葉加瀬羽風の研究レポート④

 ロジーからキャンプに誘われた。


 まさかロジーが自分で旅の計画をして誘ってくるとは。エリカに元気になってもらうためらしい。わたしは快く了承した。それでエリカが、またいつもの明るい元気なエリカに戻ってくれるのなら、うれしい。


 ロジーにも、どうやら自我が芽生えたようだ。

 わたしが予想していたよりも、早く自身の気持ちと向き合い、行動するようになっていた。これはロジーの周りの環境が大いに関係してあるであろう。


 やはり変わらず、エリカの存在は大きいと思う。ロジーもはっきりと大切な友人だと言っていたし……やはりすごいなエリカは。あの無邪気さは尊敬に値する。


 …………。


 いや、もしかしたら、エリカだけの存在だけではないのかもしれない。もう一人、重大な人物が隠れていたのだった。


 ――ロジーの恋する相手だ。


 …………。


 誰だ? エリカに恋愛相談するくらいだ。それはもう本気で『好き』だと自覚している人物に違いないだろう。


 しかし、ロジーの交友関係はわたしとエリカくらいしかいないものだが……。まさか、配達員のお兄さんだったり……!? 可能性はゼロじゃない。それに、一人で買い物にだって行っている。出かけ先で、思わぬ出会いがあったのかも……。


 ……いかん。こんなことを深く考えてはダメだ。エリカにも言われただろう。……いくらわたしがロジーを製作したとはいえ、ロジーのプライバシーに踏み込んでいいわけじゃない。本当に、あのときのことは反省だ。


 こんな態度が見え透いているのだとすれば、わたしはロジーに、一生好かれることはないだろう。


 そもそも、わたしは……。


 …………。


 いや、済んだことをまた掘り返して、書くのはよそう。


 余計な話を書いてしまったが、そうそう、ロジーの自我について話を戻そう。


 エリカに何かしてあげたいと思いやりを持つロジーに、わたしが「エリカに対して何もするなと言ったらどうするのか?」と質問を投げかけたとき、今までだったらわたしに従うと答えたはずのロジーが、それをはっきりと拒否した。


 ロジー自身の意志で、行動を決定づけたことに非常に驚いた。


 これは、アンドロイドは人間に成り代わることができると、ほとんど証明できたことに違いない。


 素直に喜びと、希望を持ってしまった。


 きっとわたしは、今もどこかで囚われつづけているのだろう。こんな研究レポートを、しみったらしく残しているのが、何よりの証拠だ。


 ロジーはあんなに自分と向き合って成長しているのに、わたしときたら……。


 何を弱気な文を書き連ねているのだろうか。わたしは、あのとき決別したじゃないか。


 日々ロジーと過ごして、やっと新たな気持ちと出会えたじゃないか。


 確信、したんだ。


 わたしは、藍野ロジーが好きなんだ。

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