第10話 堕ちていくギルマス
「くたばれクソガキぃ!」
「ほい」
俺とギルマスの間の地面を収納した。
ギルマスは深さ100メートルの穴の中に消えた。
穴の中に清掃クエストの時に収納した汚物セットを取り出した。
地面を戻した。
ただし、ギルマスの厚みの分、地面がちょっと盛り上がっている。
時が止まったように会場が静まり返ること10秒。俺は一言。
「レフェリー、俺の勝ちでいいですか?」
ポカーンとしていた受付嬢さんは、勝機を取り戻したようにハッとしてから悲鳴を上げた。
「クク、クジョウさんの勝利です! それより早くギルマスを助けてください! このままじゃ死んじゃいますぅ!」
「わかった」
俺はまた地面を収納した。
汚物は収納しなかった。
むしろあらたに取り出した。
「クゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウジョォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
穴の底からお産途中のバケモノのような声がしたので、怖くなった俺はまた穴を埋めた。
ギルマスと汚物の厚みの分、地面が上にはみ出しているのがシュールだった。
「クジョウさん!」
受付嬢さんに肩をゆすられて、俺はまた地面を収納する。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!」
今度は五十音では表現できない怒りの咆哮が上がった。
受付嬢さんが俺の肩を掴んで顔を横に振った。
ちっ。
地獄の亡者が猛スピードで穴を登って来る気配がしたので、俺はその場から逃げ出した。リュールの元へ。
「リュールー、俺合格したぜ」
「凄いじゃないか。今まで何人もの昇格試験を見てきたけど、あんな勝ち方をする男は初めてだよ」
リュールが白い歯を見せて笑ってくれると、俺も嬉しかった。
「イヤァ! ギルマス臭いぃいいい!」
背後から、受付嬢さんの悲鳴と打撃音、落下音と激突音がしたけど俺は悪くないよね?
俺はかつてない達成感と多幸感で胸がいっぱいだった。
――あぁ、DQN王とクズ神官も汚物穴に叩き込みたい。なんて素敵な光景だろう。
「ところでさっきのはアイテムボックスだよね? まさか収納スキルを戦闘に使うとは思わなかったよ」
「どんな能力も使い方次第だよ。俺の地元じゃ最弱能力で世界最強系の物語なんて珍しくもないしな」
「そうなんだ? それより、昇格祝いにご飯でも食べに行こうか? ボクがおごるよ」
「マジで? やったね」
ソロ冒険者なんて聞いていたから孤高の人なのかと思ったら、リュールは意外ほどにコミュ力が高かった。
ちょっと驚きだ。
「リュール、もしかして昔パーティーメンバー同士で恋愛系問題とかあった?」
「え? なんで知っているの?」
やっぱりかと、俺は頭を抱えたくなった。
「いやほら、リュールって凄い美人で性格もいいのにソロ冒険者だから、てっきり孤高の人なのかと思ったら社交的だし。だからそういうことなのかなぁって」
俺の推理に、リュールは気恥ずかしそうに頬をかいた。可愛い。
「まぁ、ね。女子と組んだら妬まれるし男子と組んだら狙われるし、まぁこれも美人の宿命かな」
照れながらも自分で自分を美人と言えてしまう神経の太さが可愛い。
「あと実際のところ、ボクぐらい強い人がなかなかいないってのもあるんだけどね」
「あ~」
凄く納得した。
「そんなことより、早くご飯、食べに行こ。このギルド以外で」
ギルマスから離れたかった俺は、彼女の言葉に大きく頷いて一緒に空き地の出口を目指した。
「クゥウウウウウウウウウウウウウウウウううううううウウジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「いやぁああああ! 臭い汚いぃいいいい!」
・第一部完
・人気になったら本格連載!
勝手に異世界召喚されて捨てられたので課金スキルで手にしたアイテムボックスSで復讐Death(です)! 鏡銀鉢 @kagamiginpachi
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