第13話 浴衣選び

 放課後、明日香と舞は百貨店で浴衣をみていた。色とりどりの浴衣がずらりと並び、その一つ一つを吟味しながら、舞は顔を輝かせている。


「……これ! かわいい!!」


 藤色の朝顔が白地を華やかに彩った浴衣を手に取った。喜色満面の笑みで選び取った浴衣を舞は明日香にどうかな? とみせる。


「いいんじゃない?」

「な、なげやり……」


 明日香の好きなの選びなよ、私には関係ないしといいたげな態度に少ししょぼくれる。

 そんな舞の様子を見かねて、明日香が「こっちとかどう?」と別の浴衣を舞の体の前にあてる。


「これもかわいいね!」


 黒地に鮮やかな金魚が映えている一枚を手に取る。


「うーん、どれも可愛すぎて選べないよー」

「ほしいのぜんぶ買えばいいじゃない」

「うわぁ……。あすちゃんは、なんにも、わかってない……」


 明日香の豪快な一言。たしかに買おうと思えば買える。しかし、なんと情緒のない発言だろうか。


「たった一つを選ぶことを楽しみたいんだよぉ」

「しかたないわね」


 明日香は軽く辺りを見回す。それから、はたと一点を見つめる。


「舞、これにして」


 手に取った浴衣は大輪のひまわりが咲いていた。紺色の生地に、濃淡のある淡い色彩のひまわりが描かれている。


「あすちゃん、これすっごいかわいいね!」


 これにする! と浴衣を体に当てて、似合う? 似合う? と舞が笑う。


「一番似合ってる」

「へへっ」


 舞は嬉しさと照れが混ざったようにそういうと、ぎゅっと浴衣を抱きしめた。


「あすちゃん、夏祭りいこーね」

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けだるいふたり ポン吉 @sakana_kumo

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