第10話『トゥーラの告白』
「……ホントだ」
この場を包む半透明の膜が、槍のように突き刺さるテレパスを弾き返している。
「トゥーラにしては強硬だね」
「誤魔化さないで!」
「はい」
プイッと横を向いてトゥーラは言った。
「あまり安請け合いしすぎるのがいけないのよ。どうしてこんなになるまで私たちに黙っていたの?」
「いやぁ、それは……」
口ごもるポールにトゥーラは容赦ない。
「みんなに英雄扱いされるのが嬉しいから? それで単独行動に走ったの?」
「ち、違うよ」
「じゃあなに?」
一拍置いてポールは言った。
「——俺はさ、NWS命だよ。自己チューかもしれないけど、このままがいいんだ。それが俺のせいでみんなが不自由な思いしてさ。そんなのやりきれないよ。俺でよけりゃ防波堤にもなるよ」
「無茶だわ、一人で」
「そうは言うけどさぁ」
「私たちは修法者じゃないわ。因果界でちょっとした技術が使えるだけの労働者だわ。四六時中バリアの中にいられるだけの能力もないし、発言権も低いのよ。それでも、お互いの領分を守るからこそのありふれた立場じゃないの。それを超えようと思ったら、大勢に対する言葉をしっかり持って、周囲のサポートもちゃんと得ないと。それがなかったら激流の中の木の葉同然よ」
ポロポロと涙が零れ落ちる。ポールはうろたえた。
「ご、ごめん。俺が全面的に悪かった! みんなに事情をちゃんと話すから。ね、それで勘弁して」
「私にガード役を頼みなさい」
「……へ?」
トゥーラの意外な言葉に虚を突かれるポール。
「私も今のままのNWSでいいというのに同感よ。大事な人が危機に曝されているのに、おっとり構えるような間抜けじゃないわ。私があなたを守ってあげる」
「えっと、それはどういう……」
言われたことがわからなくて困惑するポール。
「鈍いのね――」
トゥーラはコホンと咳払いしてから、堂々と言った。
「NWSのリーダーになってからずっと見ていたわ。見直したり、時にはがっかりもさせられたけど。あなたはいつも人のために行動できる人よ。そういうあなたを尊敬するわ。傍にいたいと思ったの。いけない?」
「あの、つまり俺のこと――」
こくんと頷き顔を赤らめるトゥーラ。
「好きなの。付き合ってください」
ポールの頭から靄が消し飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます