2

授業が終わり時計の針は4時を指している

日が沈みかけている放課後の教室で

真っ先に友達の雫と海に話しかける

落ちた葉が魚になったなんて興奮気味に話しかけるがもちろん2人は信じる筈もなく

呆れて溜息をつく

それでも信じてもらおうとする熱意に好奇心旺盛な海は興味を示したのか「なら今から見に行く?」と窓の外を指さした

もちろんこの目で見たモノを信じて貰えれば何でも良かった俺は早く行こうと言わんばかりに鞄を持ち手招きをしながら教室を出る

妙な嘘つくよなぁと雫に小言を言われるも

先程の光景が本当であってくれという高鳴る気持ちと、本当なら国際生物学賞物だ等と覚えたての言葉を使いたがる小学生のような馬鹿らしい考えさえ頭に浮かんだ


中庭に出ると夏には珍しく少し冷たい風が吹いていた

テンションの高い海は1人走り出し目を輝かせこちらを向く

「で、どれがその池?」

「そこの、でっかい木の下のやつ...」

中庭に聳え立つ自分たちよりも何倍も大きい背の“柳の木”を3人並んで見上げる

その下には1匹もいなかった

「....なんもおらんやん」

「やっぱ嘘やったんやぁ」

と疑いの目で見てくる2人を他所に俺は黙り込んで池を見つめた

嘘じゃない

俺はこの目ではっきりと木から落ちた葉っぱが魚になるのを見た

あれは幻覚か、いや、そんなわけはない

魚が跳ねる"ぽちゃん"と言う音まで

聞こえてきそうなくらい、鮮明にはっきりと

この目でそれを捕らえたのだ

でもその魚はそこにはいない

消えるのか、もしかして

「嘘じゃないって、ほんとに」

「...葉っぱが魚になったって言うんならよ、

木から葉っぱ毟りとってそれ池に落としてみりゃいいんちゃうん」

そういって雫は木を蹴りつける

落ちてきた葉っぱは数枚

池には1枚も落ちなかった

落ちた葉っぱを1枚拾い上げ

池に

沈めた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

木から落ちた魚 @yume_04

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る