3.お話

おおばあちゃんは美味しい蒸しパンを作ってくれた。

飾り気のない蒸しパンだけどどこか安心する味で舞歌は好きだった。

みんなで縁側に座り日向ぼっこしながらワイワイ食べた。おおばあちゃんはそんな私たちをニコニコしながら見ていた。

ふいに文乃がおおばあちゃんに

「おおばあちゃん。まえ、しょうがっこうにあがるときわたしたちにふしぎなお話をきかせてくれるって言ってなかった?わたしたちももうじきしょうがくせいになるからそのお話ききたい」

その話はみんなが気になっていた。今日はその話を聞いてみようという話になり、5人でおおばあちゃんの家にやってきたのだ。

そういえばその話を聞きに来たんだということをすっかり忘れてしまっていたことに今気が付いた舞歌は文乃はよく覚えていたなあと感心した。ほかの面々もそのことに今気が付いたというような顔をしていたのでみんな忘れていたんだと思った。でもさすが文乃だとも思った。

おおばあちゃんは文乃の顔を見つめて

「ああ、約束していたお話かい?そうだねぇ、文乃ちゃんはそんなに聞きたいのかい?」

「うん、ずっと気になってた。だから今日みんなでききに来たの。おしえておおばあちゃん、わたし気になってお母さんにきいてみたらそれはおおばあちゃんにちょくせつ聞きなさいって言われたのだからおしえて」

文乃は言った。

おおばあちゃんは文乃ジッと見つめながら、ふいにフッと笑った。

「分かったよ文乃ちゃん。お話ししよう」

文乃は満面の笑顔になって

「ありがとうおおばあちゃん」

するとおおばあちゃんは文乃以外の4人に向かって

「みんなはどうするかい?みんなで一緒にきかなくてもいいんだよ。違う日に聞いたっていいし聞かなくたっていい、もちろんもうちょっとしてから聞いてもいいんだよ。みんなそれぞれ『タイミング』が違うからね。これはそれぞれが決めることだよ」

おおばあちゃんの声はなぜか頭の中にすっと入ってきたような気がした。

シーン・・・。

少しの間沈黙が流れた。

舞歌はフッと答えを口走っていた。

「ききたい」

舞歌はちょっと自分にびっくりした。

舞歌の声を皮切りに美紅、百合花、夏南も「ききたい」と答えた。

おおばあちゃんはうなづいた。

「みんな同じタイミングとはすごいことだ。分かった。それじゃあ、お話をしよう。その前にちょっとお茶を用意しようかね。うまくしゃべれなくなっては元も子もないからね」

そういっておおばあちゃんはみんなにお茶を入れてくれた。

おおばあちゃんは入れたお茶を一口飲んで話し始めてくれた。私たちはドキドキしながら聞いた。

「この話はおばあちゃんが小さいころみんなと同じくらいだった時の話だ・・・」




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