二刀流

 もしかすると自分は、おごっていたのかもしれない。いつきはそう思った。


 幸人ゆきとと出会って、確かに自分は変わった。


 卑屈さが薄くなった。毎日が楽しくなった。


 しかし、それは精神的な変化だ。いくら精神がマッチョになったところで、肉体までマッチョになるわけではないのだ。




 ——佐竹さたけから強烈な一発目をもらった瞬間、樹はそんな当たり前の事実を思い出した。

 



「っぐぅ……!!」


 全身の骨格に染み入るようなインパクトを頬で感じながら、樹は路上に倒れた。


 コンクリートに背中を強打した痛みを受けても、微塵も痛いと感じなかった。


 それほどまでに、今のパンチの威力は恐ろしいものだった。


 ——入学式に食らった、佐竹のパンチの重々しさが、脳裏でフラッシュバックされる。


 拳骨の硬さ、

 その硬さが高速で頬に衝突した時の鈍い激痛、

 嬉々として暴力を振るってくる佐竹のイヤな笑み、

 見下ろして嘲笑あざわらう佐竹の取り巻き達……


「あ、あ……あぁ……!!」


 


 今の樹の心身を支えていた「柱」のようなものが、あっけなく砕けるのをイメージした。


 四肢が震える。筋肉が震える。唇が震える。歯が震える。眼球が震える。


 震えた眼球から、涙がこぼれてくる。


 ゆっくり歩み寄ってくる佐竹。その大柄な図体が、雲に届く巨人のように見えた。


「ひっ!!」


 生娘じみた声を喉の奥から響かせる樹。


 許しを乞う言葉が口から出そうになる。しかし喉が硬直してうまく動かない。それは幸か不幸か。


 そんな恐怖に縛られた樹を見て、佐竹は満足そうにニヤついた。


「そうだよ。がいい。お前にはそのビクついてるツラが一番よく似合ってるぜ? 


 イヌッコロ。


 そうだ。自分は本来、そう呼ばれる側の人間だったはずだ。


 世の中には「使う者」と「使われる者」の二種類の人間がいる。自分は後者だ。


 羊のくせに、自分は今まで虎の夢を見ていた。


 一人じゃこののくせに。


 ……やはり、分不相応な夢は見るものではないのだ。


 羊は羊らしく、虎に食われていればいい。


 自分はそういう星のもとに、生まれてしまったのだから——



 



 ——いっちゃん。僕達は「二刀流」だ。





 その時、声が聞こえた。


 幸人の声。


 ここに幸人はいない。


 これは記憶だ。過去に、幸人に言われた言葉の記憶。


 入学二日目の登校日。佐竹に二人で刃向かった時の言葉。


 今の自分達は「二刀流」なのだと。互いが互いを助け、補い合う関係だと。二人で一人の剣士なのだと。


 こんな自分を、幸人は片腕として認めてくれたのだ。




 そう——こんな情けない自分を。


 


 震えが、消えた。


 ……そうだ。何をイモ引いてんだ俺は。たった一発殴られた程度で。


 俺とユキは「二刀流」なんだ。


 どちらか片方が動かなきゃ、二刀の意味がねーだろうが。


 ユキはこいつらの企みを全く知らない。……


 今、あいつという「剣」を動かせるのは、俺という「剣」だけだ。


 立て! 加藤かとういつき


 お前が始めるんだ!


 俺達っていう「二刀流」を!


「っく…………ぬぅぅぅぅおおおおっ!!」


 重々しくなっていた体を、渾身の気合いで強引に起き上がらせた。


 立てた。


 立つことができた。


 上々だ。


 佐竹に殴られて、一人で立つことができたのだから。


 見ろ。佐竹のあの驚き顔。


 俺は立っただけだぜ? 


 それだけであんな顔だ。


 小物だ。


 ——こんな奴、俺でもどうにかできる。してみせる。


 ひとりでに破顔した樹の表情に、佐竹の驚愕の表情がさっと怒りの朱に塗り潰された。


「何が可笑しいんだよ、このイヌッコロがぁぁ!!」


 堅く右拳を握り締め、突進に任せてそれを振るってきた。


 そう。「振るってきた」のだ。


 「突き出した」のではなく「振るってきた」……それらは同じようで全く違う。前者は鋭く、後者は鈍い。


 今まで分からなかったそれらの違いが視認できるほど、今の樹は落ち着いていた。


 とはいえ、それに気づいた時には、回避不可能な位置まで拳が迫っていた。


 避けられない。二発目を喰らう。でも、


 頬に重みが炸裂した。筋肉と図体の重さにモノを言わせた一拳。


 痛い。痛すぎる。だけど——耐えた。全気力をもって意識を正常に保ち続ける。


 自分へ向けて伸ばされた佐竹の右腕を、自身の両腕で抱きかかえて捕まえた。


「なっ……テメ、離せっ……!?」


 佐竹はやや声に狼狽を含ませながら、右腕を引き戻そうと力を込める。これから、すぐに左手で殴ってくるだろう。

 

 樹は高速で思考を働かせていた。——どうする? これからどうやって攻めればいい? 蹴りか? パンチか? いや、どっちも俺じゃ大して威力を与えられない……決め手級なんて欲張りは言わないけど、せめて痛々しい攻撃がしたい。


 こんな時、幸人ならどうする? 彼は、自分が非力な事を受け入れ、よく理解している。その上で立ち回っている。


 この状態の自分にできる、最高の攻撃? それは——


「ああああああああああああああああああ!?」


 佐竹の絶叫が、夜の通りに反響した。


 その理由は、樹が佐竹の右腕にからだ。


 正直、佐竹の腕など噛んでいて気分の良いものではないし、格好が良いとは言えないが、効果的だった。……カッコよさなんて知るか。ユキならこうするはずだ。


 これからどうする? 考えろ。佐竹を見て考えろ。手足をバタつかせながら絶叫している佐竹を。


 


「ふごぉ!?」


 だから、思いっきり蹴り上げた。


 どんなにガタイが良くても、ココだけは鍛えようがない。


 これも、幸人が教えてくれたことだ。


 がくっ、と膝が沈み、佐竹の姿勢が前のめりに崩れる。


 ちょうど良い位置に来た顔面に、樹は気がつくと膝を叩き込んでいた。


「か……!?」


 大きくのけ反る佐竹。


 数珠のように続く自分の攻撃に、樹は清々しさすら感じていた。


 そうか。ただ闇雲に殴ったり蹴ったりするんじゃない。


 一つ一つの攻めに、意味がある。


 一つの攻めは、相手を痛めつけるだけでなく、次の一つへ繋げるための伏線なのだ。


 幸人は、それをわきまえていたのだ。


 ——お前、やっぱりすげーよ。ユキ。


 最も頼もしい友人の顔を思い浮かべながら、樹は握った拳を佐竹へ叩き込もうとしたが、


「犬っ……コロがぁぁぁぁぁ!!」


 怒気のこもった佐竹の前蹴りを、胴体にモロに喰らってしまった。


「あ——」


 鈍く、気持ち悪い痛みが体を貫く。大きく吹っ飛ばされ、転がって、うずくまった体勢で止まる。


「っ……がはっ、ごほっごほっ!! げほげほっ……!!」


 体の中身をひねり出すような激しい咳を繰り返す。口ににがじょっぱい味が広がる。涙がじんわり浮かび上がる。

 

 パンチだけでなく、蹴りも重い。確か格闘技じゃ、前蹴りは簡単だけど結構重要な技だったはずだ。格闘技経験者の佐竹がそれを鍛えていないわけがない。


 しかし、


「テメェぇぇぇ…………犬の分際で……よくも、俺を、俺を何度も殴り腐ってぇっっ……!!」


 自分の繰り出した一発一発は、佐竹に確実に効いている。鼻血を垂らしながらよろよろと近づいてくる佐竹の姿を見て、それを実感する。

 

 おそらく、重たいのをあと一発食らえば勝てる。今まで「やられる側」ばかりだった自分だからこそそれが分かった。


 だけど、限界が近いのはこちらも同じ。


 おそらく、次がラストチャンスだ。


 ——次で決めないと、俺の負けだ。


 何度も説明するが、樹には決め手となるインパクトを出せるだけの力が無い。どうしたってパワーじゃ佐竹に劣る。


 いや、出せたところで、自分は佐竹よりも手足のリーチが短い。こっちのパンチが当たるよりも先に佐竹のパンチや蹴りでストッピングされる。


 であれば、答えは一つ。


(「頭突き」か……)


 そう。幸人が佐竹を倒した決定的な攻撃。


 頭というのは、重たいらしい。四キロくらいあるらしい。それをぶつけるのだ。まさに人体の鈍器扱い。


 自分の頭だって、同じ重さだ。幸人と同じことができるはずだ。


 でも、佐竹がそう簡単に近づくことを許してくれるだろうか? 無理だ。馬鹿正直に突進したところで、間近に迫る前にパンチで迎え打たれることは目に見えている。


(くそっ……もし、あいつが、近づけるのに…………でも、エスパーでもない俺に、そんなことが事前に読めるわけが——)

 

 そこで、電撃的に名案が浮かんだ。


 確かに、相手の一手先の攻撃を読むなんて漫画じみたことは、樹にはとてもできない。合気道の創始者は、銃弾も避けられるほどの驚異的な先読みが出来たそうだが。


 でも、ようは「相手が次にどう攻めてくるのか」が分かっていればいいのだ。


 必ずしも、


 「してほしい攻撃」をするように、相手を誘導すればいいだけなのだから。


「——ははっ! 佐竹よぉ、そういやお前、最近そういうみっともないザマ見せることが多くなったよなぁ?」 


 樹はことさらに笑い、煽るようにそう告げた。


 それを聞いた佐竹は、額に青筋を立てた。


「んだとぉ……!?」


「何凄んでんだよ? んな間抜けなツラで凄まれても怖くねーっつーの。もうテメーが見かけ倒しのデクノボーだって事は、承知してんだよ。ユキや桔梗さん相手ならまだしも、俺一人なんかにそんなザマ晒してんだからさぁ」


 ぎりりりっ、という佐竹の歯ぎしりが聞こえてきた気がした。それくらい爆発寸前の様子だった。


「こっのっ……犬がぁぁぁぁっ…………!!」


「犬はお互い様だろうがよ。お前だって、武陣会の威光にシッポ振って付き従ってる犬じゃねーか。犬は犬同士、仲良くじゃれ合おうや。……ほぉらほぉら! 早く出してみろよ、テメーのヘロヘロをよ! どうせ俺には効きゃしねーけど? ははははは! バーカ! イッヌ!」


「があああああああああ!!」


 爆発した。


 猛烈な勢いで突っ込んでくる佐竹。


 自分の腕のリーチ内に樹を収めた途端、佐竹が繰り出してきたのは——右拳によるストレートだった。


 。挑発に乗ってくれた。


 狙い通りの攻撃を出してくれたのなら、どれほど重い一撃でも、さほど怖くはない。


 樹は体の中心に絞り込むイメージで、全身を小さく縮こませた。


 拳が突き進んでくる。しかし馬鹿正直なその真っ直ぐな軌道のパンチを、縮こまった樹は右へ小さく動くだけで避けられた。左耳のすぐ側を通過し、真後ろへ飛ぶ。


 佐竹の突進の勢いは、まだ残っている。


 その突進の勢いによって佐竹の顔面が来る未来の位置に、樹は自分の額をあらかじめ移動させる。


 間近まで佐竹の顔面が来た瞬間、




 思いっきり地面を蹴って、額からぶち当たった。




「ご——」


 樹の脚力に加え、突進してきた佐竹自身の勢い。


 カウンターパンチの要領で額という硬い部位が直撃して、痛くないわけがなかった。


 佐竹は鼻血を散らしながら身を弾ませた。


 夜空を見上げ、仰向けに倒れた。

 

「ってぇっ……!」


 無論、樹も痛かった。ガリガリ君を一気食いした時みたいに頭がズキズキする。

 

 しかし——佐竹は倒れたまま、立ち上がらなかった。鼻血をこんこんと流しながら、痛々しそうにうめき声をもらすだけだ。もう、戦意を失っている。


 勝ったのだ。


 自分が。


 佐竹に。


 猛烈に勝ちどきを上げたい衝動にかられたが、足元がふらつく。


 どうやら、無理をしたようだ。安心した瞬間に、一気に疲れが襲ってきた。


 でも、まだ座り込むわけにはいかない。


 そう——


「へぇ。やるじゃないの。お前、見た目に似合わず根性あるじゃんよ」


 王龍俊おうたつとし


 今回の汚い陰謀をウラで操っているギャングのボス。


 そいつは今、十メートルくらい離れた位置から、薄笑いを浮かべながら自分を見ている。 


 佐竹がへーこらしていた所から見ても分かる。……。まして、こんなフラフラな自分ではなおのこと。


 であれば、どうすればいい?


 ……そもそも、この闘いの目的は何だ? 


 決まっている。幸人にこの男の企みを録音したデータを送りつけてやることだ。


 であれば、わざわざ殴り合う必要など無い。とっとと目的を達成すればいいだけだ。


 逃げながらスマホを操作しよう——そう思ってきびすを返そうとした瞬間、龍俊の顔が視界で一気に大きくなった。


「くっ!?」


 樹は気負けしそうになるのを堪え、右拳で迎え打とうとした。


 しかし、それが振り出されるよりも疾く、硬い衝撃が数回顔面で爆ぜた。


「か……!?」


 樹は痛みよりも、戸惑いを強く覚えた。……何だ、いまの。何回打たれた? 五回くらいか? 、それだけの数の衝撃を叩き込まれたのだ。


 その強烈な早業によって尻餅を付きそうになるのを、渾身の脚力で耐える。

 

 しかし、耐えたところで、無駄だった。


「ほら、ったどー」

 

 おどけた態度で龍俊が見せびらかしたモノは、樹のスマホだった。


 いつの間に! まさか、さっきの一瞬で!?


「か、返せ——ご!?」


 鼻っ面に衝撃が弾けた。パンチだ。片腕が閃いていたのがほんのちょっと見えた。しかし、過程はまったく見えなかった。


 それからも諦めず近づこうとする。


 が、やはり高速パンチで弾かれてしまう。


「たしかにお前さんはよくやったよ、加藤樹。だが——


 今にも倒れそうな樹に、龍俊はねぎらうような、からかうような声で言って聞かせた。奪ったスマホを片手で見せびらかしながら。


「スマホは奪い返せなかったけど、因縁のある奴をケンカで殴り倒せたからヨシ——そんなQキューの精神勝利法みてーな肯定的捉え方をすんのは自由だがよ、やっぱりお前は負けたんだ。こいつが俺の手に渡った以上、もう終わりだ。月波幸人つきなみゆきとは動かねぇ。『雷夫ライオット』も終わりだ。月波幸人のヌマ高での威光を下支えしている『雷夫ライオット』さえ消えれば、月波幸人もヌマ高での立場を失うだろう。俺が『アタマ』になるための障害が、一つ消えるわけだ」


 龍俊はゆっくりと歩んでくる。


「そしてお前の事も、「コト」が終わるまで逃すつもりはない。……逃げたら追いかけて潰す。向かってきても潰す。今のお前にとって最も適当で、かつダメージの少ない選択肢は何だ? ——何もせず、


 鼻血が垂れてくる。それを手で強引に拭って、樹は龍俊を真っ直ぐ視線で射抜いた。


「余計な……お世話だっ!」


 樹は再び龍俊へ踊り掛かった。今度は両腕を広げ、タックルの要領でかかった。前のめりに体重を傾けることで、パンチで弾かれることも防ぐ。


 全体重で雪崩のごとくもたれかかり、共倒れになった状態になったら強引にスマホを奪い取る。そういう算段だ。


「へぇ、格好悪いが、良い考えだ」


 龍俊は感心したように言うと、スマホをポケットにしまい、




 腰を垂直に深く落とした状態で、背中から樹へ真っ直ぐぶち当たった。




「——ぁ」


 まるで、石像に向かって自らぶつかりに行ったような気分だった。


 それくらい、垂直に腰を落とした龍俊の立ち姿勢は、強固で、盤石で、重々しかった。非人間的な感触。


 ——硬ぇ。鉄みてーだ。


 自分より重いモノにぶつかったら、自分が弾かれるというのが物理的宿命。

 

 弾かれた樹は、コンクリートの地面の勢いよく背中を預けた。


「いくら全体重でぶちかましに行っても、ディンリーは俺の方が上みてーだな」


 よく分からない単語が混じった龍俊の言葉が、右耳から左耳へ通り抜ける。


 脱力しきっていた。もともとフラフラだった状態でさらに重々しいインパクトを浴びてしまったせいで、全身が完全にひるんでしまっていた。


 でも、立たなければならない。立つコトをやめた時、自分は負ける。

 

 樹はなけなしの気力と体力を絞り出し、鉛のように重たい我が身を再び二本足で立たせた。


 しかし、足から力が抜ける。体が支えられず、後ろへ倒れていく。


 ——ちく、しょう……ここまで、なのかよ…………!


 もはや手を伸ばしても届かない勝利。


 苦痛と悔しさの混じった感情を実感しながら倒れそうになった樹を、




 




「……加藤樹、っつったか。——すまなかった。俺はお前を誤解していた」


 いつもみたいに棘を帯びていない、静かな声。


「お前のことを、幸人の腰巾着だと思って、見下していた。誰かの権威にすがらなきゃケンカもできねぇ「団子だんご」だってな」


 樹がもたれかかっているのは彼の胸板。その上から、穏やかに聞こえてくる。


「だが……今のお前を見て、まだそんな感想を抱く奴がいたら、そいつはただの馬鹿だ」


 穏やかだが、その中に硬く鋭い芯のようなものが含まれた声で、柔らかく断言した。




「お前は決して弱くない。——俺は、




 樹の瞳が大きく見開かれる。その瞳から涙がこぼれてくる。


 樺山孝治かばやまこうじに、そう言われた。


 この辺で最強ともいえるほどの男に、そう言われた。


 他人を絶対に高評価しなそうな男に、そう言われた。


 認めてくれた。


 その事実が、樹はたまらなく嬉しかった。


「…………そこは、お世辞でも「お前は強い」って、言って欲しかったよ……」


 わんわん泣き出すのは格好悪いと思って、呆れ笑いを浮かべた。けれども涙は絶えず流れている。


「世辞は苦手なもんでな。……休んでな。大体事情は盗み聞きして承知してる。


 ああ。こんなに頼りになって、報われたって感じの言葉が今まであっただろうか。


 この最強の男が、力を貸してくれると、確かに言ったのだ。


 これだけでも、自分が頑張った意味は、十分にあったのだ。


 樹を電柱にもたれて座らせると、孝治こうじは龍俊と真っ向から対峙した。


「——来い、王龍俊。こっからは俺が相手だ」


 くくっ、と愉快そうに喉を鳴らす龍俊。


「——っくくくっ。初めて俺の名前をちゃんと呼んでくれたねぇ。それがでなんて残念でならないなぁ。全くもってよぉ!」




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 何度もマトにされる佐竹パイセンの金的に幸あれ……



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