第13話『NWSの知恵袋』

「シャドウインアースの説明も聞くか?」

「お願いしまーす」

「①地と闇の精霊界の加護を得る②民芸品の材料を過去に遡って映像化する

③テクスチャブレイン3Dサーチにデータ入力する④再現、以上」

 極力説明を省いたので、流れは掴めたが中身がさっぱりわからない。

「民芸品を材料にする前の状態まで遡って……どうすんの?」

 ポールが眉をしかめて言った。

「だーかーらー、民芸品の多くは木や藁や蔦などの植物でできたものだ。そうだろ?」

「うんうん」

「この修法は民芸品の材料になる前の状態が映像でわかる。それで何が可能になる?」

「えーっと、テクスチャに添付するデータが増える?」

 オリーブが意図をざっくばらんに読んだ。

「その通り。データが増えれば、テクスチャの再現力は?」

「上がるってこと?」

「そう、他には?」

「材料の来歴情報も追加できる」

 トゥーラの言葉に、アロンが頷く。

「そうだ。例えば民芸品が木でできた物なら、樹齢とか採取地とか土の組成。あるいは病歴とか。もっと言えば天候とか品質とか収穫量とか、情報で総当たりできるということだな」

「へぇ……」

 これには全員が感心した。

「これが金属でも同じだ。入口が違うけどな。金属の場合はミネラルキングダムフロー鉱物界の流れを使う。これも金属の組成を調べれば、どの年代のどの採取地のどの地層から掘削されたか特定できる。ちょっと違うのはまったく同じ条件の金属があれば、再現が可能なことだな。もっとも、資料の保存状態なら、そうそう劣化を招くこともないはずなんだけどな。情報ないけど、空調がイカれたか火事でもあったんじゃないか」

 しん、と静まり返る。アロンがふと全員を見渡す。

「? どうした」

 ポールが言う。

「改めて思うんだけど、やっぱりアロンってすごいよね。よく勉強してる。修法だけじゃなくて、それにまつわる他の知識まで網羅してるもんな。しかも偏ってないし。その頭の中、どうなってんの?」

「別に……何度も言うようだけど、勉強が好きなだけだよ」

「いやぁ、俺なんかとは全然違うよ。いつかも全面的にフォローしてもらってさ、無理なく仕事できた時があったんだ。惜しげもなく助けてもらったから感謝してるんだ……」

「NWSの知恵袋ね」

 トゥーラが言うので、アロンは一歩引いた。

「それはトゥーラだって……」

「私は知らないことはまったく知らないもの……それに、予習が効かない話には加われないわ」

「えっ、トゥーラ予習なんかしてんの?」

 ポールに聞かれて、トゥーラは渋々頷いた。

「まったく知らないよりは理解しやすいと思って――」

「えらっ! 君も偉いよ」

 ポールは恋人の努力に舌を巻いた。

















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