2022.9.29(thu)最前席と大きな黒板



菜都奈が教室に着くと、黒板に人が群がっていた。いつもは朝のHRギリギリに到着する時岡もいる。みんな熱心に自身の番号と書かれた席番とを見比べていた。席替えの発表だ。

菜都奈も鞄を置くなり黒板の数字の位置を確認する。希望は窓側だ。

「……げ、一番前」

菜都奈は思わず呻く。窓側から二番目なのはいいが……一番前。恐らくクラス中でもっとも教師の視線を感じる場所。


「! うわ、御愁傷様」

菜都奈の紙を盗み見た文香が、言葉とは裏腹に意地悪な笑みを浮かべる。

「文香ー、どうしよう誰か代わってくれないかな」

「その席に座りたがる人なんて会ったことないわ」

「そんなー……文香はどこだった?」

文香はフフン、と嬉しそうな顔をする。


「一番後ろの窓側。特等席だよ」

「いいなぁー! 代わって!」

「絶対ヤダ!」

分かり切ってはいたが、ほんの少し落胆はする。菜都奈は誰か、誰か、とマッチ売りの少女並みに当てもなくうろついたが、結果は文香の言っていた通りだった。


朝のHRが始まって高倉がみんなの反応を面白そうに眺める。一限までに席を移動させなければならず、一限はまさかの体育。交換してくれる人を見つけるどころの話ではない。着替えすらギリギリだった。

体育終わりに菜都奈は自分の席に座って、改めて黒板を見上げる。

「でっか……」

映画館の一番前の席に座っている気分だった。

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