第9話『ワンネス』

「うん、今ポール君が言ったように、心は一つという立場が今後を左右するキーワードになる」

「と仰いますと?」

「君たちもマルク君を通じて聞いていると思うが。生命の樹はレンナこと万世の魔女に、天窓の鍵を使って心を導管とし、名のない力を生命の樹へ通すという大役を任せた。しかし、それは内容を初めて聞いた者が震撼を覚えずにはいられない過酷な試練だ。万世の秘法の本部では、本当に彼女一人に任せるしかないのか、という協議を続けてきた。その答えが、今朝のあの夢だ」

「えっ⁈」

 ざわめく一同。だが、どういうことなのか、わかるものは一人もいなかった。

「レンナと言えど、一人の人間だ。生まれた理由から体の作りも、そして意識も源を一つにしている」

 トゥーラが溜めて言った。

「——それでは、生命の樹はレンナちゃんだけでなく、人間の集合的無意識を利用して、彼女の負担の軽減を図るつもりだということですか?」

「す、すごい、そんなことができるんですか?」

 オリーブが驚くと、ドギュストが答えた。

「そう、つまり集合的無意識は心の領域の底だ。これはレンナもまた同じ。そこを通すことで、名のない力の威力を減殺させる。君たちは先だって、人魚から童話の里の本の強化・維持することについて依頼されただろう?」

「は、はい」

 畏まるオリーブ。

「童話もまた夢の一部。集合的無意識に繋がるシンボルだ。彼らも力を貸してくれる。一定数に達したとはいえ、人間の何割かの心と六芒宇宙の住民が一致団結して事に当たれば、越えられない障壁はない!」

 力強く断言するドギュスト部長にアロンが問う。

「具体的に我々はどうすればいいんですか?」

「夢にピントを合わせるんだ。今朝見た夢をイメージして焦点を絞ればいい。レンナが一人で心を導管にして名のない力を通すのと違って、集合的無意識を通過させれば、多くの者が名のない力に関与できる。そう生命の樹がメッセージしてきていると本部では見ている」

「木で言うところの導管一本だけじゃなくて、維管束に俺たちがなるんですね」

 タイラーが喩えを口にすると、ドギュスト部長は頷いた。

「その通り。あの夢で僕たちは、ある一定の距離から生命の樹に近づくことができなかったろう? 即ち、レンナと同じことは求められてない。しかし、夢で繋がった我々に可能なことは、心を繋ぐことでレンナの心を保護する、幹にもなれることを意味している」

「ワンネス……」

「そう、ワンネス。我々は一つであるという原点回帰が生命の樹に求められているすべてだ」

「おおーっ!!」

 歓声と拍手が上がった。

 生命の樹の無情をなじったこともあった。だが、話の通じない相手ではないのだ。

 そもそも、生き物はその創造も含めて、生命の樹の下に一つだ、とも言えた。

















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