう!! 任せろ!!」
「がッ、がんばりましゅッ……!!」
「……了解しました」
言葉ちゃんの作戦発表を合図に、私たちは二手に分かれる。カーラさんと大智さんは、地上に出るための移動装置の方に。私と言葉ちゃんは、データベースのある部屋に。
ちら、と後ろを振り返る。部屋の隅で退屈そうに腕を組んでいる忍野さんは全てを聞いていたはずだし、こちらを見つめていたものの、特に何も言うことはなかった。
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