第13話『噂話』

「知識の上なら、アロンは修法者だな」

 タイラーが言って、ルイスが二度頷く。

「そうですね――ランスさんと言いマルクさんと言い……鳥俯瞰者の域を軽く超えてますよね」

「アロンなんか一つ単語を言えば芋づる式に知識引き出せるもんね」

 みんなが持ち上げるので、警戒するアロン。

「持ち上げといて……落とす気じゃないだろうな?」

「いえいえアロン先生、その椅子に鎮座ましましてください。我々、崇め奉りますんで」

「南無南無……」

 手を合わせるナタルにアロンがビシッと突っ込む。

「拝むな! そうくると思ったんだ」

「そんな謙遜しなくてもいいじゃない。アロンの実力はここにいる誰もが認めてるんだし……」

 オリーブの言葉にアロンが反論した。

「上には上がいるんだよ。それに本物の修法者っていうならレンナちゃんのことを言うんだ」

 全員の脳裏にレンナの笑顔が浮かんだ。

「レンナちゃんかぁ……ああいう人を才媛っていうのよね。おまけにいつ会ってもハッピーになれちゃうし、純粋だし、仕事は如才ないし。完全無欠よ? ああいう人もなかなかいないわね」

 リサが溜め息をついた。

「今頃、何してるかなぁ――?」

「レンナちゃん? 彼女なら運営してる下宿で毎日家事に勤しんでるわよ」

 オリーブは事もなげに言った。タイラーが問う。

「連絡取ったのか?」

「うん、定期連絡。レンナちゃんがNWSのことも心配してるから、私がちょこっと状況知らせてるの」

「家事しかしてないのか?」

「あ、あとはね、サクシード君の勉強と訓練の手伝いだって。彼はもう方向者の技術を習得してるそうよ。それから、万武の赤もレンナちゃんから指導してもらってるんだって」

「万武の赤なのか、サクシードは……」

「そうらしいわよ……血が騒ぐ?」

「いや、代表には敵わないからな」

「ふーん」

 オリーブとタイラーに暗雲が垂れ込める。

「あんな重要な役に据えられちゃって、不自由してないのかしら?」

 リサが言うと、トゥーラが答えた。

「レンナちゃんは望み通りの生活をしているわ。気を紛らすこともあるようだし、心配いらないわ」

「さすがNWSはお膝元ねぇ。私なんか全然会わなくなっちゃったから、情報も入ってこないし」

「初仕事の時、レンナちゃんと同じ班になったのよね?」

 トゥーラが聞くと、リサが夢見るように言った。

「すごかったわよー! かわいい声で「クリスタリゼイション!」って叫ぶところなんか、ドキドキの魔法少女だったんだから」

「へぇ」

 アロンがニヤニヤ笑う。

「あら、アロン。かなりストライクな感じ?」

「いや、エリック思い出してた。あいつどの辺でレンナちゃんに惚れたのかなぁと思って」

「どの辺も何も一目惚れだよ。見た途端「エラくかわいくね⁈」が第一声」

 ポールが過去をばらす。

「うっそー! ロリコンまっしぐらじゃない。恋愛遍歴貧しそうだもんね」

 リサが驚いてから、すかさずコケにする。

「でも、あいつが告った時感動しなかったか?」

「したした! そのあと本気で修法行に入っちゃって、ちょっと見直したわよ」

 アロンたちがエリックの話で盛り上がるのを、オリーブが複雑な気持ちで聞いている。

 タイラーがその様子を見て気遣う。

「……大丈夫か?」

「——なにが?」

 声が据わってる。

「いや、別に」

 触らぬ神に祟りなしである。

















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