第12話

 間違ってないよね? といつも心の中に浮かぶのだ。

 柔らかなベットの上で目を閉じたまま、重たい体を伸ばして、差し込む日差しに眉をしかめる。

 制服を着たまま眠ってしまっていた。シワだらけのシャツとプリーツスカートを想像してげんなりする。


「ん〜〜〜」


 勢いづけて跳ね上がってベットに座る。目はまだ閉じたままだ。


 ――す、好き?? わ、わかんないよ、そういう、の……。で、でも、たぶん、ち、ちが、違うと思う……。


 しどろもどろな返答にまどかはあははと笑ったあとに、意味深な笑みを浮かべた。うん、そっかとつぶやいて、舞さんかわいいねと抱き着かれた。

 ヒッという悲鳴を上げて、まどかを突き飛ばし、荷物をわしづかみにして帰ってきたのである。


 眉を寄せ、昨日の光景を振り払うように頭を振る。視界は暗いまま、ボタンを外し、スカートのファスナーを下ろして、よたよた歩きながら舞はドアに頭をぶつけた。


「う~~~~」

「……お嬢様」


 聞きなれた声が頭上からする。落ちついた声がまどかの鼓膜を揺さぶる。


「私、今日は、会いたくないわ」


 そう口にすれば、すぐに彼女は音もたてずにドアを開けて、でていってしまう。


――いつもいつもいつも、私は間違っている。


「いかないでよぉ……」


 つぶやいても、それが彼女の耳に届くことはない。


「あすちゃん……」

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