第15話『難民の生活』
「そういえばカピトリヌスの難民のお母さんって、栄養状態が悪い状況で出産するから、お母さんも赤ちゃんも大変なんですってね」
クリオが話の流れを継いで言うと、ミルラが言った。
「あ! 動画で見たことあります。お乳が出なくて粉ミルクで看護師さんが育ててるとこ。赤ちゃんもやせ細ってて泣きたくなりました」
「衛生状態が悪いから、産褥熱に苦しむお母さんも多いんでしょ? それなのに赤ちゃんも亡くなる確率が高いし、女性は身も心もボロボロですよね」
メグが顔をしかめて言うと、パティが端的に言った。
「男が堪え性がないのよ」
その言葉を受けてトゥーラが言った。
「問題はそんなに単純じゃないのよ……ベースにあるのは貧困なの。貧しい国では、そもそもまともに仕事に就けている人が少なくて、子どもの時から劣悪な国営農場で下働きさせられたり、とにかく収入がなさすぎる。そういう人たちが大人になって結婚しても、カチカチの地面は耕しても豆くらいしか育たない。結局、子どもを働かせるのがいくらか収入を増やす手段で、教育も受けられずに朝から晩まで働きどおし。だから、たとえ赤ん坊のうちに死んでしまったとしても、子どもを作り続けるしかないのよ」
しくしくとミルラが泣き出した。涙ぐんでいるのはみんな同じだ。
「でも……もう少しの辛抱ですよね。世界の大変革が終わったら、そういう人たちはみんな虹球界に受け入れてもらえるんでしょ?」
メグが鼻をすすりながら言うと、オリーブが答えた。
「そうね……虹球界の受け入れ体制を整えているのは、降霊界の人たちだけど。彼らだって虹球界には往ったことがないんだから、衣食住が整うにはちょっと時間が必要かな……」
「各国の大使館が中心になって、難民の人たちに虹球界の存在を知らせたり、生産修法のレクチャーをしたりするのは、もう始まっていると聞いたわ」
「いくら栄養価が高いからって、レトルトパウチばっかりじゃ飽きますもんね」
トゥーラの言葉にパティは何度も頷いた。
「生産修法をレクチャーするのってどうなんでしょう? だって、イメージ力が基本ですよ。ましてや食べ物をイメージするのって、難しいんじゃないですか」
クリオが疑問を口にすると、それにはトゥーラが答えた。
「それがね、難民の人たちはとってもイメージ力がクリアなのだそうよ。イメージ力を養ってもらうための、動画を見ただけでも大喜びなのですって。もともと余計な雑念がないから、生命の樹の加護は受けやすいでしょ? 万世の秘法の指導員も驚くほどの上達ぶりで、修法作物もそれはそれは瑞々しいそうよ」
「すご――い!」
「どうせなら、その人たちに私の作った修法作物を食べてほしかったな。だって、因果界往きの悪党のためなんて、やる気なくしますよ!」
ミルラが怒り出すと、オリーブもトゥーラも吹き出した。
「悪党だって生まれた時から悪党じゃないわよ。それに、悪党の気持ちを理解するために、進んで悪党になる道を選んだ魂だっているでしょ。根っから悪い人なんていないわ。優しさを分けられる人には分けられるし、心の底にはピカピカの光が宿ってる。私たちがそれを信じなかったら世界の大変革は成功しないわ。理屈じゃなくて魂で理解しなくちゃね」
「はーい」
オリーブの励ましに、みんな優等生になって返事した。
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