第14話『関わる条件』
「面白れぇ世界もあったもんだ。野菜っこが手の中で作れるたぁ恐れ入った!」
あくまでもノリヒトは明るかった。出されたスイカをものすごい速さで食べる。
「おまえ……よく平気だな?」
トーマスが言うと、ノリヒトは笑った。
「なーに深刻になってんだ。すぐ帰してもらえるんだから問題ねぇじゃねぇか! ほれ、スイカなかなかうめぇぞ」
トーマスは頭を振った。
「こういう時、出された食べ物を食べると、帰してもらえなくなるって昔語りにあったぞ」
ルイが言うと、ノリヒトは豪快に言ってのけた。
「んじゃ、俺は手遅れだな。カッカッカ」
目の前の壁を次々と飛び越える。
「ご家族が心配しますから、すぐお帰ししますが……今日のことを忘れて口外せずに生活するか、ここと深く関わるかの選択肢があります。どうなさいますか?」
マルクが聞くと、ノリヒトは一も二もなく言った。
「俺は深く関わりたいねぇ。なんか面白そうじゃねぇか」
トーマスとルイは考え込んだ。
「ところで、こんなに野菜作って、何に備えてんだい? ここの野菜は流通に
乗らねぇんだろ?」
「はい―—でも、ここからは深く関わるとお約束いただかないとお話しできません」
「へぇ、ワクワクすんなぁ」
ノリヒトに引っ張られるように、トーマスとルイも了承する。
「仕方ない、家業があるから、それが今まで通りにこなせるって条件ならOKだ」
「同じく」
「わかりました――とりあえず、今日はここまでにしましょう。次回はいつがいいですか?」
三人は話し合って、一週間後と決めた。
「では、一週間後の風雷の八月鮮碧の二十日に、私たちのうち誰かがお迎えに参上します。夕方がいいでしょうか?」
「そうだな、農家仲間と飲みに行くと言えば、誰も疑わないだろう」
と、トーマスが言った。
「畏まりました。では、お送りしますので、ご自分の家か元いた田んぼを思い浮かべてください」
苦もなくいつもの風景を思い浮かべる三人。
気がつくと、メーテス郊外の自分たちの田んぼに立っていた。
辺りは薄闇が広がり、田んぼを生温い風が撫でていった――。
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